表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/82

「兄者の気配を追え!」

放課後。

玄関のドアを開けた途端、三人は硬直した。


家の中が――完璧すぎる。


靴はきれいに揃えられ、

リビングのラグは皺ひとつなく、

ゴミ箱は空、

洗濯物は全て畳んでしまわれ、

さらにはなぜか観葉植物が増えている。


黒衣の女が、真顔のまま静かに言った。


「兄さんが……仕事を増やしてきてます」


ストーカーが床についた手を震わせながら嗅ぐ。


「先輩の……先輩の柔軟剤の香りがします……

このフローリング、先輩が本気で磨いた時の匂いです……♡」


銀髪の妹は目を輝かせて叫んだ。


「兄者の気配が濃すぎて逆にどこにいるかわからぬのじゃ!!」


確かに。

生活のどこを見てもクオリアの“痕跡”がある。


・台所のまな板の位置

・洗濯物の畳み方

・クッションの角度

・ティッシュの引き出し方向


すべてが“クオリアのこだわり”で揃えられている。


ストーカーが頭を抱えて大騒ぎした。


「先輩!!!!

生活能力の霊として実家に帰ってきてません!?!?!?!?」


表現がカオス。


黒衣の女が淡々と修正する。


「兄さんは生活に干渉しすぎて“逆に存在が浮いている”状態です」


銀髪の妹、突然の閃き。


「つまりじゃ!!

兄者はきっと“ここに来た”という痕跡を残したいのじゃ!!

ならば、兄者の気配を追えば兄者と会えるのじゃ!!」


名推理か暴走か紙一重。


だが、三人はすぐに走り始めた。


 


◆ 靴箱の前

銀髪の妹:

「兄者!! 妾は必ず見つけるのじゃ!!」


◆ 台所

黒衣の女:

「兄さん、ここで料理していた……手の高さが兄さんの手つき……」


◆ 洗面所

ストーカー:

「先輩の歯磨きクセを再現しないでください♡ クソほど可愛い♡」


痕跡の良さに酔いしれるタイプが一番危険。


 


そしてついに――

三人が揃って“決定的な証拠”を発見する。


場所は リビングの座椅子。


座面がほんの少しだけ沈んでいる。


黒衣の女が震えながら耳を寄せた。


「兄さん……ここに座ってた」


銀髪の妹が隣に座ってみる。


その瞬間、沈み方がぴたりと一致した。


「兄者の……座り方と一致したのじゃ……!///」


ストーカーは涙目。


「先輩の体温が、まだ残ってる気がします……♡」


いや気のせいです。


 


その時だった。


座椅子の影が、ふっと揺れた。


三人が息を飲む。

影の輪郭が、座った人間のように変化する。


目には見えない。

音もない。


それでも確かに――

そこにクオリアが“いる”。


黒衣の女が震える声で言う。


「兄さん……会いたい……」


銀髪の妹がぎゅっと座椅子を抱きしめる。


「兄者……妾はここにおるのじゃ……」


ストーカーは両腕を広げ、影に向けて微笑む。


「先輩……触れなくてもいいです……

そばにいてください……それだけで幸せです」


 


影がゆっくり文字を描いた。


《俺もいる》


三人の目が一気に潤む。


けれどその文字は、すぐに書き換わる。


《でも 触れたら壊れる》


銀髪の妹が必死に首を振る。


「兄者が壊れるのじゃ!!

妾たちは壊れぬ!!」


黒衣の女も涙を落としながら叫ぶ。


「兄さんがいなくなるほうが嫌!!」


ストーカーは声を震わせながら笑う。


「先輩が壊れても……

私たちがまだ好きって言うから……

怖がらなくていいですよ……!」


その瞬間――

影の輪郭が大きく揺れた。


迷っている。

揺れている。

触れたい。

触れたくない。


会いたい。

でも壊したくない。


その葛藤が影の歪として伝わってくる。


 


そして――

影はそっと、三人の頭上に手を伸ばすように揺れた。


触れない。

触れられない。


でもそれは、まるで“撫でる仕草”。


銀髪の妹は泣き笑いになった。


「……兄者の撫で方、変わってないのじゃ……」


黒衣の女は手を胸に当てる。


「兄さん……ちゃんとここにいる……」


ストーカーは涙を拭きながら微笑む。


「先輩……大好きです」


影は、優しく揺れただけで――

それ以上は触れなかった。


触れたいのに触れられない。

触れられたら壊れてしまう。


それでも “そこにいる”。


その夜、三人は座椅子の周りに布団を並べて眠った。


影はずっと、その中心に佇んでいた。


見守るだけしかできなくても、

見守ることを選んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