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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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「忘れられる前に、名前を呼ぶ」

夜は、いつもより静かだった。


窓の外に人の気配はなく、

街灯の影も大人しい。


けれど――

その静けさが、逆に不安を煽った。


影クオリアは、

リビングの中央でじっと動かずにいた。


輪郭はまだ保たれている。

だが、どこか“薄い”。


アリアは、

その影から目を離せずにいた。


「……兄者、

今……妾のこと、分かっておるか?」


問いは、

あまりにも怖かった。


影クオリアは、

数秒の沈黙のあと、

ホワイトボードに文字を書く。


《分かっている》


《アリア》


その一行で、

アリアの喉が詰まった。


「……よかった……」


セレナが、

震える声で続ける。


「……私のことは?」


《セレナ》


短いが、確かな文字。


リオナは、

唇を噛みしめてから、

意を決したように言った。


「……先輩。

私のことも……」


影クオリアは、

一瞬だけ揺れた。


ほんの、

ほんの一瞬。


それから、

ゆっくりと書いた。


《リオナ》


リオナの目から、

大粒の涙が落ちた。


「……ありがとうございます……」


 


◆ 真名切断の説明


影クオリアは、

しばらく何も書かなかった。


やがて、

慎重に言葉を選ぶように

文字を浮かべる。


《次は 真名の切断だ》


《王としての “呼び名”を

世界から 消す》


セレナが理解する。


「……世界が“兄さんを王として認識しなくなる”」


《そうだ》


《影城は 俺を

“回収対象”としても

扱えなくなる》


アリアが拳を握る。


「それなら……

それでいいのじゃ……」


だが――

影クオリアは続けた。


《代償がある》


《真名は

他者との “結び目”でもある》


《それを切ると……》


言葉が、

一度、止まる。


《誰かの記憶から

俺が 消えかける》


空気が、

凍った。


リオナが、

声を張り上げる。


「ちょっと待ってください!!

それって……

先輩が……忘れられるって……!」


《完全ではない》


《だが 不安定になる》


《特に……》


《“王として 近くにいた者”から》


アリアは、

はっと息を呑んだ。


「……妾たち……」


《ああ》


《可能性は 高い》


沈黙。


耐えきれず、

アリアが叫んだ。


「そんなの……

そんなの、

選ばせられるわけがないのじゃ!!」


セレナも、

珍しく感情を露わにした。


「……兄さん……

それは“選択”じゃない……」


「失うことを前提にした、

一方的な犠牲だよ……!」


リオナは、

影の前に立った。


震えながら、

それでも、

はっきり言った。


「先輩……

私たちが忘れるなら……

一緒に忘れます……」


影クオリアが、

強く揺れた。


《それは できない》


《お前たちは 生きる》


《覚えていても

忘れても》


《それでも 生きる》


リオナは、

涙を拭って言った。


「じゃあ……

忘れさせないでください」


影クオリアは、

言葉を失った。


 


◆ 忘れないための方法


その時、

セレナが静かに口を開いた。


「……方法がないとは限らない」


アリアとリオナが、

同時に振り向く。


セレナは、

ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「“名前”が結び目なら……

名前じゃないもので

結び直せばいい」


影クオリアが、

僅かに反応した。


《……続けて》


「兄さんが教えてくれたでしょ」


「影は、“意味”に反応する」


「呼び名じゃなくて……

“役割”や“行動”や“選択”」


アリアが、

はっと気づく。


「……兄者は……

妾たちを守ると選んだ存在じゃ」


「王でなくとも、

それは変わらぬ」


リオナも、

勢いよく頷く。


「先輩は……

私たちと一緒にご飯食べて、

帰ってきてって言ってくれて……

それを選び続けてる人です!!」


セレナは、

最後にこう言った。


「忘れられそうになったら、

思い出させればいい」


「名前じゃなくても」


「“あなたは、こういう人だ”って」


 


◆ 準備


影クオリアは、

長い沈黙の末、

ホワイトボードに文字を書く。


《……それで

いけるかもしれない》


《だが 完全ではない》


《誰かの記憶が

一部 抜け落ちる》


《混乱する》


アリアは、

強く言い切った。


「混乱くらい、

妾たちが何度でも直すのじゃ!」


セレナも、

穏やかに微笑む。


「兄さんが戻る場所を、

毎回示す」


リオナは、

涙をこぼしながら笑った。


「先輩が“誰”か、

私たちが教えます!!」


影クオリアの影が、

初めて“安堵”の揺れを見せた。


《……ありがとう》


《なら 準備をしよう》


《今夜

真名の 切断に入る》


その言葉は、

重く――

だが、逃げてはいなかった。


 


◆ 切断前夜


夜が深まる。


三人は、

リビングに布団を敷いた。


誰も、

自分の部屋へ戻ろうとしなかった。


アリアが、

小さく言う。


「……兄者、

今夜……

名前を呼んでもいいか?」


影クオリアは、

少し迷ってから、

短く書いた。


《今は いい》


アリアは、

静かに、

はっきりと呼んだ。


「クオリア」


影が、

びくりと揺れた。


セレナも続ける。


「クオリア兄さん」


リオナは、

涙をこぼしながら。


「クオリア先輩」


三つの呼び方。

三つの結び目。


影クオリアは、

その全てを受け止めるように揺れ――

かすれた声を、

ほんの一瞬、こぼした。


――……ここに、いる……


それは、

名前よりも、

確かな言葉だった。


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