中
ミヤはそれを聞くとほっとした表情になり
「悪口はもう言わないからさ、ナオにあの事黙っててくれない?お願い、リンっ」
リンはおしに弱い子でしたし、教えた事で二人の関係がギクシャクしてしまうのも嫌だったので
「うん。ナオには黙ってるね」
そう約束しました。
その日の放課後……。
リンは自分の所属する吹奏楽部の練習が終わったので荷物を取りに教室に行きました。すると教室内でナオとミヤが話していることに気がつきました。
始めは普通に教室に入ろうかとも思いましたが、二人の会話が聞こえ始めたので、いけないとは思いながらもそっと壁に寄りかかり会話の内容を伺いました。
「あのさ、リンからきいたんだけど悪口言ってるって本当?」
どうやらあの事についての会話のようです。壁に寄っ掛かっていて二人の表情は伺えませんでしたが二人の表情はきっと険しいものでしょう。
「リン、いったんだ…。うん。まぁ、本当だよ。部活の中で悪口言ってる人がいるって事なら」
リンは今の会話を聞いて愕然としました。ミヤの言い方だと、リンが勝手にミヤが悪口言われていると伝えたように聞こえてしまいます。リンは誤解を解こうと教室のドアに手をかけましたが……
「悪口はもう言わないからさ、ナオにあの事黙っててくれない?お願い、リンっ」
「うん。ナオには黙ってるね」
あの約束を思い出したリンは、かけていた手を戻すとその場から走り去りました。あの時の事をナオに話せばさっきの誤解は容易にとけます。でもそうしたらミヤとの約束を破る事になる……だからリンはそれを解くことができませんでした。