友軍と伯爵
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「う~ん。眺めは最高だね」
「アホなこと言ってないで下がってください!危険ですよ」
皆さんこんにちは東野 誠あらためデイット・ホルマンです。今日は、ここウィドニア高原に来ております。非常にいい景色が広がっていて、仕事で疲れた貴方の身も心も癒してくれること間違いなし!ぜひ、一度お越しください。
なんちゃって。いやぁ~思ったよりも素晴らしい景色で興奮してしまいました。そう思うと旅行に行ったのは両親がまだ生きていたころだから、もう4年ぐらい前だな。もっと行っておいてもよかったかもな…。
まぁ辛気くさい話はここらにしておこう。さっきも言ったとおり俺たちは、今回の戦闘が行われると予想されるウィドニア高原にきている訳だが、友軍がまだ到着していない。
まぁ、貴族連合軍なので頼りにはならない気がしていたが、まさか集結時間にも間に合わないとは……。
正直に言ってこの後がかなり心配される。
「中隊長。剣を置いてってますよ!」
慌ててさっきいた崖のところからボズが走ってくる。そう、剣だ。この世界が地球で言うところの近世ヨーロッパに似ていると考えているが、どうやら武器はそこまで進化していないらしい。戦場の中心は騎兵で戦場の戦い方だけなら中世ヨーロッパぽい。銃はマスケットすらない。大砲は一応あるみたいだが、基本は大きな街の防衛用らしい。ただ、おもしろいことにこの世界なんと魔法があるらしい。
俺も使えないかとボズにそれとなく聞いたら
「いやぁ~あれは一般人はつかえませんからねぇ~。魔力がある人間専用ですよ。」
なんでも、魔法が使える魔力持ちの人間は数千人に一人とか二人の確立でしか生まれないらしい。ただ、使える魔法にはかなり強力なものもあるらしく、一応軍には魔法部隊があるらしいただ、規模は数百人でここぞという戦場でしか投入はされないらしい。
そんなこんなで今回は魔法は関係してこない。ちょっと残念だな。まぁ、いい王都に帰れば間近で見ることができるだろう。それよりも早く貴族軍来ないかな。もし、今敵と出会ったらこっちが数の差で押しつぶされるぞ。
「中隊長!西のほうに砂埃があがってます。どうやら味方がきたようです」
「うん?おぉ!確かにあがってるな。」
「えぇ、さっき聞いたんですが、貴族軍の指揮官はモンテネグロ伯らしいですよ」
ようやく、友軍の到着か。おそいな、こりゃ本当に先が思いやられる。で、指揮官はモンテネグロ伯というらしいが、何者だ?ホルマンの記憶を漁ってと………なんじゃコリャ!?なんでも、このモンテネグロ伯、領主としては悪いほうではないらしい。ただ、軍事センスが皆無みたいだ。彼は元軍人らしいのだが、彼が指揮した部隊は軒並み4~5割の損害を出して全滅、もっともひどくて7割の損害を出したらしい。
こりゃアカン。まずいな、ただでさえ常備軍のある国の貴族軍は大概弱いのにこんなのが指揮官だとさらに弱くなるぞ。てか、なんでこんな奴が指揮官なんかやってんだ?
