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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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59/82

「恋をすると世界が変わる」

バレンタインの翌朝。


リビングの空気は、いつもと同じはずなのに、

なんだか全部が甘く見える。


カップの湯気、

パンの焼ける匂い、

カーテン越しの光。


そのどれもが、

昨日の言葉の余韻を思い出させた。


アリアはトースターの前で嬉しそうに跳ねている。


「兄者の“ハッピーバレンタイン”が忘れられんのじゃ……

ふふふ……幸せの反芻期間じゃ……」


セレナは紅茶を注ぎながら、

ふと口元を押さえて微笑む。


「クオリア兄さんが“ありがとう”って文字を書いてくれた瞬間、

胸がぎゅってして……

あれ、心臓が一生分動いた気がする……」


リオナはペンダントを指で撫でながら、

ベッドの上で転がっている。


「昨日の影の照れは反則……

世界一かわいいってああいうことですよ……

思い出すだけで生きていけます……」


三人のテンションはバラバラなのに、

幸せの温度は全員同じだった。


そんな三人の様子を

影クオリアは少し離れた場所から見ていた。


昨日の騒動の反動もあり、

今日は静かにしていたい――

そんな雰囲気が影越しに伝わってくる。


だが、

三人は見逃さない。


アリアが気づいた。


「兄者、今日……名前を呼んでほしい気分じゃろ?」


いきなりの爆撃。


影クオリア、硬直。


セレナが追撃。


「クオリア兄さん、“名前で呼ばれたい”日があるの、最近わかってきた」


リオナがダメ押し。


「今日の先輩は“呼ばれたら照れてプチ暴走”タイプですね!?

わかります!!!」


影、爆発寸前。


しかし逃げない。

逃げなくなったのが、最近の変化。


アリアは、

あの日の夜の抱きしめられた温度を思い返しながら

そっと囁く。


「クオリア、兄者」


名前を呼ばれた瞬間――


影の揺れ方が、

他のどんな時よりも大きく、熱を帯びた。


影クオリアはぐらつき、

床に伸び、引き戻され、

照れすぎてまるで酔っ払いのような挙動になっている。


セレナはすぐに理解して優しく微笑む。


「名前を呼ばれて嬉しいのに、

照れが強すぎて、感情が暴れちゃうんだね」


リオナは興奮しすぎて語彙崩壊。


「名前でバグる先輩世界一かわいいいいい!!!!」


その圧に押され、

影は逃亡しかけた……が、


ドアをすり抜ける寸前で止まった。


逃げない。


離れない。


——それが、クオリアが変わり始めた証拠だった。


 


◆ アリアの日常の変化


食器を洗っているとき――


「兄者、見ておるのじゃろ?」


影が横に揺れる。

まるで“見てる”と告げている。


アリアは皿をすすぎながら笑う。


「兄者に見られると張り切ってしまうのじゃ

……昔から褒めてくれたからの」


照れながらも続ける。


「兄者の名前、呼べるようになるだけで……

家事がこんなに楽しいとは思わなかったのじゃ」


足元で影が静かに寄り添う。


 


◆ セレナの日常の変化


洗濯物を干すセレナは、

無表情で淡々としているのに、

声だけが柔らかい。


「クオリア兄さん……

今日もそばにいてくれるんだね」


タオルを干しながら続ける。


「前だったら“いるかどうかわからない”怖さがあった。

今は、“いる”ってわかる安心のほうが大きいよ」


影は、

セレナの影と重なるように揺れた。


干されたタオルが、

風に揺れて触れ合う。


 


◆ リオナの日常の変化


リオナは掃除機をかけながら

ハイテンション。


「先輩、見ててください!

私の掃除機フォーム完璧ですから!!!」


影は呆れている気配だが、

逃げてはいない。


「ふふん……

先輩に見られてると、女として全力出したくなるんですよ!!!

見られたら強くなれるんですよ!!!

恋って単位ありましたっけ!?

私フル単取れますよ!!!!」


掃除機の音より声のほうが大きかった。


 


◆ 三人の共通する変化


夜――

リビングに三人が揃った時、

自然と同じ言葉になった。


「名前で呼ぶって……すごいのじゃ」

「クオリア兄さんの名前は、心を強くする」

「先輩の名前呼ぶだけで1日100大勝利です」


影クオリアは、

その声を聞くたびに照れ、

揺れ、

暴走しかける。


だけど逃げない。


むしろ――近づいてきている。


距離は縮められる。

触れられなくても。


名前は、

触れられない手のかわりになる。


 


◆ 夜、静かな時間


眠る前、

三人はそれぞれ自室のドアを開けた。


影がどの部屋に向かうのか――

息を飲んで見守る。


影クオリアは、

アリアの前で止まり、

セレナの前で止まり、

リオナの前で止まり――


すべてを選んだ。


三人の部屋のちょうど中間、

廊下の真ん中に影を落ち着かせた。


《誰か一人じゃなく 全員と一緒にいたい》


それは、

誰も傷つけず、

誰も選ばず、

でもちゃんと愛している形だった。


三人は涙をこぼしながら微笑んだ。


アリア:

「兄者、優しすぎるのじゃ……だから好きなのじゃ」


セレナ:

「ずっと……そばにいようね。

世界が変わっても」


リオナ:

「先輩の優しさ、誰かを救うんじゃなくて、

全員を救ってる……好き……」


影は静かに揺れた。


照れ、喜び、迷い、愛情。

全部が混ざった揺れ方。


触れられない。

でも、触れている。


名前が届くようになったから、

世界が変わった。


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