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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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77/82

「影の中へ、名前を探しに」

《ま》


その一文字を残して、

影クオリアの揺れが急激に弱くなった。


床に落ちていた影が、

水が染み込むようにゆっくりと薄れていく。


アリアが膝をついた。


「兄者……!」


セレナは影に手を伸ばしかけ、

直前で止めた。


「触れない……

でも、消えてる感じじゃない……」


リオナの声が震える。


「先輩……どこに行ったんですか……?」


その瞬間。


三人の足元の影が、

同時に“裏返った”。


まるで地面が反転するような感覚。

視界が暗転し、

重力が消える。


「――っ!」


声を上げる暇もなく、

三人の意識は一気に引きずり込まれた。


 


◆ 影の内側


目を開けると、

そこは“世界”だった。


黒でも白でもない。

深い夜のようで、

どこか懐かしい場所。


地面は鏡のように静かで、

空には星がない。


アリアが息を呑む。


「……ここ……兄者の……」


セレナは確信を持って頷いた。


「精神世界……

クオリア兄さんの“内側”」


リオナは辺りを見回し、

静かに呟く。


「……あったかい……

怖くない……」


そこは、

影の王の世界でありながら、

三人が何度も見た“居場所”でもあった。


 


◆ 壊れかけの玉座


遠くに、

ひとつの玉座が見えた。


影でできた玉座。

だが、ところどころが欠け、

ひび割れている。


その前に――

膝をついた人影があった。


「兄者!!」


駆け寄ろうとしたアリアを、

セレナが止める。


「待って……

今のクオリア兄さん、

“名前”に縛られかけてる……」


人影は顔を上げた。


輪郭はぼやけている。

だが、確かに“人”の形。


「……来たのか」


声は、

はっきり聞こえた。


三人の胸が跳ねる。


リオナが涙を浮かべる。


「先輩……声……!」


その声は、

影ではなく、

人のものだった。


「ごめん……

引きずり込むつもりはなかった」


アリアは首を振る。


「謝るなと言ったのじゃ!」


セレナは静かに問いかける。


「兄さん……

“名前”は、何なの?」


クオリアは視線を伏せた。


「……呪いであり、

檻であり……

それでいて、存在の証明だ」


 


◆ 名前の意味


クオリアはゆっくり立ち上がり、

壊れかけの玉座に手を置いた。


「俺は“影の王”として作られた」


「最初から名前はあった。

でもそれは“呼ばれるため”じゃなく、

“命令するため”の名前だった」


アリアの拳が震える。


「名前で……縛る……」


「そうだ」


クオリアは続ける。


「真名を完全に発した瞬間、

俺は“王として完成する”」


「完成した影の王は、

影城から離れられない」


セレナが息を呑む。


「じゃあ……

名前を取り戻すほど、

帰れなくなる……?」


「……そういうことだ」


リオナの目から涙が溢れた。


「そんな……

名前って……

大事なものなのに……」


クオリアは苦笑した。


「だから怖かった」


「お前たちに名前を呼ばれるのが、

嬉しくて……

でも……」


言葉が途切れる。


「完成したら、

俺は“王”になる」


「“クオリア”じゃなくなる」


 


◆ 三人の答え


アリアが、一歩前に出た。


「なら……

妾たちが“完成させなければいい”のじゃ」


クオリアが目を見開く。


「……何?」


セレナも続ける。


「名前を全部言わなきゃいけないなんて、

誰が決めたの?」


「兄さんは今、

“途中”でいい」


リオナは涙を拭って、

真っ直ぐに言った。


「先輩は未完成のままでいいです!」


「だって……

完成したら、

一緒にいられないんですよね?」


クオリアは言葉を失った。


「名前が呪いなら……

呪いにならない呼び方をすればいい」


アリアは、

ゆっくりと微笑んだ。


「兄者は、

“兄者”なのじゃ」


セレナも笑う。


「私は“兄さん”って呼ぶ」


リオナは胸を張る。


「私は“先輩”です!」


三人の呼び方が、

同時に響いた。


その瞬間。


玉座のひび割れが、

少しだけ修復された。


クオリアの体から、

黒い鎖のようなものが

一部、砕け落ちる。


「……そんな方法が……」


「あるのじゃ」


アリアは言い切った。


「名前を完成させず、

でも存在を否定しない」


「それが、

妾たちの答えなのじゃ」


 


◆ 目覚め


世界が揺れる。


精神世界が、

ゆっくりと霧に包まれていく。


クオリアの声が、

三人を包む。


「ありがとう……」


「……戻れ」


「俺は……

まだ、ここで踏ん張る」


三人の意識が、

引き上げられていく。


リオナが叫んだ。


「先輩!!

絶対迎えに来ますから!!」


セレナも叫ぶ。


「名前じゃなくても、

必ず辿り着くから!」


アリアは、

最後に微笑んだ。


「待っておれ、兄者。

妾たちは、諦めぬ」


 


◆ 現実へ


目を開けると、

三人はリビングに倒れ込んでいた。


影クオリアは、

以前より安定した形で

そこにいた。


ホワイトボードに、

新しい文字が浮かぶ。


《まだ 未完成だ》


《でも それでいい》


《お前たちが 呼んでくれる限り》


アリアは涙を拭って笑う。


「それで十分なのじゃ」


セレナは深く息を吐く。


「完成しない王……

それも悪くない」


リオナは元気よく頷く。


「むしろ最高です!!」


影クオリアは、

ゆっくりと揺れた。


その影はもう、

“連れ戻される影”ではなかった。


“選んで残る影”だった。


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