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ヴァンパイアパラダイス  作者: ピルルピピ
1章 ヴァンパイア少女優衣
3/46

第3話 噛み付き少女

 「んで、これは一体どういうことなの?優衣。」


 4人の前で正座させられる優衣。

 あの後みんなの吐いた吐血を掃除させられた挙句、夜にアイスを奢ることになってしまい。

 かなりしょぼくれていた。


「いや、その、あの。

 ちょっとヴァンパイアになりたかったって言うか、ハイ。

 ごめんなさい。」


「それにこれ、どう見ても怪しいじゃない?

 こんなもん飲んで死んじゃってたらどうするの?

 私はあなたの心配をしているのよ。」


「うぅ…すいません」


「で、体の方はどうなの?

 なにか変化はあったの?」


「いや、今んところは特になにも。」


「そう…まぁ体には何事もなくて良かったわ。今後一切こうゆう怪しいものは禁止ですからね!」


「………はい。」


 一方的に説教するのは小さい頃から親友の西条藍。

 やたら積極的に優衣に対して怒るのは、優衣への友情をこえた…以下略。


「でも、取説によると最初に飲んだ優衣さんはヴァンパイアになって、その血を飲んだ親しみ深い私達は優衣さんの従者となってしまったみたいです。それにしてもこの取説、赤くないですか?」


「従者ってことはユイユイが私達のご主人様ってことか。

 優衣様ぁぁ、なんとでもお申し付けください。なんでもしますから!」


「東子、ちょっと黙ってろ。」


「あ、痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!!

 しぬぅ!折れる折れる!」


 おふざけがすぎる東子に雪菜が制裁をくだした。

 東子はしばらく行動不能になった。


「もっとよくその取説を読みましょう。

 詳しくわかるかもしれませんし。」



 そして、4人は取説を読み始めた。しかしそこには目を疑いたくなるような事実が書かれていた。



『〜ヴァンパイアライフを満喫するためには〜

 ひとまず、この商品を手にしたあなたに祝福の言葉を送ります。おめでとう!あなたも今日からヴァンパイアだ!

 ヴァンパイアキットは使用者をヴァンパイアにして驚異的な力を与える我が社の最高傑作であり、その効果は飲んでからすぐにわかるようになっています。

 ヴァンパイアになると回復力、免疫力、身体機能が上昇し、自分の従者を作ることもできます。

 ヴァンパイアになって何をするかは自由ですが、ここではヴァンパイアになった皆様が安心安全快適なヴァンパイアライフを満喫できる用に注意すべき事について触れることにします。


 まず、ヴァンパイアとなった皆様に諸注意を。

 ヴァンパイアは前述の通り回復力は人間の時と比べ物にならないほどになりますが、不死身というわけではありません。故に死ぬときは死にますのでご注意を。


 また、最近はヴァンパイアになられた皆様同士で争われる事例が発生しております。

 当社はヴァンパイアキットを使用しての殺害、傷害、略奪、器物破損等の責任は負い兼ねますのであらかじめご了承ください。

 また万が一上記のような事が発生した場合、我が社独自で調査員を派遣し、本人の了解を得ずに独断で調査をする事がありますので改めてご了承ください。』




「…………………おい、氷麗。ちょっとそこの包丁取ってくれ。」


「いやいやいやいやいやちょっと待ったぁぁぁぁ!」


「物は試しだ!ちょこっと切るだけだからさぁ!」


「ダメだって!ちょこっとだけでもだぁーめぇー!」


「東子、いいかげんにしろ。」


 またしても東子が雪菜によって半殺しにされた。


「それで優衣。本当に体の方は大丈夫なの?

 どこか痛かったりしない?」


「んー。やっぱりどこもおかしくないよ。

 やっぱりあれは偽物だったんじゃないか?」


「そう…それならいいのだけど……………んっ………」


「ん?どうしたの藍?

 さっきからソワソワして。」


「いや、その…あの。

 なんか、えーと。」


「ん?」


 藍は優衣への説教が終わってからまるでトイレを我慢しているかのように何かを欲している。

 

「大丈夫?藍。」


「………血……」


「へ?血?」


「…………血を、飲みたいの。」


「え、えぇぇぇ!?

 ちょっと藍、それってどうゆう…」


「分からない。

 分からないけど、とりあえず血が欲しくて欲しくてたまらないの。」


「えっと血か…。血、血、どーすりゃいいんだぁ?」


「こうすれば…」


 藍が優衣に抱きつく。

 そして口元を首筋に近づけて…


 ガブリ。


 それは、想像も絶する痛みだった。

 首筋に人間とは思えない程の鋭い歯が二本、優衣の首筋に穴を開けていた。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 こんなに大きな悲鳴をあげたのは生まれて初めてかもしれない。

 あまりの痛さに意識が飛びそうだった。


「いっでぇぇぇぇぇ!

 あおいぃぃ!何やってんの!

 はなせぇぇぇ!!」


 優衣はその苦痛にたまらず藍を強引に突き飛ばす。

 無理に抜いたせいか、傷口が大きく広がってしまった。


 はぁ…はぁ…はぁ…。


 しばらく優衣は倒れたまま起き上がることができなかった。

 足の小指をタンスの角にぶつけた時のようにただ無言で傷口を手でおさえる。

 

 突き飛ばされた藍も、ようやく我に帰る。


「ご、ご、ごめんなさい!優衣。

 わたし…どうして、こんな!?」


 藍にも何故自分が優衣に噛み付いたのかは分からない。

 まるで取り憑かれたかのように意識が朦朧として、気がつくと優衣に突き飛ばされた。

 そして、優衣はかつてないほどの形相でこちらを睨む。


「藍。あんた、どうゆうつもり?」


 藍は、こんな怖い顔をした優衣を見たことがない。

 

「本当にごめんなさい!

 でも、わたしにも分からないんです。

 何故自分がこんなことしたか。」


「藍…あんたがこんなことするなんて、あれ?

 傷口が…ない?そんなバカな。」


 優衣の首筋にあった2つ穴は、まるで最初から何もなかったかのように治っていた。



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