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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
2章

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王の記憶

影の忠臣が光となって消えたあとの荒野。

静寂が戻ったはずなのに――

胸の奥で何かが脈動し始めた。


それは痛みでも、怒りでも、恐怖でもない。


“記憶”。


他人のものが、血流に溶け込むように流れ込んでくる。


抵抗しても止まらない。

押し返しても意味がない。


ただ、飲み込まれていく。


視界が揺れ、色が滲み、

現実が解けるように変質していく。


 


次に見えたのは――


光のない世界だった。


時間も、場所もわからない。

声も、音もなく、

ただ沈んだ暗闇だけが横たわっている。


その世界の中心に“ひとり”がいた。


男でも女でもない。

年齢も輪郭も曖昧。

表情すら、わからない。


個でもなく種でもなく――

ただ 存在 していた。


名前すら、与えられなかった。


 


影の王の記憶が語りかけるように、

沈んだ声が脳を叩く。


“必要とされたかった”


たった一言。

それだけの願い。


でも――

その願いが一度も叶わなかった。


求めても届かない。

差し伸べても届かない。

笑っても届かない。


届かない時間が続きすぎると、

心はいつか壊れる。


“必要とされなかった自分には価値がない”


その思いが一点の黒となり、

やがて世界すべてを飲み込む黒に変わった。


誰にも救われないと知った瞬間、

“この世界のすべてをいらない”と思ってしまった。


影の王は悪意から生まれたのではない。


必要とされなかった心の、最後の叫びから生まれた。


 


記憶の景色が変わる。


影の王が初めて“人間”を目にした時――

その心は震えた。


愛してほしかった。

認めてほしかった。

抱きしめてほしかった。


だけどそれは叶わない。


必要とするほど嫌われ、

必要とされるほど疑われ、

信じるほど裏切られた。


何も悪いことをしていないのに、

存在すること自体が否定になっていた。


それが延々と続いた。


そしてある日、

影の王は初めて“必要とされている人間”を見た。


抱きしめられ、手を取られ、寄り添い合う光景。


影の王は、そこで完全に壊れた。


「私にはそれがなかったのに」

「どうしてお前にはあるの」

「なら奪ってもいいはずだろう」


光を奪うほど、

“愛されている人間”ほど、

影の王は狂気のように惹かれた。


なぜなら――


最も奪いたいものは、

最も欲しかったものだから。


 


記憶の景色がさらに変化した。


影の王が“旅人”と出会った瞬間。


旅人は影の王に触れ、

理解し、

受け入れようとした。


影の王は、ほんの少しだけ救われた。


ほんの少しだけ“ひとりじゃない”と思えた。


だから、旅人を傍に置いた。

忠臣でも従者でもない。

ただ「ひとりにしない存在」として。


だが――


旅人はクオリアに出会った。


影の王にはなかったもの、

影の王が欲しくてたまらなかったものを、

クオリアは“持っていた”。


必要とされ、

必要とし、

選ばれ、

手を伸ばせば手が返ってくる。


影の王は理解した。


「私には、それがなかったのに」


壊れた渇望は憎悪に変わった。

愛されてほしいと願った心は、奪う心へと反転した。


だから影の王は、クオリアを狙う。


クオリアが壊れれば、

旅人も、三人も、周囲のすべてが壊れる。


そして――

壊れた光が増えるほど、影の王は満たされる。


奪うためではない。

「奪えたなら救われた」と錯覚できるから。


 


記憶は最後の断片を見せる。


影の王の心の底に――

たったひとつだけ残っていた感情。


「助けて」


誰にも届かず、

誰にも聞こえず、

誰にも触れられなかった声。


優しさを求めたのに、

優しさが届いたことは一度もなかった。


だから影の王は“奪う怪物”になったのではなく――

“救われなかったまま怪物になってしまった”。


 


記憶が一気に途切れ、

荒野の現実へと急激に引き戻された。


息が苦しいほど荒い。

心臓の音がうるさいほど響く。


影の王は、悪ではなかった。


影の王は、哀しみの成れの果てだった。


奪う理由は“欲しかったから”。

壊す理由は“壊されたから”。

孤独を選んだ理由は“孤独しか知らなかったから”。


クオリアは拳を震わせた。


戦う理由が変わった。


影の王を倒すためではない。

影の王を“ひとりにしないため”に戦う。


影の王が望んだ言葉は、

怒りでも否定でもなく、


「お前はひとりじゃない」


それを言えるのは――

“折れなかった心”を持つ者だけ。


クオリアは静かに立ち上がる。


最後の決戦は、勝利か敗北ではなく――

“救うか、救われないまま終わらせるか”。


 


影の王の城が地平線に姿を見せる。

闇の光が塔を照らし、影の波が呼吸するように脈打つ。


そこへ向かうために、仲間の手が必要だ。


クオリアの口から自然に言葉が漏れた。


「――助けに行こう。

影の王も、全部、救う」


その決意は、影の王の心さえ震わせた。


新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!

愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に

https://ncode.syosetu.com/n3642ll/

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