荒野
光に飲まれた視界が、ゆっくりと色を取り戻し始める。
最初に感じたのは――音 だった。
海でも風でも波でもない。
金属が遠くで軋むような、低く重い反響。
次に 匂い。
血でも花でも土でもない。
“錆びた鎖” に似た、乾いた鉄の匂い。
視界が完全に開く。
そこは、誰も見たことのない地だった。
地平線まで続く荒野。
大地はひび割れ、赤茶けた岩がむき出しになっている。
草木は一本もない。
だが、遠くの空の境界に
巨大な “鉄の森” のような構造物群が見えた。
木ではなく、刃のような鉄柱が無数に突き立っている。
風が触れるたびに、低い金属音を響かせていた。
大地に足をついた瞬間、
システム音が淡く響く。
《アルターラに降り立ちました》
《データ同期中――》
《警告:この大陸は “ゲーム外要素” を含みます》
《自己責任で行動してください》
意味が分からない。
ゲーム外要素とは何か。
それ以上の説明はなかった。
周囲を見渡すと、転移直後の場所には
古びた石碑が一つだけ立っていた。
そこに刻まれた文字は、
システムフォントとは違う、
まるで “生きている何か” が描いた文字のようだった。
内容は読めない。
だが、不思議と “何かを受け入れてはいけない” と心が告げる。
風が吹いた。
だが肌が感じる風ではない。
“体温が削られるような感覚” だけが残る。
銀髪の少女が、袖を強く握った。
「……変なのじゃ。息はできるのに、空気が入ってこない感じなのじゃ」
黒衣の女が周囲を観察して言う。
「音も匂いも、粒子が違う。
この大陸は、私たちが知っている物理じゃない」
ストーカーは微笑んだまま、足元の土を蹴った。
「先輩♡
この場所、“死なないようにできてる世界” じゃなくて
“死ぬのが当たり前の世界” ですよ♡
好きです♡ こういうの♡」
冗談ではなく、直感のように聞こえる。
その時だった。
遠くの鉄の森の方向から――音 が走った。
地鳴りでも雷鳴でも咆哮でもない。
“何か巨大なものが、地面をゆっくり引きずっている音”。
ゴォォォ……ズル……ガガガガ……
耳が痛いほどの低周波。
それが、こちらへゆっくり確実に近づいている。
黒衣の女が低い声で告げる。
「ただの敵ではない。
アルターラは今までの “大陸” と違う。
生き物が、戦争ではなく “捕食” を目的としてる」
銀髪の少女が小さく震える。
だが逃げようとはしない。
ストーカーは頬を紅潮させながら息を吐く。
「来ますよ♡
楽しみですね♡
これ、絶対に“ボスじゃないのに死ぬやつ”♡」
地面の振動が強くなった。
砂埃の向こうで、何か巨大な影がゆっくりと形を成す。
牙でも剣でも翼でもない。
“形容できない形” が姿を現そうとしていた。
クオリアは拳を握る。
今はまだ、挑発しない。
情報も、敵の性質も、何もわかっていない。
ただ一歩だけ前に出て、
静かに構える。
「来い。
ここからが――新大陸の始まりだ」
風が止まり、
空気が震え、
影が完全に姿を現そうとする。
アルターラに降り立った者に
“生き残る資格” があるのかを測るように。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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