放課後
放課後のチャイムが鳴ると同時に、
三人は廊下でクオリアを出待ちしていた。
逃げ道ゼロの位置取り。
銀髪の少女は満面の笑顔で腕を掴み、
黒衣の女は自然な流れで教科書を持ってくれ、
ストーカーは後方から髪の匂いを嗅いでうっとりしている。
周囲の生徒はざわつきっぱなし。
「また囲われてる!」
「すごい…昼も囲われてたのに放課後も…」
「クオリアのHP残ってるかな…」
「むしろMPが永遠に回復しないタイプだ…」
言い得て妙。
教室から出たクラスメイトが声をかける。
「なぁクオリア!今日も寄り道してこうぜ!
ゲーセンでも、アイスでも、なんでも――」
三人の空気が一気に“刃”になる。
銀髪の少女 → 無表情の笑顔
黒衣の女 → 微笑みなのに目が笑っていない
ストーカー → 笑顔のまま首を傾けている
完全に“縄張りファイティングモード”。
クラスメイトは青ざめて即座に撤退した。
「ごめん!また明日な!!命を大切にするわ!!」
見事な逃げ足だった。
三人が示し合わせたように歩き出す。
「兄者、カフェに行きたいのじゃ」
「兄さん、体温維持のために甘い物を摂取すべき」
「先輩♡ あーんして食べさせてください♡」
目的は違うが、行き先は一致していた。
――スイーツカフェ。
当然、席配置をめぐる戦争が勃発する。
・隣で座りたい勢
・向かいで見つめたい勢
・膝の上に乗りたい勢(主にストーカー)
席に座るだけで命が削られるとは。
クオリアは頭を押さえ、静かに言う。
「じゃあ俺はここ。
隣は誰でも、向かいでも誰でも、好きなように座れ」
譲歩でも逃げでもなく、
ただ平和のための選択。
すると予想外の結果に。
三人は互いに譲らず――
結果、全員向かい側に並んで座った。
クオリアの正面に、美少女3人が横並び。
店員が皿を置く手を震わせながらつぶやく。
「テーブルの反対側……戦場だこれ……」
見てるだけで胃が痛くなる配置。
ケーキが到着。
三人は全力で自分の一口をクオリアに勧めてくる。
「兄者、これ食べるのじゃ!」
「兄さん、これも必要」
「先輩♡ 口開けて♡」
三方向からスプーンが迫る。
クオリアはとっさに“全部まとめて”口に入れた。
銀髪の少女 → 喜び
黒衣の女 → 満足
ストーカー → 悶絶
そして店内の全員 → 拍手
(なんだこれは)
帰り道。
太陽は沈みかけ、街灯が灯り始める。
三人が左右と後ろから寄り添い、
クオリアを囲うように歩く。
まるで守られているのに、
守られている側なのはクオリアではなく三人のほうに見える。
必要とされたい。
近くにいたい。
離れたくない。
そんな気持ちが、歩幅や体温から自然と伝わってくる。
それはゲームの中の“命の価値”とは違う。
現実の“愛情の重さ”。
軽くて重くて、贅沢な束縛。
ふと、風が吹く。
耳元をすり抜ける冷気。
遊んで笑って甘えて――
とても温かい時間のはずなのに、
その冷たさだけが胸の奥に刺さる。
(……影のことは、忘れられていない)
けれど、すぐに銀髪の少女が腕にぎゅっとしがみつく。
黒衣の女がそっと手を繋ぐ。
ストーカーが肩にもたれてため息をつく。
そのぬくもりが、影の冷たさをごく薄く押し戻してくれる。
家に近づくと、
三人が声をそろえた。
「兄者(兄さん・先輩)、今日も楽しかった」
その言葉を受けた瞬間、
胸が温かくなる。
必要とか不要とかではない――
「一緒にいて楽しい」
その価値観が、クオリアを現実に繋ぎ止めてくれる。
ただし、玄関の前に立ったとき。
家の影が少し長く見えた。
まるで――
新大陸の影が、こちら側に滲み始めているように。
クオリアは気づかないふりをして、
玄関の鍵を回した。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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