「しかし、モンテネグロ伯が指揮官か……こりゃ貴族軍は頼りにできないな」
「えぇ、モンテネグロ伯のセンスの無さは有名ですからね。なんでも、軍上層部も早々にやめさせたかったらしいですが、実家が東部の大貴族モンテネグロ家ですからね。あまり、強く言えなかったらしいですよ」
「それが、またしゃしゃり出てきたわけか」
「えぇ、軍からは爵位を継ぐということで退官しましたが、本人は未練があったようで」
「で、東部の高原が敵に侵攻されるには東部の大貴族が守らなくてどうするってことでまた出てきたって訳か」
「えぇ、そんなところでしょうね」
「それにしても、お前詳しいな」
「これでも、耳はいいほうで。まぁ、実際は実家が東部なんで詳しいだけですが」
「へぇ~実家が東部なの」
そんな会話をしていると貴族軍は野営地のすぐ側まで来ていた。そうすると、何人か従えた一目で偉いと分かる甲冑の人物がうちの野営地の門をくぐり、うちの司令官達と笑顔で何事か話している。
「あれが、モンテネグロ伯ですね。確か今年で40とかだったと思います」
「へぇ~あれがねぇ~」
まぁ、すぐにうちの司令官達と軍議でも開くんだろう。とりあえず、作戦が決まって俺達中級指揮官に声がかかるまで暇だから貴族軍のほうでも観察しますかね。……ほうほう弓兵と騎兵の混合か、中々バランスはいいな。意外とモンテネグロ伯もいけるんじゃないかな?でもまぁ油断せずにあんまり戦力としてカウントしないほうが良いな。
そんな感じでちょこちょこと貴族軍の様子を窺ったり他の友軍の様子を窺っていたらもう軍議は終わったようで、司令部から兵が伝令やってきて作戦の説明会を行うから中央の天幕に中隊長以上は集合せよということを伝えてきた。
中央の天幕は中々大きく迎撃部隊の総司令官や各指揮官、モンテネグロ伯を中心とする貴族軍の指揮官達が一同に会していた。そうすると総司令官が早速口を開いて説明を始めた。
「オッホン!まずは、皆に貴族連合軍の司令官である、モンテネグロ伯を紹介しよう。では、伯爵あいさつを」
「え~諸君ただいま紹介に預かったモンテネグロ伯だ。私から言いたいことはひとつルメナスの野蛮人どもから我らが神聖なる王国の大地を守りぬくことだ。以上」
天幕中から拍手と歓声が上がる。というか、伯爵前評判と違ってなんか随分カリスマに見えるんですが、もしかして伯爵実は優秀??
「では、紹介も終わったことだし早速作戦の説明に入る作戦参謀!」
「はっ!ここからは私が説明させていただきます。作戦はいたってシンプルです。我々は今野営地を作っているこの高台にて敵を待ち受けます。斥候の報告によると敵の数は不明ですが、間違いないくこの高原を目指しているとのこと、よって敵が到着しだい、我々は打って出ます」
なるほど確かに待ち受けるほうは高台のほうがいいのはそのとおりだ。高台からなら騎兵突撃の速度も上がり向かってくる敵に矢を浴びせやすい。しかし、敵が来ることが分かっているなら待ち伏せとか奇襲とか他にも方法はあるのでは?聞いてみるか
「質問があります」
「ん?貴官の官姓名を言ってから質問するように」
「はっ!失礼しました。自分は第37歩兵中隊長デイット・ホルマン中尉であります。その~敵が来ることが分かっているなら奇襲なり待ち伏せなりほかにも様々な方法が取れるのでは?」
「それはだな……」
「いや、参謀殿ここは私から説明しよう」
「はっ?はっ!」
「ホルマン中尉と言ったね、確かに君の言うことにも一理ある。だが、敵は正面から打ち取ってこその勝利なのだよ。そのような姑息な手段を用いて勝っても何の意味も無いのだよ。わかったかね?わざわざ正面で待つ理由が」
「……はぁ?了解しました」
だめだ、完全にダメだ。一瞬でも伯爵が有能かもしれないと思った自分がバカだった。これは完全にダメな人だ。てか、そんな作戦にうちの司令部は同意したのかよ……。総司令と他の司令それに参謀達もうなずいてやがる。諦めた表情をしているのはほんの数人しかいねぇ。だめだ、貴族軍だけが問題かと思ったらここの正規軍にも問題があったか…。こりゃ、だいぶきつくなるかもしれないな……。
軍隊は3割の損害で壊滅、5割の損害で全滅という風に扱われます。この物語でもそれに準拠しています。