第4話 従者と少女
受験終わったのはいいものの、なんか脱力感が半端ないよ…
「やっぱりユイユイはヴァンパイアになってたね〜」
夕飯を食べた後、5人は優衣の部屋に集まってヴァンパイキットについて話し合っていた。
「もしそれが本当なら、私達は優衣さんの従者ということになりますね。でも、従者ってどういうものなのかが分かりません」
「そういう時にこそこのヴァンパイアキット取扱説明書よ」
ヴァンパイアキットと一緒に入っていた数ページ程度の取扱説明書。そこにはもちろん従者についてもかかれていた。優衣が吐血をぶちまけたせいで赤く染まっていたが。
『〜ヴァンパイアと従者について〜
ヴァンパイアは従者を作ることが可能です。
主にヴァンパイアである者と親しい人や、関係が深い人物などがヴァンパイアの血を飲むと従者になります。すなわち、身内や友人などを従者にしてしまうことができます。
従者になるとヴァンパイアと同様に身体能力が向上するに加えて、その人にあった従者専用の能力が与えられます。例えば、水に馴染みのある従者には水に関する力が、火に馴染みのある従者には火に関する力が手に入ります。
個々が手に入れた力の使い道は自由ですが、力を使うにあたっていくつかの注意点があります。
まず、従者の能力は従者自身の血液を消費して発動します。すなわち血が力の源であり、使いすぎると血液が失われて死に至ることがあります。
また、従者はその能力の代償として自身の血液を作る機能が低下し、自分の血液を一定量保つことが難しくなります。その場合、マスターであるヴァンパイアからの受血をするのが最も有効です。
受血とは、マスターであるヴァンパイア自身から従者が血をもらうことです。
ヴァンパイアには従者の数倍から数十倍の血液量があり、血液の生産力も強化されるために従者へ血を分け与えることが可能です。
すなわち、マスターのヴァンパイアが従者へ血を与えることにより従者は能力を使うことができ、ヴァンパイアがいなくては従者は能力を使えないということです。』
「お、おい…これってつまり。
私がみんなに吸血されて血をあげろってこと?」
「そ、そうなりますね。私達はひとまず優衣さんから血を貰わないと生きられないようです。」
「じゃあさっそくユイユイの新鮮な血をいっただっきまーグフゥ!」
「やめろ変態。血を全部吸い取るぞ。」
飛びついてきた東子にパンチをくらわす優衣。
顔面にクリーンヒットした。
「そっか、私が血を欲しがったのもそのせいか…」
「痛ってってー。で、その私達は従者?なんだろ。
その従者とやらの能力はどう使うんだ?」
「分かりません、そのことに関しては詳しく書かれてないようです。」
「うーん、私は使えるとしたら火かな?
熱血系だし、熱くて辛いもの大好きだし」
「うわ、1番使って欲しくない能力だな…それ。」
「なんだよユイユイ。
私が火を使ったら何か問題でもあるっていうのかよ?」
「いろいろあるよ…いろいろね」
火傷する自分、サウナと化す室内、家が焼失…
優衣にはいくらでもそんなことが想像できた。
そう、熱い女こと東野東子はずば抜けたトラブルメーカーだ。
「とにかく今日はいろいろあったし、もう寝ようよ」
「そうよね。もうこんな時間だし」
「賛成です」
「異議なし」
「なんだよー!お泊まり会といえばあんなことやこんなことをするのが当たり前だろぉ!」
「「「「お前が1番先に寝ろ」」」」
こうして5人はひとまず寝ることにした。
はぁ…なんか今日はいろいろとあったなぁー。
福引にはじまり、ヴァンパイアキットや吐血パラダイス。
明日になったら全部元通りになってないかなぁ……
そんなことを考えながら優衣は眠りについた。
だが、そんな優衣の願いを逆手に取るように事態は悪い方向へ進むことを優衣は思いもしなかった。