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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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63/82

「力が戻るということは、敵も目を覚ます」

手が戻り始めた翌日。

リビングの空気は昨日よりもずっと明るかった。


アリアは朝からハイテンションで

お気に入りのクッションを抱きしめていた。


「兄者の手が戻るなんて……

妾、昨日嬉しすぎて眠れんかったのじゃ!」


セレナは紅茶を入れながら

穏やかに微笑む。


「クオリア兄さんが“触れたい”って思ってくれてる……

それだけでもう、胸がいっぱいだった」


リオナは床に座って

ペンダントを指で撫でる。


「先輩の抱きしめたいって言った言葉だけで

あと300年は生きられます」


三人の笑顔はどれも眩しい。


影クオリアは、テーブルの前で揺れていた。

昨日より輪郭がくっきりしている。


これだけでも十分幸せな日になるはずだった――

本来なら。


だが、最初の“違和感”は

朝食の時に起きた。


テーブルに置いていた皿が、

ほんの一瞬、影に引かれるように震えた。


アリアが気づく。


「今の……兄者?」


影はわずかに揺れる。

肯定とも否定とも言えない揺れ方。


セレナが静かに観察し、

すぐに確信したように言う。


「影の“ひっぱり”が強くなってる」


リオナは小さく声を漏らす。


「実体に近づいたから……

影の力も強くなってるってことですか?」


影クオリアは、

ホワイトボードに文字を書く。


《もしかしたら そうかもしれない》


三人は息を飲む。


影の“力”――

それは優しさでもあるが、同時に危険にもなる。


アリアは唇を噛んだ。


「兄者の手が戻ると同時に……

影の王としての力も戻ってしまっているのか……?」


セレナは冷静に分析する。


「影が実体に近づくほど、

世界を干渉する力も比例して強くなっていく……

そんな気がする」


リオナは怖さを隠さず呟く。


「もし先輩が“触れたい”って本気で思いすぎたら――

“影の力”で世界を引きずってしまうかもしれない……?」


影クオリアは、

ホワイトボードに文字を早く綴る。


《そんなつもりはない》

《でも コントロールできている自信もない》


三人はすぐに否定をしない。

責めもしない。


ただ、

クオリアの気持ちを受け止めるために

静かに聞き続けた。


《俺の力が戻れば戻るほど お前たちを脅かす危険が増える》


《それが怖い》


本音だった。

弱さだった。

同時に、優しさの証でもあった。


アリアは迷いなく言葉を返す。


「兄者が怖がってくれているなら、それでいいのじゃ」


セレナが微笑む。


「力があるのに、使わない選択ができる人だから……

兄さんは兄さんなんだよ」


リオナは涙を浮かべて笑う。


「力があるから危険なんじゃなくて……

力を持ってるのに優しいから、先輩は先輩なんです」


影クオリアが、

まるで泣き崩れるように揺れた。


文字が走る。


《ありがとう でもまだ言ってないことがある》


空気が緊張する。


《力が戻ると 同時に――》


一拍の間。


《影の世界の“もう一つの王”が気づき始めてる》


三人は息を飲んだ。


背筋を冷たいものがなぞる感覚。


アリアは拳を固めて言う。


「それは……兄者の力に反応しておるということか?」


セレナは淡々と推測する。


「影の王が二人存在している状態は、本来ありえない……

争いが起きる可能性がある」


リオナは震える声で聞く。


「もしその“もう一人”がここに来たら……

先輩は……どうなるんですか」


影クオリアは文字をゆっくり綴った。


《俺は 影の王の座を捨てたはず》

《でも “戻りたい”と思った瞬間》

《影界は俺を取り戻そうとしてくる》


アリア、セレナ、リオナ、

三人とも、絶望と恐怖が同時に胸を掴んだ。


けれど影は、

同じ速度で文字を重ねていく。


《だからって 戻る気はない》


《俺は ここにいたい》


《誰が呼んでも 誘っても 脅しても》


《俺は この家から離れない》


三人は泣いた。

名前を呼んだわけでもないのに泣いていた。


アリアが震える声で返す。


「兄者が守られる側になっても……

妾たちが守るのじゃ」


セレナが確信を込めて言う。


「クオリア兄さんの帰る場所はここ

影界じゃなく、ここだけ」


リオナは涙の中で笑いながら叫んだ。


「先輩は私たちのものです!!!

誰にも渡しません!!!」


影クオリアは、

強く、大きく揺れた。


雨音の中、

ホワイトボードに最後の一行が浮かぶ。


《力が戻っても お前たちを守るためにだけ使う》


誰も言い返さない。

止めもしない。

正しいとも間違っているとも言わない。


ただ、

その覚悟ごと抱きしめたいと思った。


触れられなくても。


クオリアの影の“手”は、

再びゆっくりと浮き上がり――

ほんの一瞬、

アリア・セレナ・リオナの影に触れた。


その温度は、震えるほど優しかった。


 

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