記憶と理解
「中隊長殿、中隊長起きてください。もう朝ですよ」
誰かの声が聞こえる。おかしいなうちには俺意外誰もいないはずなんだが、それとも、これは夢かな?まだ、起きるには早いだろう、もう一眠りしよう。
だが、そんな考えは次の瞬間近くでなったラッパの音によって強制的にさえぎられてしまった。
「うわっ!!なんだ!?」
「ようやくお起きになりましたか中隊長」
「へっ……?」
「へっ?ではありませんよ。現時刻は0700《マルナナマルマル》です。後、2時間ほどで移動開始時間ですよ」
俺の頭はおかしくなったのだろうか、まず、目の前にまったく知らない40代と思わしきハゲというかスキンヘッドの強面のおじさんがいる。しかも、ここはどう考えても俺の部屋じゃない、テント?天幕?そんなものの中だ。
とりあえず、現状を把握するのが先決だな。
「ここはどこですか?そして、あなたは誰ですか?」
「は?……お戯れはいい加減にしてください!ここは、ウェドニア高原ですよ。それに私は、あ・な・たの部下でこの第37歩兵中隊の先任曹長のボズです。もうすぐ戦闘が始まるかもしれないのです。そのような軽い気持ちでは困ります」
「えっ…?いや、ごめんなさい」
「分かればいいのです。さぁ、早く起きてお着替えになってください」
そうせかされ近くにかけてあった軍服?のようなものを着る。質問してみたはいいが、まったく何のことか分からない。とりあえず、今は、このボズとかいうスキンヘッドの言うことに従っておこう。
しかし、ウェドニア高原なんて日本には存在しないよな欧州系の名前だし、このボズも見た目は完全にアングロ・サクソンという感じだ。それに、俺のことをホルマンと呼んでいた。最初は違う人かと思ったが、この感じからすると俺で間違えないだろう。
「お着替えは終わりましたか?」
「うん?あぁ、終わりました」
「先程から敬語ですが、どうなさったのですか?」
「えっ?いや、へんだったかな?」
「そりゃ、士官の中隊長が下士官に敬語はおかしいですよ」
「あぁ、たしかにそうだね」
とりあえず、話をあわせておくことにする。しかし、本当に何がどうなっているのか分からない。確か昨日いや今日の朝寝るときにまぶたを閉じたとき淡い光のようなものが見えて意識が途絶えたんだ。それから……
「グワァッ!アァァアアァアアァアァアァア!」
「ど、どうされたんですか!中隊長!中隊長大丈夫ですか!?」
頭が割れるように痛い。だが、それと同時自分が見たこと無いような知識と記憶が頭の中になだれ込んでくる。やばい、これは本格的にヤバイ。頭が割れる……
東野 誠いやホルマン中隊長と呼ばれる男は、頭を抱える状態で意識を失い地面に倒れた。だが、これが、一つの伝説の始まりであった。
う…うぅ……。なんだ、ここは、真っ白な空間にたくさんの光が浮いている。さっきから、訳の分からないことの連続で疲れてきた。だが、このままこうして今の状態(なぜか知らないが、この空間に浮いている。)では、埒が明かない。とりあえず、この光でも調べてみるか。
なんじゃこりゃ?光に近づくとホルマンという男についての詳しい説明が出てきたり、よく分からない国や大陸についての説明が出てきたりする。そうして光を見ていくうちに、俺についてのことが書いてあるものを見つけた。
『 東野 誠…現職フリーター(ニート)
第1321世界の日本出身。
現在は第234世界のイズベニア王国の
陸軍中尉デイット・ホルマン。 』
は?これは俺が、このホルマンとかいう男になったてことか?マジかよ。
ハハハハハハハハハハッ。いやーじょーだんきついわ。転生?そんなどこぞのな〇うみたいな小説の話があるはずないじゃないか。そう思うとどこからともなく鏡が現れて俺の今の姿を映し出した。
「完全に違う俺はこんな西洋な顔の造詣じゃない」
ということは、本当に転生したってことかよ。冗談じゃない!俺は、まだやりたかったことがあるんだよ。富士総合火力演習を生で見るって言うささいなようで、俺にとっては大事なことがあるんだよ。それが転生?ふざけんな!絶対生きて元の世界に帰ってやるからな!
それから東野……ホルマンは他にも浮いている光から情報を手に入れていった。
「まぁ、こんなところか。ざっとこんな感じで大方あってるだろう。」
俺の名前は、これからデイット・ホルマンになるわけだな。で、このホルマンはこのイズベニア王国とやらの軍人らしく中尉らしい。歳は、19歳だから、俺と変わらずだな。このイズベニア王国とやらは今、隣国のルナメス連合首長国と戦争中にあるらしい。原因は、今俺たちがいるらしいウィドニア高原をめぐる領土争いらしい。この世界は、基本的に地球の中世ヨーロッパや近世に似ているようだが、一部思想や技術は地球の同年代のものより進んでいるようだ。
でだが、これからの俺の行動方針は、このホルマン中尉には、申し訳ないが、俺が中尉のように振る舞いなんとかして地球に帰る手段を探すしかないな。まぁ、幸いなことに中尉の記憶は俺にも受け継がれているようだから、それとなく振舞えばごまかせるのではないかと思う。
ただ、不安なのはここ2年間本当にバイト以外で体を動かしてこなかったから実戦とかになったら本当にマズイ。こちらの世界の武器についてまで光は情報をくれなかったが、地球の中世、近世に当てはめて考えれば、剣、槍、弓、よくてマスケット銃や初期型の大砲だ。それだと、まったくといっていいほど自信が無い。
だが、転生してしまったのが軍人なのだからやるしかないのだろう。覚悟はもう決めた。後は、自分の心に勝てばいいだけだ。
うん?どうやらボズがよんでいるらしい。よし、さっさと戻って地球への帰還の手段を見つけよう!