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特殊精鋭部隊リーダーの高校生VRMMOで最強に  作者: 暁 龍弥
2章

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37/82

玄関の鍵を開けて中へ入ると、

家の空気がいつもより静かだった。


普段なら三人がそのまま騒々しくなだれ込んでくるのに、

今日は誰もすぐには動かない。


なぜか――

全員が、一歩目を踏み出すのをためらっている。


部屋の奥から冷たい風が一瞬だけ吹いてきた気がした。


もちろん、窓は閉まっている。


 


沈黙を破ったのは銀髪の少女。


「兄者……なんか、変なのじゃ。

いつもより、家の影が濃い気がするのじゃ」


黒衣の女も小さく頷く。


「光源は同じなのに、影の角度が違う。

理屈に合わない」


ストーカーは笑みを崩さず囁く。


「嫌な予感がします。

“必要とされてない場所の気配”です」


心臓が弱く跳ねた。


 


家のリビングへ向かうと、

床にうっすら黒い線のような影が見えた。


まるで――

何かが這った跡のように。


だが、影だけで実体はない。


触れようとしても触れられない。

ただ“そこにあるだけ”。


銀髪の少女が袖を掴んで震える。


「兄者……怖いのじゃ」


黒衣の女も珍しく緊張した声で言う。


「兄さん、離れないで。

影の温度が……ゼロ度に近い」


ストーカーだけは落ち着いているが、

目の奥は完全に狩人のそれだった。


「“奪いに来ている”気配。

先輩が不安を抱いてるから、それに呼ばれて来てます」


クオリアの理屈では理解できない言葉。

だが否定できなかった。


 


影は少しずつ移動していた。

引きずるように、ゆらゆらと。


その先にあるのは――

クオリアの部屋。


ゲーム用のVRセットが置いてある部屋だ。


 


銀髪の少女が震える声で言う。


「兄者……行かないほうがいいのじゃ……」


黒衣の女は冷静に危険を分析する。


「兄さんが影から離れられなくなる可能性がある。

“必要とされること”を求めすぎると、

影につけ入られる」


ストーカーは低く、静かに言う。


「でも先輩の心が逃げたままだと、もっと影が広がります。

……向き合わないといけない時かもしれません」


三人はそれぞれ違う意見だが、

どれも“クオリアを守りたい”気持ちから生まれた本音だとすぐ分かった。


それが逆に苦しくなる。


必要性で命を測る世界に触れたせいで、

守る気持ちすら痛みに感じてしまう。


 


クオリアは深呼吸して言う。


「……大丈夫だ。

影を見るだけでいい。触れはしない」


三人は反対しそな表情をしたが、

最終的にはクオリアの決断を信じた。


 


部屋へ足を踏み入れる。


VRセットのある机の下――

黒い影が静かに揺れていた。


実体はない。

音もない。

ただ存在だけがそこにある。


目を離すと、心が冷えていく。

視線を向けると、胸がすくむように痛む。


そして理解した。


この影は、ゲームのものではない。


“心の中の影が形になったものだ”。


不安、孤独、必要とされない恐怖、

居場所を失う恐怖。


それらが固まって“影”を作っている。


 


なぜ今、ここに?


答えは簡単だった。


新大陸で植えつけられた価値観が、

現実に侵食し始めたから。


「必要とされる者だけが残る世界」


そのルールを知ってしまったせいだ。


 


影は、気づかれたと理解したように動きを止めた。


動かないのに――

心臓の鼓動が早くなる。


影は静かに揺れながら、言葉を持たないまま

1つの感情だけを押しつけてくる。


“お前は必要とされていない”


胸が締めつけられる。


昨日、三人に囲まれて幸せだったはずの時間が

一瞬で疑念に変わりそうになる。


その瞬間、背後から温度のある声が重なる。


「兄者は必要なのじゃ」

「兄さんの価値はここにある」

「先輩は私たちの“生きる理由”ですよ」


影の冷たさが薄れた。


三人がクオリアの背中に触れた瞬間、

影はゆっくりと後退し始めた。


音もなく、悲鳴もなく、ただ消えていく。


完全ではない。

まだ少し部屋の隅に残っている。


追い払うまではいかない――

ただ“退いた”だけだ。


 


クオリアは息を整えて言う。


「……ありがとう。

でも、これは多分、俺自身の問題だ」


三人は否定しようとしたが、

クオリアは続けた。


「影を倒すとかじゃない。

影に支配されないように――

“自分で自分を信じなきゃいけない”って話だ」


その言葉を聞いた三人は、

ゆっくりと表情を柔らかくした。


「兄者がそう思えるなら……妾は信じるのじゃ」

「兄さん、支える。立てなくなったら抱えてでも」

「先輩、強がりでも弱音でもいいので全部聞きます♡」


影と三人の温度差があまりに大きくて、

胸が熱くなる。


 


ただ――部屋の隅の影が、ゆらりと揺れた。


完全に消えたわけではない。

いつでも戻ってきそうな“未処理の問題”。


だがクオリアの目は逃げなかった。


(影がいるなら……その理由も見つける)


影に勝つのではなく、

影に心を奪われないために。


新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!

愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に

https://ncode.syosetu.com/n3642ll/

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