「姉妹会議、恋バトル開幕」
学校から帰ってきた三人は、
ランドセルを置くより先に リビングのテーブルを囲んでいた。
まるで“緊急会議”のように。
黒板の代わりにホワイトボード。
マーカーが3本。
やる気は満タン。
銀髪の妹が、パンッと手を叩いた。
「諸君、集まってもらったのは他でもないのじゃ!」
いや誰も呼んでないし勝手に集合しただけだが。
黒衣の女が無言でボードにタイトルを書いた。
《兄さん攻略ミーティング》
ストーカーはさらに副題を追加した。
《〜先輩の心とハートを掴み続けるには〜》
タイトルのクセ。
3人が並んで背筋を伸ばすと、
まるで“戦略会議”のような空気になった。
銀髪の妹が発言トップバッター。
「妾は兄者の好きなところを100個書いてきたのじゃ!」
ホワイトボードに 100 という数字が太字でドンッと書かれる。
黒衣の女はスッと何かを机に置く。
「私は兄さんの“生活習慣”“欲しい言葉”“ほっとしている瞬間”を
すべて表にしてきました」
ストーカーはファイルを取り出す。
「私は“先輩が照れるポイントランキング”をベスト200までまとめてきました♡」
情報量の暴力。
銀髪の妹が、机をばんっと叩く。
「つまりじゃ! 誰が一番兄者を理解しているかという問題なのじゃ!」
黒衣の女が腕を組む。
「兄さんの一番を決めていいのは兄さんだけ。
でも、兄さんの心に寄り添う努力は平等」
ストーカーがきらきらした目で言う。
「だから、“愛のプレゼン大会”をするんですね♡
わかります♡」
お前わかってるようで多分何もわかってない。
すると突然、ホワイトボードの隅の“影”が揺れた。
マーカーが自動的に動き、
一行だけ文字が書かれる。
《やめろ》
3人、即停止。
銀髪の妹が真っ赤な顔になりながら叫ぶ。
「み、見られてるのじゃ?!///」
黒衣の女が冷静に頬を赤らめる。
「兄さん……今ここにいるんですね……
その……見られてるのは……恥ずかしいです……」
ストーカーは背筋を伸ばしながら両手を広げた。
「先輩!! 最初から見てください!!///
全部見せます!!/// 書類も心も下着も部屋も全部!!///」
勢いが狂気。
影の文字が急いで消され、
新しく書かれる。
《やめろ 本当にやめろ》
影の王が全力で引いてるのが伝わってくる。
だが銀髪の妹が、
涙目でホワイトボードに向き直った。
「兄者に見られているなら……妾はなおさら譲れないのじゃ……!」
黒衣の女も静かに背筋を伸ばす。
「兄さんは一人じゃない。
私たちは“全部”兄さんと生きたい」
ストーカーは胸に手を当て、真顔で言う。
「先輩、私は生涯レベルでついていきます。
たとえ影でも。人外でも。人格バグでも。
最終的に宇宙存在になっても好きです」
一途なのは素晴らしいが表現が偏差値0。
影がゆっくり揺れる。
クオリアが“聞いている”証拠。
三人が同時に深呼吸し、
それぞれ思いの丈を言い始めた。
銀髪の妹:
「兄者といると、妾の世界が明るくなるのじゃ。
兄者に会いたくて、兄者を誇りたくて、
兄者の全部が好きなのじゃ」
黒衣の女:
「兄さんは、私の『安心』です。
守られている実感も、寄り添っている実感も好き。
兄さんだから……いい」
ストーカー:
「先輩は、私の初恋であり、永遠の理想です。
先輩がいれば、世界はどうでもいいです。
先輩の“幸せ”が私の幸せです」
三人とも真剣すぎて、
笑いも茶化しもない。
影が、ホワイトボードにそっと文字を描く。
《ありがとう》
その一言は、
告白の答えでも、約束でも、決着でもない。
でも、
これ以上ないほど嬉しい“返事”だった。
三人の頬が同時に赤くなる。
照れで俯くのに、表情は満たされている。
空気が落ち着いたその瞬間。
ストーカーがふっと顔を上げた。
「……ところで、
“兄さんの味噌汁の味分析会”の続きしません?」
銀髪の妹が食いつく。
「賛成なのじゃ! 兄者に一番近い味を再現するのじゃ!」
黒衣の女も静かに袖をまくる。
「兄さんの好みを体得するチャンス」
戦争再開。
影が猛スピードで文字を書く。
《それはやめろって言ってるだろうが!!》
だがもう止まらない。
鍋、味噌、出汁、メモ帳、スマホカメラ、計量スプーン。
部屋は戦場へ。
結局その夜、
台所からは
「味が違うのじゃ!」
「兄さんの塩分調整はもっと繊細!」
「先輩の味覚を私が再現します♡」
という叫びが深夜まで響いた。
影はその混沌を見つめながら、
シンクの蛇口をそっと閉じた。
――この家は今日も平和だ。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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