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プルクラ_スペクルム  作者: 未空
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第0泳_昔話[とある青年の話]

むかしむかしあるところに、とても強く勇気のある、一人の人魚がいました。



その人魚はある日、王国の王様にこう言いました。


「王様!私はこの国を出て、この目でこの世界を、美しい景色を見たいのです!

 どうか、どうか私に国を出る許可を下さい!」


この青年が王様にこう訴えるのは、毎日のことです。

この日でもう100回目になります。ですが王様は、毎回同じ返事をします。


「それは出来ぬ事だ。毎回言っておるだろう。この国の外は、

 恐ろしい生物が多く潜んでいる。この国から出たら、直ぐに死んでしまう。

 私は自分の判断で国民を、お主を死なせたくなどない。」


「ですが、…」


「帰れ。何回来ようと、城壁の門を開けることは出来ぬ。」


青年は下を向き、今日も帰って行きます。


「何で、何で開けてくれないんだ…。」





そして、次の日。王様の所に青年は現れませんでした。

それは、その次の日もでした。


「むぅ。あやつはどうしたのじゃ…。

 来るのも迷惑であるが、来ないとなると心配なものじゃ…。」


王様がそうつぶやいた時でした。


「お、王様!き、緊急事態です!」


一人の兵士がそう言いながら息を切らし、王様のもとへ来ました。

緊急事態という言葉に王様は驚き、


「どうしたのだ!なにがあった!?」


直ぐにそう聞きます。

兵士は一回深呼吸をし、冷静に状況を報告しました。


「報告です!昨日、深夜2:00頃、一人の青年が南門を出て行きました!

 南門の兵士、ほぼ全員が重症の傷を負っており、

 強行突破されたものかと思われております!それともう一つ、昨晩から、

 毎日王様を訪ねていたあの青年の行方が分かりません。

 まだ、恐らく…の、段階ではありますが………」


「あやつが門を強行突破し、出て行ったと言うのか!」


「はい…。恐らくは……そうかと……。」


王様は頭を抱えます。どうしたものかと悩んでいると、

別の一人の兵士が駆け寄ってきます。


「王様!青年の部屋を捜索していたところ、こんなものが…」


その兵士の手には、[王様へ]と書かれた手紙が握られていた。


王様はそれを手に取り、開いて手紙を読みます。


それには、こう書かれていました。


【王様。毎日、訪ねていただけでなく、

 このようにして国を出てしまった事、どうかお許しください。


 やはり私は諦めきれ無いのです。この目で国の外を見て見たいのです。


 いつか必ず、帰ってきます。


 そして、私が見ることの出来た景色をそのままお伝えします。


 今まで、ありがとうございました。どうかお元気で。】





それから、10年が経ちました。

国の外へ出た青年のことは、当時では国中が大騒ぎになっていましたが、

10年も経った今では、[あの青年はもう死んだのだろう]と皆が考え、

その青年について騒ぐ人はいなくなりました。


当時の王様も、青年が国から出た3年後に死んでしまいました。


王様が死んだのは突然のことでした。病気などもなかったため、

国民の中には[あの青年のことに責任を感じ、思い詰めていたのだろう]と

考えた人も多くいました。


王様が亡くなった後、直ぐに新しい王様が決まりました。

新しい王様は、前の王様の息子で、王様の事が大好きでした。

そして、新しい王様は王様が青年のせいで亡くなった

という考えを持つ一人でした。


青年が国を出て10年が経ったその日、青年が帰ってきたのです。


「私だ。長らく国を出てしまっていたが、今日帰った!」


青年はそう言い、南門の前に現れました。

南門の兵士達は驚きながらも、王国のもとへ連れて行きました。



「王様!この者が10年前に国を出た青年です!」


一人の兵士が青年を連れ、そう言いました。


「なにっ!この者が……。おい、お前!本当にお前が国を出たのか!?」


王様は青年にそう尋ねます。


「はい。そうです。ところで、貴方様は新しい王様ですか?」


青年は新しい王様を初めて見るので、そう尋ねます。


「ああ、そうだ。お前が知る、前国王の息子だ。」


「そうですか。お亡くなりになさったのですね。」


「そうだ。父上は亡くなった。お前のせいでな!!」


青年は驚きました。自分は殺してなんかいないと思い、


「それはどういうことですか!?自分は王様を殺してなどおりません!」


そう言いました。しかし、王様は、


「確かに、お前が刺したりして、殺した訳ではない。

 だが、父上はお前が国を出てしまったことに

 責任を感じ、思い詰めていたのだ!お前が殺したも同然だ!」


王様はそう叫びます。


「おい!明日、この者を処刑する!国を出た罪と父上を殺した罪でだ!」


王様が兵士にそう告げると、青年はしゃべる間もなく、

地下牢へと連れて行かれました。


その日の夕方、青年が処刑されるという話題が国中に広まりました。

処刑は公開されて行うとのことだったので、

見に行こうという人が大勢いました。


国を出た罪、国王を殺した罪を犯した青年の処刑に、

反対する者はいませんでした。




翌日、青年の処刑が行われようとしていました。


「これより、この者を処刑する!最後に遺言はあるか?」


王様が最後に青年に尋ねます。青年は、


「私はこの国を出て、様々な景色を見ることが出来た!

 この世界には[地上]と呼ばれる、海の上の土地がある!

 海では無い場所がある!私は、この国の外の景色が見れて、

 とても幸せだった!悔いの無い人生が送れた!」


そう言いました。王様は青年がそう言った後、

兵士に命令し、青年を処刑しました。





その後もこの国は特に変化もなく、平和な日々を過ごしました。


青年のように、国を出ていこうとする者もいませんでしたとさ。



物語の中で重要(?)になってくる、この国の昔話(童話)です。


この次から、物語が展開されていきます。


この物語は、そこまで長編にする予定はないです。

いい感じにさっと終わらせます<(_ _)>

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