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モノクロの虹  作者: にゃー
6/10

幸せって?


かえでに謝らなければ…。

昨日はなんであんなことを言ってしまったんだろう。

仲のいいやつが違うやつと仲良くしたための嫉妬か?

約束を破られたから悲しかったからか?

なんにしてもかえでに謝ろう。

そんなことを考えながら学校に登校した。




私が教室についたとき、天本ゆかりの席に人だかりができていた。


「やっぱりーー死神ーー」


「天本さんもーーよねーー」


ひそひそと噂話をする声も聞こえる。


「……おい、ブルドック、なにかあったのか?」


「ああ?!誰がブルドックだ!?」


いつも一緒にいた女子たちがみんなして退学して最近よく1人でいる佐田に声をかける。


「……ちっ、うちもよく知らねぇけどよ。

なんかあのお嬢様がニュースで噂の連続殺人レイプ魔に襲われたみたいだぜ?」


何故だ。

昨日はかえでと一緒に家で遊んでいたのではないのか?


そのあと噂話に耳を傾けてなんとなく自体を把握した。

どうやらかえでと別れたあとコンビニに行ったときに襲われたようだ。

襲われたといってもたまたま通行人に助けてもらい、未遂で終わり犯人も警察に捕まったようだ。

だが天本ゆかりに相当のトラウマを残したみたいだ。


………かえでが知ったらきっとまた自分を責めるだろう。

その前に教室から連れ出さなければ。

そろそろかえでがくる時間だ。

廊下で待ち伏せて屋上にでも連れていこう。


そんなことを考えていると教室が静まりかえる。

入り口のほうをみるとかえでがいた。


考えるより先にかえでの前まで歩いた。


「かえで、ちょっと屋上に一緒にきてくれないか?」


「…………なにが…あった……の…?」


「あとで話す。とりあえず教室をでよう。」


「なにがあったの!?」


掴まれた肩からかえでの震えが伝わってくる。

ほら、やっぱり。

きみはなにも悪くないのに。


私は仕方なく私が知りうる限りの事の経緯を話してやった。

更に顔色が青くなる。

よろよろと天本ゆかりに近づき、声をかけようとしたとき、天本ゆかりが大声を出して暴れだした。

かえでを恐れて、まるでかえでが悪いかのようにかえでを遠ざけた。


「かえで!!!」


かえでは教室から走って出ていってしまった。無理もない。

やっとできた友達に拒絶されたんだから。

しかもきみは自分を責めるのだろう…?


「大丈夫、ゆかり?」


「もう白崎出ていったから安心してね。」


何故だ。

何故きみらはー


「かえでがきみになにをしたと言うんだ……?」


震えてうずくまっている金髪の似合う美少女の前にいって話しかけた。

柄にもなく感情的な声を出してしまっと思う。

でもそうだ、かえでは何もしていない。

なのになんでかえでがそんな目で見られなくてはいけない。


「……ひなたちゃん……何いってるの……私もう少しでひどいことにー


「きみが犯されようが殺されようが私が知ったことか。かえでを傷つけたきみを私は許せないよ。」


ぶん殴ってやろうと腕を振りかぶったところでかえでの顔が頭に浮かぶ。


「ひっ………ひぐっ………」


天本ゆかりは相変わらずうずくまって震えて嗚咽をもらしている。


「……私はきみが嫌いだよ。」


だめだな、私は。

またかえでに怒られてしまう。

殴るのをやめてかえでを追いかけるために教室を後にした。


かえでは思った通り屋上にいた。

思った通りというか学校でかえでと時間を共有した場所は屋上以外ない。

もし屋上にいなかったら私には何処にいるのか見当もつかなかった。


「……かえで……。」


「……の………ぼくの…………」


屋上の入り口を出てすぐある段差にかえでは座っていた。

私に気づいていないようで頭を両手で抱えて小声で呟いている。


「ぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだー」


「……かえでのせいじゃない……」


「ぼくのせいだぼくのせいだ「ちがう…」ぼくのせいだぼくのせいだ「ちがうよ、かえで…」ぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだ「ねぇ、かえで……!」ぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのー」


「白崎かえで!!!」


「………………」


「私を見ろ、かえで。

落ち着いてくれ。」


「………ひなた………」


両手をつかみ顔の目の前で大声で名前を呼んでようやく私に気づいてくれた。

その目は弱々しく、涙の跡がついていた。


「きみのせいなんかじゃない。

天本ゆかりが夜にコンビニに行ってたまたまレイプ魔と遭遇してしまっただけだ。

確率は低いかもしれないけどない話じゃない。」


「……ぼくのせいだよ……ぼくと仲良くしたから……。」


「そんなことない、たまたまだ。

現に2週間近くなにも起きなかったじゃないか。」


「……でも昨日起きたんだよ。」


「実際は起きなかったんだよ。未遂だ。

天本ゆかりだって今は取り乱しているがすぐいつもの調子に戻るだろうよ。

彼女には支えてくれる人も多いし大丈夫だよ。」


だからそんな辛そうな顔をしないでくれ。


「………ねえ、ひなた……ぼくはきみに同じようなことが起きたらきっともう耐えられそうにないよ。」


「………きみ……なにを言って………」


弱々しい顔で、辛そうな顔で、でも何かを決めたような顔でかえでは私の目を見て言う。


「もう一緒にいるの……やめよう……」


何故だ。

何故きみはそんなことを言うんだ。


「………い……やだ………」


声がかすれてうまくでない。

そんなのきみも私も望んでないじゃないか。


「ぼくは人を不幸にするんだよ……きみまで……きみを不幸にしたくないんだ……」


「いやだ………いや……だよ……」


きみならわかるだろ?

1人でいるってことはほんとうに辛いんだ。

私はかえでといたい。

なにがあってもかえでといたいんだ。


「………か…えで……」


「……ありがとう。」


そう言いながら優しく抱きしめられた。


「ごめんね……」


悲しそうにそう言って私から離れて屋上の入り口の扉の向こうに消えていった。


「あ……ああ………」


追いかけなくちゃ…。

教室にいけばかえでに会える。

会ってちゃんと話さなくちゃ。


かえでの最後の顔が脳裏に浮かぶ。


ごめんねー


何故だ。

何故謝るんだきみは。


「……あ…ああああ……うあああああああああああああ…!!」


声をあげて泣いたのは久しぶりだ。

パパが死んでしまった日以来かな。


なあ、かえで。

きみの言う不幸ってなんだ?

車にはねられることか?

財布をなくすことか?

タンスに頭を思いっきりぶつけることか?

通り魔に暴行を受けることか?


そのどれよりも私はいま不幸だよ。


涙が止まらない。

手で目をこするせいで世界が黒ずんで見える。

きみは私の幸せを願って離れていったんだよね?



なぁ、かえで。



幸せってなんなんだ?

私にはわからないよ。







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