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1、入学
今まで背負っていた、赤いランドセルともおさらばだ。これからは、この学生鞄と共に――。
「優香ー!」
「――あ、まゆりー。おそーい。」
待ち合わせは、小学生の頃と変わらない。近所の小さな公園の入口。制服姿で会うのは初めてだから、なんだか新鮮で、心も弾む。
「ごめんごめん。また寝坊しちゃって。――やっぱ、優香って制服似合うねー。」
まゆりの仲の良い友人、篠宮 優香。彼女は勉強も良く出来るし、運動も中々。人当たりも良く、お人好しだ。――言わば、完璧な人。そんな彼女の事だから、待ち合わせ時間きっかりにそこへ居る。
だから、出発時間が遅れるのは、まゆりのせいなのだ。
「はいはい。その台詞は聞き飽きた。…そう?まゆりも、ちょっとは大人になった感じよ?」
「ちょっとは、ってなによ。もっと言ってくれたっていいじゃん。」
軽口を叩き合いながら、いつしか中学校への道を歩き出していた。
今からでも、間に合う。何故なら、優香が“これ”を見越して計算しているからだ――。