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JACK+ リベンジ  作者: sungen
JACK+ 復讐-リベンジ- 本編
10/11

第1羽 速水チーム① -6/6-


「脱水と、熱中症ですね……危なかったです」

エリックは言った。

速水はしっかりのぼせてしまった。


「……」

今、速水は部屋のベッドに横になって、氷漬けになり、点滴を受けている。

頰も手足も真っ赤だ。


「レオン、どう言う状況だったの?」

ベスはまだフリートレーニング中なので、休みのノアが適当な紙で速水に風を送りながら聞いた。

速水はまだ唸っていて、話を聞けそうに無い。触るとものすごく熱い。


レオンも同じく、段ボールの切れ端で速水をあおいでいる。


「俺が速水と別れて、脱毛してて、その間、多分ずっとサウナに入ってうっかり、……とかか?途中で出なかったのか?」

レオンは首を傾げた。


ちょうどその時速水が呻いた。

「……う、ぁー、くそ、鍵が……」

そう呟いて、がく、とまた寝落ちした。


一時間後。


「まず、サウナが故障してたんだ」

起きた速水はベッドに入ったまま、スポーツドリンクを飲みながら、レオン、ノア、エリック、そして遅れて戻って来たベスに状況を語った。


あの時。


速水は立ち上がった。

『それにしても、暑いな…。今何度だ?』

湿気で声も籠もっている気がする。


それに何故か、だんだんすごく暑くなってるような気もする……。


そして、部屋の右の壁にあった温度計、湿度計を見て速水は首を傾げた。

『室温32℃、湿度60%』…?絶対もっとあるだろ。

――普通サウナって80℃とか、90℃とかじゃなかったか?


その時。

カチャン!と音がした。


速水はそちらを振り返った。

……今、鍵を掛けられた……!?


『ちょっと待て!』

速水はすぐに駆け寄った。しかしそこでガチャと慌ただしく、二個目の鍵がかけられた。


『おい!今出るから!』

扉を叩き叫ぶが、もう開かない。


『!!おい、誰か!?居ないのか?――レオン!』

ガチャガチャと思いっきり引き戸を引っ張るが、びくともしない。


『おい!助けてくれ』

そろそろヤバイので速水は暫く叫んだが、声は届いていないようだ。


サウナに閉じ込められた!?


暑さのせいで血の気は引かないが、これほどヤバイと思ったのは久しぶりだ。


――誰だ!サウナルームの引き戸に鍵を付けようなんて言ったヤツ!!

普通つけないだろ!?

――内線の類いも、緊急ボタンも無い!?付けとけよ!

『……落ち着け、バリスタは常に冷静に……』


速水は扉とその鍵を見た。よし、壊そう。



「――で、扉は壊れなかったけど……、サウナルームを探したら、誰かの忘れ物があって、ヘアピンが何本か。…それで鍵を開けた。けど手間取って……脱衣所にでて、扉を閉めて――閉めたか?……よく覚えて無い」

「はぁ……。お前そんなスキル持ってたのか。まあ良かったが……」

レオンが若干呆れ気味に言った。

「ほんと、ピッキングを教えてくれた隼人と、あと俺の前に使った人に感謝だ。サウナに桶があって…手色々入ってた」

言って、速水は首を傾げた。


頑張ったが扉は壊れない。何か無いかと探した速水は、サウナの片隅に置き忘れられていた風呂桶一式を見つけた。銭湯に行くときのような。

その中にちょうど良いヘアピンがあった。


それにしても誰が?

速水はベッド脇に置いた、赤いピンを眺めた。無意識に一本掴んでいたらしい。

掃除されていなかった、という事は午前中、サウナを使った人の忘れ物……?


ヘアピンの先端を軽石や歯で加工して何とか……。開いたのは奇跡だと思う。

引き扉の鍵がそんなに高度な物で無くて良かった。


「なあ、エリック、シャワーとかサウナって男女別だよな」

速水はエリックに尋ねた。

「ええ。建物自体は同じですが、男女の階層が分れています。ですがエステは通常、50位以下チームの男性のメニューには無いハズです」

エリックは眉をひそめていた。

「そうなのか」

となると速水の恩人は。赤いヘアピンを使う、上位の男性?

