表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元人間の人食い箱  作者: 水 百十
第1章
10/58

第9話 アクチェスの町

 更に15分程歩き続けると、町の外周にめぐらされた防壁の前までやって来た。防壁は5mほどの高さがあり、ほとんどが金属製の様だ。


「なんでこんなデカい壁があるんだ?」

「ここらにはダンジョンも多いし割と普通じゃないか? むしろ町の規模に比べたら低いくらいだろ」


 レックスが言うにはこれでも低い方らしい。

 ダンジョンが近くにあると魔物がやってくる量も多く、魔物に侵入を許すと瞬く間に町が荒らされてしまうため、大抵防衛手段は欠かせないそうだ。

 まぁ、今から俺という魔物の侵入を許そうとしてるんだが……と考えながらで防壁沿いを進んいたところ、町への入り口が見えた。入り口もまるで城の門のように大きく厳重で、門番が二人立っていた。

 その時、門番のうちの一人が俺たちに声を掛けてきた。


「おい、お前達! ……ってレックスとイザベラ、それにサムじゃないか」

「サミュエルですっ!」

「おぉ、そうだったな。それで、そのデカいネーちゃんは誰だ?」


 サムって本名サミュエルだったのか……と思っていた時に俺に話題が回ってきた。

「こいつとはダンジョンで出会ったんだが、所持品と一緒に身分証も無くしてしまったみたいでな、町に戻ってもう一度発行するのを手伝うために連れてきたんだ。俺が身元を保証するから入れてやってくれないか?」

 レックス、いつの間にそんな言い訳考えていたんだ。


「そうだったのか、てっきりレックスがイザベラが居るのに新しい女でも作ったのかと思ったぜ」

「わ、私とレックス自体そういう関係ではないです!」


 そう弁明するイザベラの顔は真っ赤なんだが。


「まぁレックスの頼みなら断る理由も無ぇさ。ネーちゃんも災難だったな、このアクチェスの町でゆっくりしてってくれ」

「ありがとう」


 レックスは人からの信頼が厚い様だ。この門番のおっさんもいい人だったな。人に嘘をつかせていることと、嘘をついていることは少し胸が痛いが仕方ない。俺が問題を起こしてこの2人に迷惑が掛からないようにしないとな。

 そんなこんなで町の中に入った。


「だいぶ遅くなっちまったが、まずは朝飯にするか」


 レックスがそう言って向かったのはパン屋のようだった。入り口のドアにガラスが使われていた。ガラス窓ももう使われているのか。


「おやレックス、いらっしゃい」

「おはようおばさん」


 店主らしきおばちゃんが歓迎する。


「ここは店の奥に買ってすぐ食える場所があるから取り敢えず食べたいのを選んでくれ」

「またここかぁ~結構朝ごはんには重いんだよなぁ……」


 サムがそう呟くのを聞きながら、並んでいる商品を見てみる。ん? これはパンというより……ハンバーガーだ。食文化は割と地球にいた時に近いみたいだな。

 それはともかく、味のついている物はハンバーガーっぽい物しかない。ほとんどハンバーガー屋じゃないか! 確かに朝からハンバーガーは胃がもたれそうだ……

 というかイザベラは女性だけど大丈夫なのか?と思いながら店の中を見回すと、既に手に持ったトレイの上に大量のハンバーガー乗せたイザベラがレックスとともに飲食スペースに歩いていくところだった。ま、まぁ確かにレックスとイザベラは長い付き合いみたいだしな。サムは苦労してそうだが……

 俺もとりあえず適当に2つほど選んだ。


「マティスさん、そんな量で大丈夫なんですか?」


 俺のトレイを見たサムがそんなことを言う。人間の時の感覚で選んでいたが、確かに昨日食べた量から考えてももう少し食べてももいいか。


「じゃあもう2つくらい……」

「最近の嬢ちゃんはよく食べるんだねぇ……」


 会計をするおばちゃんがそんなことを呟いていたが、誤解だ。イザベラと俺が異常なだけだと思う。


 ハンバーガーはどれもおいしかった。胃もたれなんて起こすことは無くむしろ5個追加してしまった。食べ終わった後にサムがお腹をさすりながら「マティスさんもそっち側の人間ですか……」と言っていたのがなんか申し訳なかった。


「この後はどうするんですか?」


 店を出て通りを歩いていたサムがレックスに訊ねる。


「とりあえずこいつの身分証明を何とかしなきゃいけないからな。ギルドに行こう」


 レックスが俺を指さしながら答える。


「ミミック……マティスさんのことはどうするつもりなんですか……?」

「とりあえずギルドにあのダンジョンにミミックが居たことは黙っておくさ。こいつのことは町に入るときと同じ説明で身分証を新しく発行してもらえるだろう。」

「そのあとは俺はどうするんだ? 一文無しの状態だぞ?」

「まさか俺達がこの町でお前と別れるとでも思ってるのか?そんなわけないだろ」


 レックス……! お前俺の事ちゃんと考えてくれていたのか……


「お前みたいな危険因子を放っておくわけないだろ?お前が自由になれるのは王国に連れ帰って王様から許可が出てからだ」


 あっそういう意味か……まあそうですよね。


「じゃあギルドに行くぞ。」


 レックスがそう言って歩き出す。


「でも朝からハンバーガーはちょっと重かったな~……」


 俺がギルドに向かって歩きながらそう呟く。


「そんな事無いだろ~…………!?」

「……どうしたんだ?」


 俺の言葉にレックスが返したが、ハッとした表情をした後、何かを考えるようにそのまま黙り込んでしまった。


「サムもそう思わないか?」


 仕方が無いのでサムに話題を振る。


「あの……ハンバーガーって何ですか?」

「いや、さっき食べた……」


 と言いかけた所でさっきからあれを誰もハンバーガーと呼んでいなかったことに気付いた。あれ、でもレックスには普通に通じたよな……?


「……マティス。ギルドに寄った後、一旦俺と二人で話さないか?」


 突然考え込んでいたレックスが俺にそう言ってきた。初めて名前を呼ばれた事にも驚いていたが、何か重要な話の様だったので俺は首を縦に振るしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