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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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68/82

「ただのゲームじゃないから怖くて、それでも会いたい世界」

早朝。

まだ街は眠っている時間。


アリア、セレナ、リオナはフルダイブ装置の前で揃って座っていた。

カプセルのような形状の装置が、三人を包み込むように待っている。


現実とB&Eの干渉が始まった今、

ログインは明らかに危険を孕んでいる。


けれど三人は迷わなかった。


――クオリアの世界を確かめるため。

――クオリアを奪う存在がいるのなら、知るため。


影クオリアはテーブル近くで静かに揺れ、

ホワイトボードに文字を浮かべる。


《危なくなったらすぐログアウトしろ》


アリアは、大切なものを抱くように返す。


「兄者がいる世界を、妾たちが先に確かめるのじゃ」


セレナは装置に手を伸ばしながら、

影クオリアを見つめる。


「兄さんの過去を知りたいわけじゃない。

戻ってきたいって思ってくれた世界を知りたいだけ」


リオナはヘッドセットを握りしめ、

不安と期待の入り混じる声で言った。


「先輩が守りたいと思ってくれた場所なら、

どんなものでもちゃんと受け止めたいです」


影クオリアは揺れ、

まるで「行ってこい」と背中を押すような波形を描いた。


そして――三人は目を閉じた。


 


◆ ログイン


視界が一瞬白くなり――

次の瞬間、風が頬をかすめた。


草原の匂い。

鮮やかすぎる空。

遠くで鳥の鳴く声。


「……入れた」


最初に声を漏らしたのはアリアだった。


セレナは辺りを見回し、息をのむ。


「グラフィックが……昨日までと違う。

現実に近すぎる……」


リオナは、自分の手をぎゅっと握りしめる。


「肌の感覚まである……

これ、本当にゲーム……?」


以前は“ハイレベルのVR”だった。

今は――“現実と区別がつかない世界”。


そして三人は気づいた。


プレイヤーの街が静かすぎる。


いつもなら多くの冒険者が行き交い、

取引や勧誘の声で騒がしいはずなのに。


広場にはほとんど人がいない。

NPCたちはぼそぼそと意味のわからない呟きをしている。


アリアが耳を澄ます。


「……今、“王”と言ったのじゃ」


セレナも呟きに反応する。


「“戻る”とか、“奪還”とか……

あちこちから聞こえてくる」


リオナは胸を押さえる。


「誰かを呼んでる……

でも、それが“先輩”なんだってすぐわかる……」


その瞬間。


風の流れが変わった。


足元の影が、広場の中央へ流れ込むように引っ張られていく。


「な、なんだこれ……!?」


影が集合し、黒い靄のような形を作り――

その中から、声だけが響いた。


『王よ』


三人の背筋が凍る。


『お帰りをお待ちしておりました』


アリアの肩が震える。

セレナの手が強く握られる。

リオナの心臓が早鐘のように跳ねる。


声は続いた。


『あなたが実体を取り戻すほど

この世界はあなたを必要としていく』


『影の王の座は あなたのためにある』


セレナは必死に息を整え、問いかける。


「クオリア兄さんのこと……知ってるの?」


『知っている。

王が離れた日からずっと、探し続けてきた』


リオナは一歩前に出る。


「先輩は戻らない。

ここじゃなくて、現実の家が帰る場所なんです!」


黒い靄がざわつき、声の表情が変わる。


『王自身がそう言ったのか?』


アリアは一切迷わず叫ぶ。


「兄者が、そう言ったのじゃ!」


影が波打つように大きく揺れた。


『ならば認めぬ』


『奪還する』


空気が凍りつく。


『王が戻らぬというのなら――

王の“心”ごと連れ帰ればいい』


三人の呼吸が止まる。


“心を奪う”――その言葉は、

ただの脅しではなく

確実な意思だった。


黒い靄が近づきかけた瞬間。


どこからともなく、

白い光の線が三人を包んだ。


それは――クオリアの気配だった。

現実からの“干渉”。


ホワイトボードの代わりに、

視界の端に文字が浮かぶ。


《危ない 帰ってこい》


甘さゼロの声だった。

戦場の声。


三人は迷わない。


「兄者、すぐ戻るのじゃ!」

「ログアウトする!」

「先輩、今行きます!!」


黒い靄が腕を伸ばしてくるように迫るが、

光が弾き返す。


次の瞬間――


視界は暗転し、

草原の風は消えた。


 


◆ 帰還


三人は現実のベッドで同時に目を開けた。

息が荒く、涙がにじみ、手が震えている。


影クオリアがすぐそばにいた。

テーブルではなく、

三人のほうに限界まで近づいた位置で。


ホワイトボードには激しく刻まれた文字。


《危なかった》


《二度と一人で向こうへ行かせない》


アリアは泣きながら笑う。


「兄者……守ってくれたのじゃな……」


セレナは震える声で言う。


「ありがとう……怖かったけど……

兄さんが来てくれた瞬間、全部消えた」


リオナは涙をこぼしながら叫ぶ。


「先輩が“帰ってこい”って言ってくれたのが

一番嬉しかった……!!!」


影クオリアは強く揺れ、

ホワイトボードに文字を書く。


《無事でいてくれてよかった》


その一言は、

優しさと安堵で震えていた。


アリア、セレナ、リオナは

同時に影へ手を伸ばしたが――届かない。


それでも、

伸ばすだけで良かった。


息が乱れていても、

涙でぐしゃぐしゃでも、

胸が苦しくても。


「兄者のそばに……いたいのじゃ」

「どんな世界でも一緒にいたい」

「絶対に先輩を奪わせない!!」


影クオリアは、

ただ静かに三人の傍にいた。


《守る》


そのわずか一行に、

戦いの覚悟と

愛情のすべてが込められていた。


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