……ダンサーだし、赤ピンを使う人もいるかもしれない。

命の恩人だ。もし見つけたらお礼を言おう。


「エステがあったのって、海外遠征メニューになってるからかしら。でも誰が――?」

ベスが言った。

「――誰が鍵かけたのかって?明らかに殺しにかかってるよな。ノアの事と言い」

レオンもまだ半信半疑、という様子だが言った。

「何でかな?」

ノアも不思議そうだ。今までこんな事は無かった。


エリックは気遣わしげな顔をしていた。

「とにかく、ハヤミ、良く気を付けて下さい。上にはすでに報告してあります」

速水は神妙に頷いた。

本当に死ぬ所だった。熱中症は恐い。――速水の祖母はそれで死んだのだ。


「それと、ノアの件ですが。ノアの食事には何も入っていませんでした」

「うわ、マジ?じゃあやっぱり、俺じゃなくてハヤミが狙われたの?」

ノアは言った。つまりノアは完全にとばっちりを受けた形だ。


「ええ、あまり詳しい情報は聞き出せなかったのですが……、異物が検出されたのはデザートの容器からでは無く、ハヤミのグラスからだったそうです」

エリックの言葉に、速水とノアは顔を見合わせた。


「そう言えば。俺は飲んでない」

速水は言った。

あの時、速水はたまたまカップで珈琲を飲んでいたので、水を口にしていない。


速水の隣でノアがはっとした。

「……あ!俺そう言えば、自分の水が無くて――最後に飲んだ!」

近頃の食事の際は、水まで注いでもらえる。そしてテーブルに水差しが置かれる。

――ノアはプリンを食べた後、自分の水を飲み干した。

まだあと一口くらい水が欲しかったが、わざわざ注ぐのも手間だった。

見ると速水の分の水が手つかずで残っていたので、ノアはこれでいいやと思って一口飲んだのだ。


「やばいな。水かよ」

話を聞いたレオンが言った。何となく、プリンより真剣だ。


「致死性の薬物でなくて良かったですが、これはその後を狙ったのかも……」

エリックが言った。

「そのご?」

ノアは怪訝そうな顔をした。

「ああ、いえ――運ばれた先で、トドメを刺そうと言う……」

「げっ」「穏やかじゃ無いわね……」

ノアが固まって、ベスが言った。


速水は首を傾げた。

「心当たりは全く無いけど。何で俺なんだ?」

そしてまた首を傾げる。


「いや。心当たりは……あると言えば――山ほどあるぞ。ハヤミお前、何かまた恨み買ったんじゃないのか?」

レオンが速水を見て少しニヤつき、そう言った。


「あら、もしかして。少し前にハヤミがボコボコに殴った人じゃない?ほら、クイーン・エリザに暴力を振るってた」

ベスが真面目な口調で言った。

速水はベスの意見を真剣に聞いた。


速水は、けどあの扉はそういうのじゃなくて、もしかしたら運営が、と言おうとしたが、頭が少しくらついた。


「あ-、あの腐れキング?あれはもう良いだろ。スカッとしたし。けど、あの人しつこそうだよね。それよりベスのお尻触った人じゃない?」

「ノアの腰触った人じゃ無いの?ほら、ハヤミがやっぱり殴った」

「あれかーどうだろう」

「ん?おっ」

レオンが少し眉を上げ、パンと、膝を打って立ち上がる。

何か分かったのか?

速水と、ノアベスがそちらを見る。


「ハヤミが殴ったオッサンかもしれないな」

「それだ!」「そうよ、そうかもしれないわ!」

「いやもしかしたらハヤミが」「いつのまにか恨まれてる説も」「こういうのは?」

まだ少しクラクラしている速水の側で、三人はワイワイと盛り上がった。頭がガンガンしてきた。

この三人は悪ノリさせると長い。いつもなら止めるのだが、今は気力が残っていない。


「――とりあえず、俺は気を付けるから。皆もとばっちり食らわないように気を付けてくれ」

速水は頭を押さえてそう言った。


そして思い出し、エリックを見上げる。

「そうだエリック、サウナに桶が忘れてあったから、持ち主に返しておいてくれ」

「分かりました。どうぞゆっくり休んで下さい」

「ああ」


……ヘアピンの持ち主が分かったら、お礼しないとな。

エリックが微笑み、速水はそう思って目を閉じた。


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