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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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「未完成の王に、選択肢は三つある」

朝の光は、昨日と何も変わらなかった。


カーテンの隙間から差し込む陽射し。

キッチンから聞こえる湯の沸く音。

テレビの天気予報。


世界は、相変わらず平和に見える。


――けれど。


リビングの床に落ちる影は、

確実に“昨日より深く”なっていた。


アリアはパンをかじりながら、

影をじっと見つめていた。


「……兄者、今日は“遠い”のじゃ」


影クオリアは否定も肯定もせず、

ゆっくり揺れた。


ホワイトボードに文字が浮かぶ。


《影城が 動き出した》


セレナの手が止まる。


「……予想より早いね」


リオナは息を吸い、

いつもより少し真剣な声で言った。


「未完成のまま逃げ続ける王なんて、

向こうから見たら“異物”ですもんね……」


影クオリアは短く肯定した。


《排除か 回収か》


《選択肢は それしかない》


アリアは眉をひそめる。


「妾たちが“完成させない”と決めた時点で、

こうなることは分かっておったのじゃな」


《ああ》


《それでも お前たちを選んだ》


その一行で、

朝の空気が少しだけあたたかくなった。


 


◆ 影城の“三つの手段”


影クオリアは続けて文字を書く。


《影城は 未完成の王に対し

三つの処理方法を用いる》


セレナが静かに頷く。


「排除・回収・代替……かな」


《正解だ》


リオナが身を乗り出す。


「代替……?」


《“王の器”を 新しく作る》


《俺を不要にする》


アリアの歯が、

小さく鳴った。


「それは……

兄者を“いなかったことにする”ということか」


《存在を上書きする》


《記憶も 役割も》


《クオリアという個体を 消す》


リオナの声が震えた。


「そんなの……

許せない……」


セレナは、

感情を抑えるように深く息を吐いた。


「つまり、

影城は“時間をかけた正面衝突”を避けたい」


「だからまずは、

“選ばせに来る”」


アリアが首を傾げる。


「選ばせる?」


《未完成の王に

“完成”を選ばせる》


《完成すれば 王は影城に帰属する》


《争う必要はない》


三人は同時に理解した。


――“優しい罠”だ。


力で奪えないなら、

選択を装って縛る。


完成すれば、

自分から檻に入る。


アリアは即答した。


「選ばぬ」


セレナも同時に言った。


「絶対に」


リオナは拳を握る。


「先輩が完成しないって決めたなら、

それを守るだけです」


影クオリアは揺れた。


《ありがとう》


《だが 問題がある》


 


◆ 代償の兆し


影クオリアは、

しばらく文字を書くのを躊躇った。


やがて、

ゆっくりと書く。


《未完成のまま 王の力を使い続けると》


《俺は いずれ 崩れる》


アリアの顔色が変わる。


「崩れる……?」


《存在の輪郭が 保てなくなる》


《影と意識が 分離する》


セレナは理解した。


「……精神と器の不一致」


「未完成のまま戦えば、

兄さん自身が削れる」


リオナは声を荒げる。


「じゃあどうすればいいんですか!!

完成したら連れて行かれる!

未完成のままだと壊れる!!」


影クオリアは、

その問いにすぐ答えなかった。


そして、

ゆっくりと――

一行だけ書いた。


《第三の道が ある》


 


◆ 第三の道


三人の視線が集まる。


《“王”を やめる》


空気が止まった。


アリアが、

ゆっくりと言葉を選ぶ。


「……兄者が……

影の王であることを、捨てる……?」


《ああ》


《影城が 俺を必要とする理由を 消す》


《王でなければ

完成も 未完成も 関係ない》


セレナは慎重に考える。


「でも……

王でなくなるってことは……」


「力を失う、

記憶を失う、

存在の格を失う可能性もある」


《その通りだ》


リオナは唇を噛みしめる。


「それって……

先輩が……

先輩じゃなくなるかもしれないって……」


影クオリアは否定しなかった。


《可能性はある》


《それでも 俺は――》


言葉が途切れた。


その“間”が、

すべてを物語っていた。


アリアは、一歩前に出る。


「妾は、

兄者が“王”でも“影”でも“未完成”でも」


「“兄者”であるなら、

それでいいのじゃ」


セレナも続く。


「肩書きが消えても、

選んできた行動は消えない」


「それが兄さんだよ」


リオナは涙をこらえ、

はっきり言った。


「先輩が先輩でなくなるなら、

私が“先輩”って呼び続けます」


「それで、

また先輩に戻ってもらいます」


影クオリアの揺れが、

一瞬、止まった。


そして――

今までで一番、

静かな文字が浮かぶ。


《……俺は》


《王でいることより》


《お前たちのいる世界を

選びたい》


その選択は、

影城への宣戦布告だった。


 


◆ 兆候


その瞬間、

家の外の影がざわついた。


窓の外。

街灯の影が、

ゆっくりと“反転”する。


セレナが低く言う。


「……気づかれた」


アリアが歯を食いしばる。


「早いのじゃ……!」


リオナは深呼吸した。


「でも、

もう逃げない」


影クオリアは、

三人を包むように影を広げた。


ホワイトボードに、

覚悟の文字。


《次に来るのは 使いじゃない》


《“選択の提示者”だ》


《言葉で 俺を縛りに来る》


三人は同時に頷いた。


「なら、言葉で返すまでなのじゃ」


「完成しないって、

何度でも言う」


「先輩は、

ここにいるって」


影クオリアは、

その言葉を胸に刻むように揺れた。


影城との戦いは、

もう始まっている。


剣も魔法もいらない。

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