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ヴァンパイアパラダイス  作者: ピルルピピ
1章 ヴァンパイア少女優衣
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第1話 吐血少女



 カランカラーンーー

「大当たり〜‼︎」


 ピカピカに光り輝く幸運の証の金の玉、それを引き当てたのは1人の少女だった。


「おめでとうございます!特賞で〜す!」


 賞品は特賞と書かれた飾り紐付きの封筒かと思いきや、渡されたのは辞書くらいの大きさの重たい箱。

 リボンと包装紙で飾り付けされているだけの簡易な物だった。


 特賞にしてはやけにしょぼい景品だったが、特賞を当てたという事実に興奮していたので彼女はとくに気にならなかったようだ。



 一目散に家に向かって猛ダッシュしながらその赤髪をなびかせる少女。

 文系の彼女にとっては買い物袋を持ちながらのダッシュはかなりきつかったが、右手に抱えてる箱がその辛さを忘れさせた。


 家に帰るなりすぐに箱を開封。

 リボンの結び目をほどき、包装紙のテープを丁寧に剥がす。


 中身はお金?日用品?もしかして…お酒?

 そんな期待を膨らませながら箱の蓋を開くと…


『ヴァンパイアキット〜今日からあなたも吸血鬼‼︎』


 そこには100均のおもちゃのようなイラストが描かれた、どう見ても安っぽい景品が入っていた。



「ナニ…コレ…」


 これって特賞だよね?

 店員さん、残念賞と勘違いしてないよねこれ?

 どうみてもおもちゃのまとめ売りとかで半額になってるやつなんだけど…


 ヴァンパイアキット、今日からあなたも吸血鬼ってこれまさかのコスプレ用品?

 でもみた感じ衣装とかが入ってる大きさじゃないしなぁ〜。


 さびれかけてる商店街の福引きだし、ある程度のしょぼさは覚悟してたけどこれはさすがにないでしょ…

 ましては特賞だよ、特賞。特別にすごい賞だよ?これじゃあ特別しょぼい賞じゃん。



 興奮が一気に冷めてしまい、もはやなんの期待も持てないヴァンパイアキットを開封する。

 だが、その中身はさらに彼女を驚かせた。



「まほうのくすり?…ブフォ」



 中に入っていたのは「まほうのくすり」と書かれた小さな赤い液体の入った瓶と十数ページの取扱説明書。

 コスプレ用品でもおもちゃでもなく、怪しいブツであった。



 まずは取説から読むか…

 えーっと、

『ヴァンパイアキット、あなたも今日から吸血鬼!!

 あなたは一度吸血鬼になってみたいと思ったことはありますよね?(いや、ないよ。)

 本商品はそんなあなたのご要望におこたえするために我が社の特殊エージェントチームが極秘に開発しました。

 同封されているまほうのくすりを飲めばあなたもたちまちヴァンパイアに!

 素敵なヴァンパイアライフをお楽しみください。


 ハッピー玩具株式会社』


 なんだこれ、ツッコミどころ満載だな…。

 とりあえずこのくすりを飲めばヴァンパイアになれるらしい、いかにもうさんくさい話だが。

 まぁ騙されたと思って使ってみるか。


 まずは…何か大きめな容器を用意してくださいだって?

 う〜んお風呂場まで行くのは面倒だし、この鍋でいいか。

 よし、大きめの容器スタンバイ。


 次は…まほうのくすりの栓を開けて中身を一気に飲み干してください?

 少し不安だけどなぁー、迷ってても仕方ないし、飲んじゃえ。



 ゴクゴクゴク。


 

 ……………味は普通だな。

 てっきりデスソースくらいまずいの想像してたけどビックリだ。

 体は……特に変化なしか。

 やっぱりこれジョークグッズだったのか。


 はぁ、騙され…グハァ!


 鍋に大量に吐き出された赤い液体。それは確かに少女の口から出たものだった。


 グッ、グッハァア‼︎


 ビチャビチャと鍋に吐き出される真っ赤な血。

 吐いても吐いても止まることのない吐き気が少女を苦しめた。


 はぁ…はぁ…。


 一体何回吐いたのだろうか。

 鍋に溢れんばかりに溜まった血を見てまた吐き気が襲ってきたのをかろうじて押さえ込み、彼女は床に仰向けに倒れる。



 死、死ぬかと思った。

 ガチで走馬灯みたいなものみえたわ。



 しばらく横になってから、もう一度取説を読む。


 そこには、

「ヴァンパイアライフを満喫するためには」


「ヴァンパイアと従者について」


「一人前のヴァンパイアになるために」


 など、なんだかよくわからない内容がズラズラと並べられていた。


 そして、最後のページの下に小さく


『注意、まほうのくすりを飲むと激しく吐血します。あらかじめご了承の上ご使用ください。』


 と書かれてあった。



 

 ソウイウコトハサキニカイトケヤァァァァァグハァ‼︎



 取説に向かって盛大に吐血をした。



 こうして、吐血少女・深見優衣のヴァンパイア生活が始まった。

 

 







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