おはなしのはなし
お話をしましょう。
ボクは、モープ。綴じられた少年です。
ボクは、この世界の住人でありながら、この世界には居ないモノ。
だってボクは、概念そのものですから。
ここで紡がれた物語と、紡がれるはずだった物語の、全ての存在ですから。
だから、ボクの名前はここではモープ。もしくは、親しみを込めて、《物語》と呼んでください。
これは、とある少年のお話です。
少年といっても、彼は別段、男の子じゃあありませんよ。
ーーそれじゃあ女の子かって?とんでもない。
いいですか、この世界には男の子と女の子だけじゃないんですよ。
心と体の性別の不一致なら、アナタの世界にも在るでしょう。
でも、これはそういうお話じゃあありません。
もっともっと、全てを超越した次元のお話なのです。
どうして、「彼」はそんな超越した次元を得たのか?
それは彼が、未だ”持ち得ぬ存在”だからです。だって、彼もまた、概念なのですから。
それでもね、ここだけの話。「彼」は、実は特別なんです。
だって、ボクたち概念の中で「彼」だけがーー実態を持つ「権利」を与えられているのですから。
さて、白い世界の淵で眠っていたボクが、なぜ突然現れたのか。
この世界の終末に向けて、ボクは語らなくてはなりません。
それが、《物語》の概念たるボクに与えられた唯一の使命ですから。
ですから、この先ボクがアナタの前に何度も姿を現すこと、どうかお許しください。
「終わらぬ物語など無い」と、或る人は言いました。
ところが、《物語》たるボクに言わせれば、「終わる物語など無い」のです。
それでも、この物語は終わらせてみせます。ボクと、ボクの愛する「彼女」のために。
そして、おそらくーー「彼」がこの先愛するであろう、「彼女」のために。