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弐の三

 「エネルギーねぇ。

まぁ、それの確率は低いわね。」真奈美さんは、

 ズバット切り捨てた。

 

 「どうしてですか?」

 エネルギー問題は、

最重要だから、あり得るかと思ったが......

 真奈美さんは、煎餅をバリバリかみ砕き、お茶を飲んで口の中を洗い流した。 「ぶはぁー」

 と息をついてから、

 膝元の花柄のハンカチで、口元を拭く。

 「そもそもさ、今頃、エネルギーの問題に着手しても遅いと思うの。

数年ぐらい前に国連のお偉いさんがさあと「何年かで、石油がなくなりますよーって言った頃はさ、

丁度この会社の全盛期の時代だったんだよね。

東京オリンピックの好景気の頃に、

この会社は、大企業クラスと言われるほどに発展したの知ってるでしょ?」

 真奈美さんは、言いながら、湯飲みに緑茶を淹れた。

 湯気が湯飲みから上ってゆく。

 

 東京オリンピックの時に、大企業といわれるほどに発展。

 そんなこと知っている。 この会社に入る前に、

 この会社の経歴のようなものを調べた時にとある雑誌にそう書いてあった。

 「そのネットワーク、 通称、タメンネットワークは、今や世界中の企業に使われている。

 情報社会において、

 タメンネットワークは、最高峰の、情報量を持っている。」

 

 真奈美さんは、続けた。

 「そんな圧倒的情報量を持つタメンネットワークが、石油の残量を把握していないなんてあり得る?

 多分国連が、あのニュースをする前にとっくのとうに知ってたと思うよ?」


 「とっくに知ってた、ねぇ......」俺は、湯飲みの中の緑茶を眺める。

 あと一回飲めばなくなりそうな量である。

 そして俺の顔が緑色に写っていた。

 真奈美さんはさらに続ける。

 「そうじゃなきゃ、

そのニュースの前に石油以外のエネルギー産業の株を買い占めたりなんかしないって。」

 確かに。

 あり得なくもない。

 国連が石油の話をしたあと、企業が一気に色々な石油以外のエネルギー産業の株を買う時、ほとんどの会社に弐面の名があった。


 俺は、パソコンで、

 エネルギー産業の株式会社の株を買っている企業の中に大抵、弐面の名があった。

 その後、一つの会社の株を様々な企業が買うと同時にその会社の株は、どんどん、鰻登りに上がっていったはず。

 弐面は、大儲けしたはずだ。

 でも。

 「何でうちは、その事を他の会社に伝えなかったんだろう?」

 利益も得られ、信用も得られるはずだが。 

 しかし真奈美さんは、俺の言葉を鼻で笑った。

 「馬鹿ねいうわけが無いじゃない」

 俺はムッとした。

 「どうして?信用も得られるじゃないですか?利益も得られるし、株も確実に買ってもらえる。一石三鳥で万々歳じゃないですか?」と小皺を寄せながら反論する。

 真奈美さんは、眉を上げて言った。


 「まぁね。その通りよ。確かに、言えば儲かったはずだわ。しかし、その後がね。」

 危ないのよ。

 真奈美さんは言った。


 「国連の情報というのはね、大なり小なり厳重に保管されているの。

今回は、その中間辺りだけど、それでも何十にもプロテクトされている。

 さて、そこから情報を取り出すために、諜報員が頑張って取り出した。

それを他のところへ売る。ここまでは良いのよ。

しかし、国連、国際連合というのは、個人経営の企業とは違い、世界中の国々があつまる、世界最大の

``機関''なのよ。

だから、世界で持つなかで、一番強い技術を持たねばならない。国際連合にさからったらいけないと思わせるために、そもそも立ち向かうという強い意思すら、消させるために。」


