次は
現実での休息(休息と言っていいのかは微妙だが)を終え、
クオリアは再びログインした。
光が視界を満たし、雪原の冷たさは一瞬で消え、
巨大な転送陣の中央へ降り立つ。
周囲には既にギルドメンバーが整列していた。
鎧、魔導書、弓、槍――
一万を超える装備の輝きが整然と並ぶ。
制圧した国を拠点として、軍勢はさらに増えていた。
戦況マップが空中に展開される。
《北方帝国・西の王国・制圧済》
《次の攻略可能国家:東の聖都/南の砂海帝国/中央の機械連邦》
三方向へ広がる大陸。
どの国も一筋縄ではいかない。
クオリアはしばらく沈黙し、
最も視線が集まる 中央の機械連邦 に眼を向けた。
蒸気と機械、巨大兵器と無人自律兵――
魔法より科学の力で戦う国家。
世界最高の武装と火力を誇る強国。
「次は中央の機械連邦だ。
ここを落とす。時間をかけるつもりはない」
ただの宣言なのに、
ギルドの空気が引き締まる。
すぐに転送陣が展開され――
視界が一変する。
転送先は 機械連邦国境都市・ターミナル・メトロポリス。
巨大な鋼鉄の壁。
空を飛ぶ大型砲艦。
無数の警戒ドローンが音もなく旋回している。
夜の都市は黒と赤の光が脈打ち、
まるで巨大な心臓の鼓動のようだった。
静かな警報音が鳴り始め、
都市全体にアナウンスが響く。
《警告:世界戦争対象国家・オリジン・ユナイト来襲》
《戦闘用自律兵展開》
空中から無人兵器が降下し、
地上では対人戦闘ロボが配備されていく。
人ではなく、兵器が前線に立つ国。
恐怖より、絶望より、合理を優先する国。
重い足音が響いた。
クオリアの前に、
黒い軍服の老人――機械連邦総指揮官が現れた。
人工の眼が静かに光り、機械の腕が装甲に覆われている。
「貴様らギルドは、
“力”ではなく“カリスマで国を落とす”と聞いた」
抑揚のない声。感情が欠落した機械のよう。
「だが勘違いするな。
この国は“心”では落ちない。
恐怖にも愛にも屈しない。
屈するのは――“損得と効率”だけだ」
言葉が冷たい。
「国家の機能を維持するために戦う。
戦う必要がないなら降伏する。
負けても誇りも感情も揺らがない。
我々はただ、“合理的な最善”を選ぶ。」
クオリアは相手の瞳を見つめ返した。
「つまり……勝ち目がないと理解させれば降伏する、か」
老人は首を僅かに傾けた。
「正確には、勝ち目がないうえに戦う意味がないと理解させることだ」
兵器たちが武器を向ける。
無数の銃口と砲塔と刃が月光に鈍く光る。
都市が静まり返り、世界が息を止める。
その空気の中で、
クオリアは一歩、前に出た。
音もなく、ただ歩く。
撃たれても、砲火が降ってもおかしくない距離。
だが兵器は撃たなかった。
自律AIが、演算している。
――撃っても無駄
――無駄な攻撃は非効率
――撃たないのが正解
統計・演算・損得勘定が導き出した答えは
恐怖でも忠誠でもなく “降伏の選択” だった。
総指揮官が静かに頷いた。
「合理的ではない戦争はしない。
機械連邦は、降伏する」
クオリアは剣を抜いていない。
攻撃もしていない。
ただ、存在そのものが「勝ち目がない」と理解させた。
システムログが世界に響く。
《オリジン・ユナイトが中央・機械連邦を制圧しました》
《大陸制覇率:52%》
世界の半分が制圧された。
戦争は、ゲームではなくなりつつあった。
クオリアは静かに息を吐く。
「――次だ」
都市の光が遠ざかり、
新たな転送陣が展開される。
世界が震えている。
誰も止められない。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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