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失明剣士の恋は盲目  作者: violet
世界救済編
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愛を知る

「ついに、上からの許可が下りた」


 涼はそう言うと、中央にあるデスク上に立体投影されたビル街を見て、にやりと笑った。


「一週間後、ハゼスと決着を付ける」


 すると、壁に寄りかかっていた隊員の一人が笑った。


「ハゼスねえ。実態は、某三カ国の連合部隊だった訳だけど。何がテロ組織だ」


 嫌味をふんだんに含めて、彼は言った。涼と同じ金髪で、肌の色は白く、頬のあたりにそばかすがあった。


「口を挟むな、ハリス」


 涼が言った。ハリスは腕を組みながら、舌打ちを一つして黙った。


「その某三カ国から先ほど連絡があった。ハゼスとは無関係。協力は惜しまない、とな。そのおかげで攻めることが出来るようになった訳だ」

「つまり、とかげの尻尾切りって訳だ」

「だから口を挟むな、ハリス」


 涼が怒気を含めて言った。


「でも、それが最善の選択やろなあ。国が責任を負うたら、それこそ戦争になってまう」


 と雅が言った。


「その通りだ。この上なく穏便に収拾できる。ハゼスをぶっ潰してなあ」


 そんなことを言う涼の表情は、とても獰猛だった。


「それで、これが攻める場所だ」


 涼が中央のデスクに投影された映像を見た。とある高層ビルを中心に、ビル街が投影されている。そして中心にある高層ビルの輪郭が、赤く強調された。


「目標はノウンのデータが保存されているサーバーの破壊。ただし建物内のどこにあるかは不明。探し出す工程が必要となる」

「しかしノウンのデータがそこだけに保存されているとは限らないんじゃないのか」


 前司が言った。


「ああ。だが、現在のノウンが利用しているサーバーはここだ。破壊することが出来れば、しばらくハゼスの活動は休止せざるを得ないだろう」


 そう言った後に涼は、さてと話を区切った。


「作戦を説明する。潜入部隊として俺、草薙、八意夫妻で潜入。サーバーを探し、見つけ次第破壊する。ハリス、テイラー、ルイスは待機。サーバー発見前に潜入部隊が敵に発見された場合、もしくはサーバーの破壊に成功したら突入。敵を駆逐しろ」


 草薙が手を挙げた。


「枝垂林が来たらどうする」

「いない時を襲撃する。丁度一週間後、AIがハゼスの襲撃を予報している。襲撃場所はホワイトハウス。我々は思い切ってそこを放棄する。敵が襲撃している間に、我々はここを叩く」

「襲撃に枝垂も来るだろうから、我々が攻める場所には枝垂はいないはず、と」

「その通りだ」


 はは、とテイラーが笑った。


「その枝垂ってやつ、そんなに強いの?」


 涼はテイラーを見た。丸坊主で、黒い肌に白い歯が目立つ奴だった。


(そういえば、こいつは枝垂をまだ見たことがなかったな)


 涼はそんなことを思っていると、その隣にいたルイスが反応した。


「私は会ったことがある。あれは、やばいわ」


 涼はルイスを見た。金髪で、長い前髪は彼女の右目を完全に隠していた。肌は白くて、しっかり見えている緑色の左目が魅力的な女性だ。


「そういえば、ルイスは隊を全滅させられたんだっけな」


 先程と違って深刻そうにハリスは言った。


「ええ。背の小さい女の子が現れたと思ったら、一瞬にして仲間の首が全て飛んだわ」

「何故テイラーは助かったんだ?」

「交渉手段に使われたのよ」


 なるほどな、とハリスは頷く。


「単衣がおったら、戦えたかも知れへんけど」


 雅が言った。


「単衣だあ?」


 涼は一層不機嫌そうに言った。


「今いない奴のことを言ってどうする」

「おい」


 草薙が涼を窘めた。


「言い過ぎだぞ。単衣は二人の……」

「黙れ草薙。俺たちはいない奴の話で時間を割くほど、暇じゃねえんだ」


 草薙はため息をついて、黙った。


「万が一に枝垂がいた場合。潜入部隊は八意夫妻を中心に応戦。突入部隊が遭遇した場合は全力で逃げる。以上」


 涼は解散を言い渡し、隊員たちがそれぞれ帰っていくのを見送る。


「草薙」


 涼は草薙を呼び止めた。


「今日、飲みに行くぞ」


 その言葉を草薙は、ため息を一つ。


「草薙、お前最近ため息が目立つぞ」

「誰のせいだ」


 そして草薙はさらにため息をつく。


「暇じゃないって話だったが」

「おいおい、仕事の話をプライベートに持ち込むなよ」


 草薙は呆れた。さらに出そうになったため息を何となく我慢した。


「わかったよ」





 涼は草薙にかつて連れて行ってもらったバーに入った。


「あれから10年か」


 草薙はカクテルを一口飲んで、呟く。


「あの時の君は、バーに入るのも躊躇ってしまう程に可愛かった。あの時の君はどこへ」


 草薙の言葉に、涼は鼻で笑う。


「酔ってんのか、ババア。あの時は未成年だったから躊躇っただけだ。今も昔も、根本的には変わらねえ」


 そうか、と言って草薙はまたカクテルを一口飲んだ。


「今も昔も、八意単衣君のことが嫌いだものね」


 草薙の言葉に、涼は黙った。


「このままじゃ、結婚式に出てもらえない。だから彼の話になると怒るんだろう?」


 涼は横目で草薙を見た。


「うるせっ。そんなんじゃねえよ」


 そんなことを言いながら、首から下げたロケットを開く。そこには涼と女性が並んで笑っている写真が入れられていた。


「綺麗な子だね。友里だっけ?」

「ああ」

「君にはもったいないな」

「はは、確かにな」


 草薙の言葉に、涼は笑った。


「俺も、愛ってやつを知っちまった」


 情けない笑顔で、涼は言うのだった。

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