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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

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「バレンタイン地獄祭り」

2月14日。

朝のリビングは、戦場の静けさをまとっていた。


アリアはフリルだらけのエプロン姿で

カカオを湯煎しながら低く唸っていた。


「兄者に渡すチョコは……完璧でなければならぬ……!」


鍋をかき混ぜる腕がブンッブンッと音を立てる。


セレナは、台所の隅で静かにチョコを型に流し込みながら

無表情のまま囁く。


「クオリア兄さんに“甘すぎる”と思われたら嫌だから……

ビターとミルクの黄金比率を……調整……」


もはや研究者である。


リオナはキッチンテーブルをバンバン叩きながら

溶かしチョコの海に溺れかけていた。


「先輩の舌の好みをデータベース化して統計出して、

最適値で計算して、

そこに私の愛を10割加算したチョコがこちらです!!!!!」


計算式の最後ぶっ壊れてる。


ドアの前では影クオリアが、

珍しく“完全に固まっている”状態だった。


なぜなら――

三人の殺意じみた熱量が

影越しに直撃していたから。


少しでもドアを開けようものなら

爆発するのが火を見るより明らか。


影が小刻みに震えている。

逃げたいのに逃げられない、

そんな絶望の影の形。


 


◆ チョコ完成→戦争勃発


昼過ぎ。

三人は同時にチョコを完成させた。


どれも全力。

手を抜いたものは一つもない。


しかし次の瞬間――

三人の視線が交差し、空気が一変。


アリア:

「……兄者に渡すのは妾なのじゃ」


セレナ:

「クオリア兄さんに渡す順番は……私が一番がいい」


リオナ:

「先輩の心の栄養は私が補給します!!

なのでトップバッターは私です!!」


静かなリビングが

一気に“無言の殺気”で満たされた。


アリアがゆっくりとチョコを持ち上げ、宣戦布告。


「妾は兄者の一番目じゃ。

揺らぐことはないのじゃ」


セレナは音もなく立ち上がった。


「間に割り込むつもりなら……容赦はできない」


リオナはチョコを掲げ、高笑いする。


「誰が最初に渡せるかじゃなくて、

“先輩の乙女ゲームルートの好感度が最初に爆発するのは誰か”勝負なんですよ!!!」


何言ってるのかはわからない。

だが気迫だけは伝わる。


影クオリアはドアの向こうで

完全に動きを停止した。


《開けたら終わる》

そんな空気を全身で感じ取っている。


しかし――


トラブル発生。


向こう側の廊下から物音がして、

アリアが過剰反応した。


「兄者が来たのじゃ!!!!」


その叫びと同時に――

三人がチョコを持って走り出した。


慌てて逃げようとした影クオリアは

避難先を失い、結果――


リビングの真ん中の床に

影として現れる という最悪の選択をしてしまった。


三人:

「「「クオリア(兄さん・先輩)!!!」」」


影:

(しまった!!!!!!!!)


 


◆ チョコ地獄祭り・本戦開始


アリアが跳躍。

影の腕の形にチョコを押しつけようとする。


「兄者ああああああ受け取るのじゃ!!!!!」


セレナが間に割り込み、

すれ違いざまに渡そうとする。


「クオリア兄さん、どうぞ……!」


リオナが空気を読まずに飛び込み叫ぶ。


「先輩!!!!私のチョコは恋の特攻兵器です!!!!!!!くらってください!!!!」


影クオリア、

生前最高速(※生きてるけど)で回避行動開始。


影が縦に裂け、横に伸び、床を滑り、

家具の裏に回り、

まるでホラー映画の怪異のような高速で逃げる。


しかし三人も手加減ゼロ。


・アリア → 殺陣のごとき踏み込み

・セレナ → サイレント追尾

・リオナ → 感情だけで物理法則破壊


コンボで追い詰めてくる。


影はテーブルに逃げ込んだが、

三人が三方向から包囲。


逃げ場なし。


影:

(終わった……!!!)


しかしそのとき――


アリアのチョコが

影の“一番近いところ”に触れそうになった瞬間。


影が急激に、

細かく震えた。


セレナも気づく。


「クオリア兄さん……触れられるの、今、怖いんだ」


その言葉に、

リオナの表情も一瞬だけ切なくなる。


あれだけ追いかけていたのに、

三人は同時に立ち止まった。


アリアは、そっとチョコを引っ込める。


「ごめんなのじゃ……焦っておったのじゃ……

兄者が遠くならぬようにしたくて……

必死だったのじゃ……」


セレナは静かに微笑む。


「触れられないからって……渡せないわけじゃないよね」


リオナは胸に手を当てて深呼吸。


「先輩のペース、ちゃんと守りますから」


影クオリアは――

逃げない。


三人は、

チョコをテーブルにそろえた。


どれも相手だけを見て作った世界に一つのチョコ。


その前で、

アリアがそっと囁く。


「兄者。

受け取ってくれたら嬉しいのじゃ。

食べなくてもよい。

ただ、“受け取る気持ち”だけでいいのじゃ」


影が震えた。


セレナが続く。


「選ばなくていいよ。

全部受け取って、全部大切にしてくれたら……

それで一番幸せ」


リオナも照れくさそうに微笑む。


「先輩の負担にならない形で……愛させてください。

渡すだけでいいです。

それで全部満足です」


その瞬間――


影クオリアが、

三つの影をそっと重ねるように揺れた。


影の輪郭が、

三つのチョコの前に伸び、


《ありがとう》


という文字を生んだ。


触れられない。

でも確かに“受け取った”。


三人の表情が一気にほころぶ。


アリア:

「兄者が受け取ってくれた、それだけで十分なのじゃ!」


セレナ:

「嬉しい……本当に、幸せ……」


リオナ:

「先輩に渡せた……あぁ……この日何回思い出しても泣けます……」


影クオリアは、

照れを隠すように小さく丸まって揺れた。


逃げない。

拒まない。

でも近づきすぎると照れてしまう。


それが、

クオリアらしくて――

三人はもっと好きになった。


 


◆ その夜


リビングの床で、

アリアとセレナとリオナが並んで座っていた。


三人の背後の壁に映る影は、

四つ分。


触れないけれど、

そばにいる。


アリアが微笑む。


「兄者、今日は本当にありがとうなのじゃ」


セレナが静かに続ける。


「クオリア兄さんの“ありがとう”が一番のプレゼントだよ」


リオナは泣きながら笑っていた。


「先輩の照れは全人類を救う……いや滅ぼす……でも私は救われる……尊い……」


影クオリアは、

彼女たちの影にそっと寄り添った。


今日だけは――

自分から近づく。


《ハッピーバレンタイン》


ホワイトボードに浮かんだ文字は、

震えるほど優しかった。


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