11/22
5人の王子と黒い影のはなし
森の王子は聡明だ。
だけども彼は弱虫さ。
黒い影が森を焼き、大切なひとを連れ去った。
彼は憎悪に狂わされ、涙を流して人を喰う。
太陽の王子は慈悲深い。
だけども彼は無知すぎた。
黒い影が欺いて、大切なひとを連れ去った。
彼は荒野を彷徨って、今も亡き人探してる。
海の王子は屈強な。
だけども彼は嫉妬深い。
黒い影が侵入し、大切なひとを連れ去った。
彼は呪いを唱えては、すべての幸せ潰してく。
夜の王子は美しい。
だけども彼は薄幸さ。
黒い影が蝕んで、大切なひとを連れ去った。
彼は嘆き手足を伐って、冷たい海へ飛び込んだ。
残されたのは紫陽花の王子。
とても臆病で優しい王子。
赤色にもなろう、青色にもなるよと。
黒い影を楽しませた。
「友のように、師のように。
お前のことを受け入れよう。
だけども、お前がこの先に
大切なひとを連れ去るときは。
その時は、どうか。
僕を一緒に連れて行っておくれよ。」
とても安らいだ黒い影。
王子を連れ去り、知らぬ世界へ飛んでゆく。
影には、まだ、名前がない。