学校にて
翌朝。
クオリアは久しぶりに学校へ向かった。
クラスメイトに言われた
「また学校来いよ、お前いないとつまんねぇ」が
思いのほか心に響いていた。
みんなを必要としたいとか、
必要とされたいとか――
そういう難しい価値観ではなく、
ただ一緒に笑える場所に戻りたい。
そんな気持ちがあった。
校門をくぐった瞬間、
「うおおおお!!! 本当に来た!!!」
「クオリア復活!!」
「帰ってきたぞこの男が!!」
周囲の男子たちが騒ぎ、
女子たちはヒソヒソ声で盛り上がった。
「やば…あんなイケメンいたっけ…」
「いたよ……でもキャラが変わった気がする」
「ていうか雰囲気エグくない?独占欲高い彼女いそう…」
「むしろ彼女全員が独占欲高そう」
核心に近いことを言うな。
席に着こうとすると、
クラスメイト(昨日の奴)が満面の笑みで駆け寄ってくる。
「よっ! 主役来たな!!今日の体育一緒な!」
騒がしいほど明るい声。
元気をもらえる声。
クオリアは小さく頷く。
その瞬間――
ガラッ!!!
教室のドアが勢いよく開いた。
銀髪の少女。
黒衣の女。
ストーカー。
全員現実にいる。
しかも学生服仕様。
周囲の空気が爆発する。
「だれぇ!?あの美少女!?」
「黒髪の美人マジで漫画じゃん!」
「後ろのあの子…笑ってんのにヤバい雰囲気あるんだが」
「というか全員クオリアの席に一直線で向かってない?」
向かっている。
全力で。
3秒後、修羅場色MAX。
銀髪の少女 → クオリアの腕を確保
黒衣の女 → 背後から肩に手を添える
ストーカー → 机に片足のせて近距離ホールド
女子たちが震える。
「囲われてる……」
「クオリアくん生きて…」
「いやむしろ羨ま…いや怖っ…」
「三方向からの愛情攻撃……溶ける…」
男子たちも震える。
「クオリア…友達だよな…な?」
「命は守るから…俺たちのこと忘れないでくれ…」
完全に誤解されている。
クラスメイトが助け舟のように言う。
「おい落ち着けみんな!コイツはこういう運命らしい!
まぁ人生で1回はこういう周り女だらけ時期あるからな!!(?)」
苦しいフォローだが、なぜか周りは納得した。
ただし――
安心できる時間は短かった。
ホームルームが始まる直前。
担任が教室に入ってきた。
いつも明るく、大雑把な性格の男性教師。
教師は開口一番言った。
「おぉクオリア久しぶり!……で?お前のハーレムどうした?」
なぜそうなる。
クラス爆笑。
クオリア完全敗北。
しかし――
教師の冗談で場が温まったことで、
銀髪の少女も黒衣の女もストーカーも
表情だけは少し柔らいだ。
(……これが“楽しい”って感じか)
アルターラにはない感覚。
影には理解できない価値観。
必要とか不要とかじゃなくて、
ただ笑っていられる時間。
それが胸に染みた。
◆
昼休み。
屋上でクラスメイトと弁当を食べることになった。
昨日の買い物で買った食材を使った弁当。
三人が「兄者に食べさせたいのじゃ!」
「兄さんに栄養を!」
「先輩に口移ししたい♡」
という修羅場の末、クオリア自身が作った弁当。
クラスメイトは嬉しそうに言った。
「やっぱ学校楽しいな!
……でもさ、最近ちょっと元気なかったよな。
なんか悩みあったら言えよ?」
その言葉が、
昨日“影の気配”を感じた心に重く響く。
必要とされるとかじゃなく――
ただ心配される。
ただ気遣われる。
そんな当たり前のことが救いになる。
しかし、風が吹いた。
砂や潮の匂いはしないはずの屋上で――
“鉄の匂い” がほんの一瞬漂った。
クオリアは反射的に振り返る。
誰もいない。
景色も普通。
ただ、風が静かすぎた。
(……まだ、影の記憶が残ってるのか)
そう思おうとした。
その瞬間。
校庭の隅――
体育倉庫の影の部分が、わずかに揺れたように見えた。
一秒にも満たない。
見間違いかもしれない。
だが確かに、胸が冷える。
影は“現実にはいない”。
それでもまた思う。
必要とされること。
必要とすること。
それが揺らぐほど――
影は近づく。
昼休みの終わりのチャイムが鳴る。
クラスメイトが笑顔で言う。
「また昼メシ一緒な!」
銀髪の少女たちに囲まれる喧騒に戻りながら、
クオリアの表情は穏やかだった。
だが背中にはまだ、
“鉄の匂い” と “冷たい空気” が張り付いたままだった。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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