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元人間の人食い箱  作者: 水 百十
第1章
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第17話 一段落と新たな火種

「いや~うまかった!」

「すみませんマティスさん、僕の分まで食べてもらって」

「俺が食べたかったからいいんだよ」


 エディの用意していた夕食は以外にも美味しかった。昼間の様子からは想像できないが、料理は得意なようだ。


「それじゃあ今日はもう寝るか」


 レックスがそう言い、俺達は2人ずつに分かれ、部屋に戻る。




「あの~……ベッドってどうします?」


 サムがそう声を掛けてきた。


「いや、俺は普通に箱に戻って寝るからベッドは必要ないぞ?」


 そう言って俺は壁際へ移動し擬態を解く。


「あっ……そうでしたね……」


 サムは俺が今日一日ほとんど女の見た目をしていたせいで俺の本来の姿がミミックであることを忘れていたようだ。


「じゃあ……おやすみなさい」


 サムがそう言ってベッドの横に置かれたランタンの火を消し、床に入る。

 だが、俺は約5年分の睡眠が一晩で足りるような体なので、眠るというよりじっとして体を休めているだけで、ダンジョンにいた時と何ら変わりはなかった。一日中擬態出来るようになれば、柔らかいベッドで眠ることもできるのに……

 真っ暗になった部屋で今日の事を振り返る。この体になって初めての他人と過ごした一日だった。何故か周りで問題が色々起こってしまって大変だったな。

 そういえば、目立つ服を何とかしなければいけないということを思い出した。

 今日町で見た人たちの恰好を真似すればいいのではないかと思ったが、事件のせいで印象が薄れてしまった。


 そんな時、エディの服装が頭に浮かんできた。あんな感じのなら目立たないのではないだろうか。ロングコートなら丈夫そうで、Tシャツとジーンズはそのまま着れそうだしな。

 だが、パーカーも割と気に入っていたのでロングコートにフードが付いたものを頭に思い浮かべる。ポケットも付けよう。色は……黒でいいか。

 これだ! と思い魔法を使う。だが、目の前に現れたのは黒い布の塊……かと思ったが空間魔法で浮かべてみると、しっかりと想像通りの物になっていた……一応。

 だが、出来上がったそれはロングコートと言うより何というか……死神の羽織っているローブの様だ。胸元を止めるボタンなどは付いておらず、襟もない。

 もう一人の俺――ゼラノスの解説の通り、見たものそのままなら精巧に創れるらしいが、余計な要素を足そうとすると一から頭の中で考えなければいけないらしい。

 とは言え、創造魔法は魔力を多く使うためそう何度も使うことは出来ない。別にこの世界にそぐわないものが出来たわけでもないし、とりあえず明日からはこれを着ることにしよう。

 創造魔法を使ったことによって空腹感と疲れが出てきた。5年間睡眠がほとんど必要なかったのは魔法を使わなかったせいもあるのかもな……と思いながら、寝る必要はないが少しだけ…とも思い、眠りについた。




 ――アクチェスの町のとある酒場。

 既に夜中になり、店の入り口の扉には閉店と書かれた札が掛けられていたが、入店を知らせるドアベルの音が鳴った。


「お客さん。もう閉店だよ――」

「『終焉の先』だ」


 バーテンダーが声を掛けたが、入ってきた男のその言葉を聞くと黙った。

 そのままそのバーテンダーはカウンター下のレバーを引く。すると酒場の床板が動き、地下への階段が現れた。

 男は階段を降りた先の地下室には円卓があり、既に1席を除いて満席となっていた。


「遅かったじゃあないか7番。今日の実験はうまく行ったか?」

「予定外の事態が起きて多少焦ったが、この通りだ」


 7番と呼ばれた男が空席に座りつつ持っていた鞄から麻袋と立方体の物体を取り出す。それが円卓に置かれると硬貨の擦れるジャリンという音がした。


「よくやった。これで奴らに返済できる」

「2番。魔導部品を後払いで買うのはよせと言ったはずだぞ。もし計画が失敗したらどうするつもりだったんだ。奴らは返済の引き延ばしなど待ってくれないぞ」


 7番の隣に座っていた男が2番と呼んだ男を窘める。


「まぁまぁ金はここにあるんだし良いじゃないか。それにソイツがあれば失敗なんてありえないだろ?」


 そう言って2番が、7番が先程鞄と同時に卓上に置いた黒々とした立方体を指差す。


「まだ未完成だったんだぞ。万が一ということもある」

「だが、予想外の事態とやらも乗り越えられたんだろ?」

「それについてだが、恐らくこの町に勇者がいる。実験を続けるのは厳しいぞ」

「何?」

「勇者だと!?」

「本当なのか……?」


 地下の部屋全体がざわめく。


「だ、だが、勇者にもソイツが有効だと実証されたんだ。ある意味いい実験データが取れたな」

「2番。事の重大さをわかってないな? 勇者はたとえ魔法を使えなくなったとしても、頭のおかしい強さの化け物だ。逃走用の飛竜を用意していなかったら確実に捕まっていたところだぞ! 一刻も早くこの町を離れるんだ!」

「落ち着け7番。町と言ってもこのアクチェスは広い。その割には防壁も低く、この実験にはもってこいだ。今日2番が買ってきたこの部品を使えばソイツは完成する。あと1回だ。次で最後の試用試験になる」

「……わかった。あと1回だ。だが、出来るだけ早く終わらせるぞ」


 7番は仕方ないという表情をし、そう答えた。

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