破壊者のはなし
ルイン「壊そう。この世界を壊そう」
エンプティ「きみは、誰?」
ルイン「私は時の破壊者さ」
エンプティ「時の破壊者?」
ルイン「そうだ。命の無いこの世界を、壊しに来たぞ」
エンプティ「命がない?よく見てよ、僕がまだ生きているのに。それになんだって、こんなことをするんだい」
ルイン「ああ、エンプティ。お前を外に出すためさ」
エンプティ「僕はこの世界を捨てて外に出たくなどないよ。だのに、どうして」
ルイン「お前は空っぽだった。でも今は違う。お前はヒトに触れ、学び、感じ取った。言葉を紡ぎ、”ぼく”を”僕”と言うようになった。今や、お前は概念ではない。実体を持つべき、一人の人格だ」
エンプティ「わからない。僕にはそんなつもりは無いし、仮にそうだったら、なんだって言うんだ」
ルイン「空っぽじゃない少年など、この世界には要らない。実体を持ってしまったお前は、他所の世界に行くべきなんだ」
エンプティ「つまり?」
ルイン「実体ある者は世界を貪り尽くすだろう。つまり、お前は害悪なんだよ。この世界のね」
エンプティ「ほかの人たちはどうなる?ライアやバディや、トラッシュは?」
ルイン「そんな者は居ない」
エンプティ「そんなはずは」
ルイン「幻想だ」
エンプティ「……きみだって、女の子の姿をして、僕と話して、」
ルイン「それも、幻想だ」
エンプティ「この世界を守りたい、失いたくないんだよ。僕は、命を、」
ルイン「全て幻想なんだよ、エンプティ。この世界に命は無い。無いはずだったんだ。”彼女”が、そう願ったんだから」
エンプティ「ああ、お願い、壊さないで!」
ルイン「ほら、空が割れるぞ」