第二泳_マネハールという男
緑の木々が広がっている、広々とした公園。
仕事終わりの大人や学校帰りの学生など様々な人が集まっている。
公園の中では、皆の楽しそうな声が行き交っている。
ただ一人を除いて。
「えぇ!5日後に決行する!?」
「はい。そう言ったつもりですが?あと、お静かに。」
一人の少女、アンジュは、ただ本屋でぶつかっただけの男と
国を抜け出す計画を立てていた。
「5日後って…まだなにも決まってないでしょう…?」
「それはそうかも知れないけど、国を出るのに、難しい計画もいらないだろ?
……それに。あの昔話へのおもいは青年は2日で実行したよ。」
アンジュは深い溜め息をつく。
頭の中で、これまでの事を整理しようとする。
こんなアンジュでも、悪いことは極力しないようにして生きてきたのだ。
ふと、アンジュは一つのことに気づく。
「あれ?私、貴方の名前聞いてませんでしたよね?
私も、名乗っていない気が……。」
「そう言えばそうでしたね。では先に。
僕はマネハール。先ほど本屋で述べた通り、昔は宮廷騎士をしていました。
現在は大通りのお店で普通に働いていますよ。」
「マネハールさん、ですね。私はアンジュと言います。
大通りのカフェで働いています。
……自己紹介もしないまま、国から出るところでしたね。」
アンジュは笑いながらそう言う。
「じゃあ、改めて国を出る計画を立てようか。」
それから二人は話し合いを続けた。
大抵は、マネハールが立てた計画にアンジュが意見を言うだけだが。
2時間程で殆どの計画は決定した。その計画はこうなった。
1,3日後。○月△日、午前2時に決行。
2,国から出る場所は南門。
3,南門兵士をマネハールが強襲。兵士が弱った後、二人で国を出る。
4,その後のことはその場で考える。
「はぁ。たったこれだけ決めるのに2時間半も……。」
「アンジュが僕の計画に反対するからだろ。」
「だって私も兵士を攻撃するとか出来ないし、嫌なんだもん!
…って、アンジュ?」
アンジュは驚き、少し照れながらそう言う。
「アンジュだろう。名前、間違ってたかい?」
「いや、合ってるけど…。呼び捨て…。」
「あぁ。嫌だった?ついでに敬語も止めてるけど。」
「いや、全然大丈夫ですよ。男性に呼び捨てされたこと無かったら…。
敬語は私も敬語じゃないし、いいよ。」
「そう?……じゃあ、帰ろうか。」
「はい。では、また明日?なの?」
「何を言っているんだい?僕の家に来るんだよ。」
マネハールは当然のように言う。
「……ええ!?なんで!?!?」
だが、アンジュは驚き、照れて顔を真っ赤にする。
「ハハッ。そんなに照れてどうした?
ただ、君に情報を流されると困るし、何があるか分からないから、
もしもの為にいつでも決行出来るよう、一緒に居るだけだよ。」
マネハールは笑っている。アンジュが必死に笑いを止めさせようとしている。
「そ、そうですよね。でも、家に行って良いの?」
「構わないさ。僕が誘ったんだし。さぁ、行くよ。」
そう言い、マネハールが歩き出す。
続いて、アンジュもマネハールを追いかけるように歩き出す。
このときはまだ、お互いに相手のことを何も分かっていなかった。
閲覧、ありがとうございます。
今回はちょっと短いかもでした。
残り5話もあるかな?位の短さです。の予定です。