 だが、真奈美さんは、人差し指を一本天井に突き上げる。

 俺は、彼女の指先に目線を向けた。うわぁ。マニキュアゴッテゴテ。絵の具にでも浸けたのではないかというぐらい、彼女の爪は赤かった。

 しかし、彼女は俺の目線に気づかず、続けた。

 彼女の口も赤くなってきているのだ。

 「だから、立ち向かう者には容赦しない。

情報が盗み読みされたという痕跡に国連側は気づいている。国連は、盗んだ奴を血眼、とまではいかないかもしれないけど、辿っていった。


 さて、そんな時にもしも、情報をばらまいたら?」

 「危ないですね。あっさり見つかっちゃいます。」 真奈美さんは頷いた。

 「yes。だから、弐面は、見つかるのを恐れ、個人だけで、株を買った。

ただ、一人では危ないかもしれないから、信頼できる企業や買収が決まっていた企業と一緒に買った。

分かった?だから情報を撒かなかったのよ。」

 へーほー。

 おれは、茶をすする。

 「わかってないっぽいね....。」真奈美さんは、呆れていた。

 俺は、湯飲みを置いて、感想を述べる。理解できた範囲で。

 「まぁ、つまり、国連は、ヤバイから警戒して、言わなかった。出る杭が打たれるのを恐れた、ということですね?」

 「まぁ、そんなところね。」

 ところで、気になったのだが――――、

 「真奈美さん。よくそんなこと知ってますね。」

 と誰かが、デスクごしから言った。

 誰だか知らんが、先に言われた。と眉を潜める。


 言った主は、先輩の粒庵つぶあんだった。

 顔に黒子が多いのが特徴的である。

 この前こっそり数えたら(かなり失礼だが)

 20はあった。

 

 真奈美さんは、

 「あら。つぶ君も聞いてたの?せんべいいる?」

 とせんべいの袋を彼の前まで近づけたが、

 「いいです。昼前なんで。」と断った。

 俺はしまった。と俯いて、お腹をさすりながら、

 「食べすぎちゃった。

昼飯食えるかなぁ?」と悲劇的な顔で言うと、真奈美さん、

 「何いってんの?お菓子は別腹よ」

 とけろっとした顔で返す。

 ......それを言ったら何でもありになってしまうが、 「そうですね。お菓子は別バラでしたね。」

 と真奈美さんの方を向いて受けた。

 「ところで、何故国連やら何やらのことを知ってたんですか?びっくり情報満載なんですが。」

 粒庵は問う。

 真奈美さんは、最後のせんべいを取りだして、から答える。

 「んーとね。たしか誰かから聞いた話なのよ。

 誰だっけなぁ?」

 と真奈美さんは、首を捻る。とぼけている様子ではなく、本当に思い出せないようだった。

 粒庵さんは、

 「ふむ。まぁいいです。面白かったから。」


 納得したらしい。

 真奈美さんは、

 あっ待って、と頭の側面を触りながら言う。

 考えるポーズなのかな?真奈美さんの。

  「も~少しで思い出せそう何だけど、ウーーン。

誰だっけなぁ?」

 と 真面目に悩んでいた。

 

  先輩は、いやいやと手を振りながら、

 「そこまで考えることじゃあないですよ。」

 と止めるが、真奈美さんは、腕をくみながら彼の静止をきかず、ますます考え込んでしまった。よっぽど気になるのだろうか?その、教えてくれた人とやらは。

っとその瞬間、

 部屋全体にチャイムが鳴る。お馴染みのキンコンカンコンという音だ。

 イギリスのビッグベンの音だったか?

 この音は、ランチの時間を教えるチャイムである。 と先程まで、ウンウンと唸りながら考え込んでいた真奈美さんが突然、椅子から立ち上がり叫んだ。

 「考えても仕方ないわ!ご飯食べにいきましょ!」と荷物を持って、部屋の外に出ていった。

 部屋中の人がビックリした。思わずくしゃみをしてしまった人もいた。

 

 俺と先輩は、お互い顔を見合わせたあと、肩をすくめた。

 

 と入り口から、真奈美さんの顔が出て、俺達に

 「どうしたのー?ごはん食べにいかないのー?」

と大きな声で言う。

 「やれやれ行きますか。婦人マドモアゼルが呼んでいることだし。」

 と真奈美さんの方に行った。

 ――――全く、マイペースな人だな。

 俺は、にやっと笑いながら、二人のあとを追った。

マイペースな人ってよく見ません?

 ところで、私、B型です。

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