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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
2章

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奪わせない

数日後。

影への恐怖は消えないまま、しかし逃げる理由も尽きた。


三人の温度が心を守ってくれた夜も、

学校での笑いも、

クラスメイトの気遣いも――


全部が“戻るべき場所”だと実感させてくれた。


だからこそ、踏み出す。


《ログインします》


 


新大陸アルターラ。

景色は以前より濃く暗くなっていた。


初回は影が遠くにいただけ。

今回、影はすぐ足元から迫る。


必要とされることを疑えば、すぐ飲まれる距離。


――揺れない心が必要。


クオリアは影の揺らぎを踏みしめ、前へ進む。


そこへ、聞き慣れた声。


「来たな」


旅人が立っていた。

剣を背負い、コートは黒く、影の風に揺れている。


表情はほとんど変わらないが――

どこか安堵しているのが、わずかに伝わる。


 


旅人はクオリアの影を一瞥する。


「……まだ不安はあるな。

だが、それでも来た。

それで十分だ」


褒めるでも励ますでもない。

ただ正確な評価。


それが、意外なほど心を支える。


 


旅人は指先で遠くを示す。


平原の先、瓦礫の谷。

黒い霧が渦巻き、影が溢れ出している場所。


「影の従属種シェードランナーの巣だ。

ここを超えない限り先へ進めない」


旅人が歩き出し、クオリアも続く。


足元の影がざわめくように揺れるが、飲み込まれはしない。


影を恐れながら、それでも前に進む――

その意思だけが、影を退ける。


 


巣の入口に到達すると、

旅人が剣を抜きながら告げる。


「この戦いは、影そのものとの初戦だ。

敵は形を持たない。

殺意・嫉妬・喪失・孤独――

誰かの心から生まれた感情が牙となる」


クオリアは深く息を吸った。


旅人が宣言するように言う。


「戦う前に決めろ。

“誰を必要とするのか”

その答えがない者から死ぬ」


重い言葉。


しかし、クオリアの返答は迷いなく出た。


「俺は――

仲間を必要とする。

あいつらがいないと俺は生きていけない」


旅人はわずかに目を細めた。


「よし。

その答えを持つ者から、生き残る」


そこで大地が揺れた。


 


黒い大気が裂け、影が溢れ出す。


形がない。輪郭がない。

だが“牙”だけが恐ろしく鮮明。


空気を裂くように襲いかかってくる。


旅人が前へ跳び、剣で影を薙ぐ。

斬った瞬間だけ輪郭が現れ、黒い霧が散る。


「影は感情だ。

“否定”では消えない。

“価値”で上書きしろ!」


意味が分かる前に――

クオリアの胸に影が突き刺さる。


“誰にも必要とされていない”


その感情が、刃のような痛みで心臓を貫く。


膝が沈みかける。


しかし、昨日の光景が脳裏に浮かぶ。


三人の温もり。

教室で笑い声が響いた時間。

クラスメイトのストレートな言葉。


守られていた記憶ではない。

一緒に笑い合っていた記憶。


それが影の黒を押し返す。


「……俺は必要とされてる。

でも、それだけじゃない。

俺も“必要としてる”」


影が一瞬止まった。


胸の痛みが消え、黒い霧が弾ける。


旅人が低く告げる。


「それだ。

影に勝つ条件はひとつ。

必要“される”と同時に――

必要“とする”こと」


影が次の波を放つ。

旅人が前衛、クオリアが後衛。


もう膝は折れない。


影の刃が迫るたび、

クオリアは心の中で選ぶ。


必要だと思える誰かを。

自分が戻りたいと願った場所を。


そのたびに影が砕け、霧が散る。


 


最後の塊が崩れ落ち、

巣は静まり返った。


旅人は剣を収めながら言った。


「この程度で苦戦しているようでは、

影の王には届かない」


その言葉は厳しい。

だが、続きがあった。


「だが――初戦としては完璧だ。

生き残る“意思”がある」


それはこの世界で最大級の褒め言葉だった。


 


影が消えた場所から、

白い光が伸びて道を示す。


新たなエリアへ進むためのゲート。


旅人は告げる。


「次は“選択”だ。

誰の心を背負って進むのか。

誰を必要とするのか。

それが攻略の条件になる」


クオリアは問い返す。


「その“選択”を間違えたら?」


旅人は即答する。


「――影が、現実ごと奪う」


背筋が冷たくなる。


それでもクオリアは視線をそらさない。


「進む。

たとえ影の王だろうと、

俺は戻る場所を守るために進む」


旅人は短く笑った。


「なら行け。

次のエリアへ。

……そして、いつか俺を必要としろ」


光のゲートが開く。


強い風が吹きつけ、視界が白で満たされる。


 


攻略はここから本番。

必要とする心が試される戦いが始まる。

新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!

愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に

https://ncode.syosetu.com/n3642ll/

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