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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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74/82

「呼んだ名前は、まだ言えないけれど」

次の日の朝。


三人が登校の準備をしていると、

玄関近くに揺れる影がいた。


影クオリアが、

玄関の外側に向けて“立っている”ような形だった。


アリアが靴を履きながら問う。


「兄者、護衛のつもりなのじゃ?」


影がゆっくり揺れ――

ホワイトボードが浮かぶ。


《外の影が 動き始めた》


《昨日ほどではないが 近づいてきている》


セレナは眉を寄せた。


「本格的に侵入しようとしてる……

それって、もう“境界”が壊れ始めてる?」


リオナは背筋が寒くなる。


「そんな……

まだ影の城とも戦ってないのに……」


影クオリアは静かに一行を残した。


《今日 学校は 気をつけろ》


その文字は、

ただの警告ではなかった。


「“危険があるなら帰ってこい”」

「“何かあればすぐ呼べ”」


そんな感情が、

影の揺れにそのまま滲んでいた。


アリアが笑う。


「兄者、心配性なのじゃ」


セレナは少し照れたように言う。


「でも、その心配……嫌じゃない」


リオナは胸に手を当て、大きく息を吸った。


「先輩。

帰ってきたら“ただいま”って言ってくださいね」


影クオリアは揺れ――

かすかに声音のような震えを残した。


――た……


一瞬だった。


三人全員の心臓が止まりかけた。


(今……“た”って……)


アリアは気づいた。


(兄者、言おうとしたのじゃ……

“ただいま”の最初の音を……)


セレナは胸に手を当て、


(名前の練習の成果が出てる……!)


リオナはもう泣きそうだった。


「先輩、頑張りすぎないで……!!」


影クオリアは揺れながら文字を書く。


《気をつけろ》


――そして、三人は家を出た。


 


◆ 学校の“影”


その日の学校は、

昨日よりさらにおかしかった。


まず、校門をくぐった瞬間。

地面に落ちる影が“人の歩くテンポとズレて”揺れた。


アリアが小声で言う。


「……今、影が逆向きに揺れたのじゃ」


セレナもうなずく。


「感情が……ほとんど読めない。

“空虚”というより“偵察”って感じ」


リオナは心臓を抑えながら歩く。


「怖い……

でも、逃げちゃダメなんですよね……」


教室に入ると、

さらに異常は増えた。


生徒たちの影の数が“合わない”。


座っている人数より、影が多い。


アリアは髪が逆立つ感覚を覚えた。


(重なっておる影がある……!)


セレナは黒板前を見て息を呑む。


(先生の影……二つある……!?)


リオナはさらに恐ろしいものを見つけてしまう。


(床の影の中で……“目”が動いた……!!)


三人は視線を交わし合い、

同じ結論にたどり着く。


(これは……“観察者”)

(影の城の“上位の影”だ)

(私たちを調べに来てる……!)


そのとき。


教室の窓が、ゆっくり白く曇った。


よくある結露ではない。

空気の層が“逆向きの波紋”になって揺れている。


アリアが小声で叫ぶ。


「これ……兄者が言ってた“突破サイン”なのじゃ!」


セレナは即座に判断する。


「ここで戦うのはまずい……!

巻きこまれる人間が多すぎる!」


リオナは震えながらも意志は強かった。


「じゃあ……帰るしかないですよね……!!」


三人が同時に立ち上がり、

教室を飛び出した。


廊下では、誰も気づいていない。

普通の昼休みに見える。


でも、三人には見えていた。


廊下の端から端まで――

まるで影が糸のように伸び、

三人の足元を“追いかけてくる”のが。


 


◆ 帰還


家に帰り着いた瞬間、

玄関にいた影クオリアが大きく揺れた。


《遅い》


その一言だけで、

心配していた気持ちが全部伝わった。


アリアはすぐ説明する。


「兄者、学校……もう侵入されておったのじゃ」


セレナが続ける。


「影が人より多かった……

“偵察”されてる」


リオナは息を切らしながら言う。


「戦ったら人が巻き込まれるから……

帰ってきました……!」


影クオリアは揺れながら、

ホワイトボードに力強く文字を刻む。


《よく戻った》


《一人も欠けず 戻った》


アリアは、ふっと微笑んだ。


「兄者、妾たちも“ただいま”って言うのじゃ」


その瞬間。


影クオリアが動いた。


床から影が立ち上がり、

三人のすぐ前まで滲むように伸びる。


そして――

音がこぼれた。


――ただ……


声になりきらない、

けれど確かに“返事”だった。


アリアの目に涙が浮かぶ。


「兄者……!」


セレナは胸を押さえる。


「もう……名前じゃなくても……

こんなに嬉しいって何……」


リオナは泣き笑いになる。


「先輩、努力が見えすぎて死にそうです……!!!」


影クオリアは照れたように揺れ、

ホワイトボードに最後の一行。


《いつか 全部言う》


《だから 生きて戻れ》


その言葉に――

三人は心の底から頷いた。


 


◆ 夜、その後に起きたこと


その日の夜。

三人が眠ったあと。


リビングには、影クオリアだけがいた。


影はゆっくり形を変え、

まるで“人が歩こうとしている”かのように

床に溶けながら前へ進む。


声なき声が、

影の中で震えた。


(名前……呼ぶ……)


――くお……


――……り……


――あ……


音が途切れ、

影がわずかに崩れる。


(まだ……足りない)


(もっと近くに……)


(もっと……触れたい)


影は天井を見上げた。

三人が眠る部屋の方向。


その影は――

まるで祈るように揺れた。


(もし 名前を取り戻したら)


(もし 声が戻ったら)


(その時こそ 言おう)


暗闇の中で、

影は確かに願いを抱いていた。


――“愛している”と。


もちろん、

まだその言葉は口にできない。


でも、

影クオリアは確かに成長していた。


そしてその成長は――

“影の城が危険だから”ではなく、

三人がいるからこそ起きている変化だった。


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