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悪魔と少女

作者: 朱鳥

悪魔は孤独だった。


悪魔は孤独であるがゆえに悪魔であった。


悪魔は寒かった。




少女は孤独だった。


少女は孤独であるがしかし少女であった。


少女は寂しかった。




あるとき悪魔と少女は出逢った。


月の光の冴えた()


悪魔はいつもの言葉を唱えた。


"願いを三つ叶えてやる"


少女は悪魔の言葉に答えた。


"願いは一つでいいわ"


悪魔はいつもと違う言葉を聴いた。


"お友達になってちょうだい"




悪魔と少女は友達になった。


少女は世界の物語を知った。


悪魔は人の温もりを知った。




もう悪魔は寒くなかった。


少女も寂しくなくなった。




そして、月日は流れていく。




いつしか少女は老婆になっていた。


悪魔は変わらず悪魔のままだった。


悪魔は言った。


"お前の魂を貰わねばならない"


老婆は微笑んだ。


"ずっと一緒にいられるわね"




いくほどなくして老婆は死んだ。




悪魔は老婆の魂を喰らおうとした。


老婆の魂は余りにも無垢で、


悪魔には喰らうことができなかった。


悪魔の"指"をすり抜けて、


老婆の魂は天高く昇っていってしまった。




悪魔は再び寒さを感じた。


悪魔は初めて気がついた。


その寒さが、


"寂しい"という感情であることに──。




悪魔は慟哭した。




悪魔の"目"から(くら)(しずく)が零れるたびに、


悪魔のからだは透きとおっていった。




やがて一筋の光となった悪魔は、


老婆の魂を追うように


空へと吸い込まれていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごく感動しました。 悪魔の感情が暖かいものに変わっていくのを、はっきりと書いてらっしゃるので、読みやすかったです。 [一言] 悪い点はないです。 これからも頑張っていいお話しを書いて下さ…
2014/04/17 21:46 退会済み
管理
[良い点] ほんのりと心があたたまる、切ない読後感がいいですね。 優しい気持ちになれました。 シンプルな文章はまるで詞のようです。 [一言] このまま挿絵をつければ絵本にできそうです。
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