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「あたし、決めたんだ」
風が吹き抜ける丘の上。ここから臨む景色は、以前は花に溢れて美しいものだった。
アキハとコクランは今、フィオーレ城のふもと、ジラソルト遺跡群を越えた先にある丘に立っていた。
「……何を?」
アキハは槍を担いだまま、樹の幹にもたれて座っている。コクランはというと、やはり幹にもたれていたが立っていた。
フィオーレがソルティーナに敗北した後、彼らは奴隷のように働かされるようになった。脱走する者は捕らえられ、処刑される。しかし、そんな中でも脱走した者は確かにいた。――アキハとコクランは、そんな人々のうちに入っている。
当然目は付けられているし、いつ見つかって殺されるかもわからない。しかし、奴隷として働いているといつまでも変えられない。
「フィオーレは、絶対独立させてみせる。誇りを守る為に、ね」
アキハは笑った。
確かに復讐の為に使うなとは言ったけれども……、とコクランは苦笑いを浮かべる。
「コクランも協力してくれるでしょ?」
「はぁっ!?」
「え、何よ。じゃあ何のために逃げてきたのよー?」
槍を突き出され、コクランはたじろぐ。
「ああもう、そんな物騒なもん仕舞え!」
「君だって鎌持ってるじゃん」
数秒の沈黙。その後、二人は同時に吹き出して笑い出す。
「当たり前だろうが」
――でもまあ、俺が守るのはフィオーレの誇りだけじゃ駄目だな。
「となると……仲間が必要だよねえ」
「どうするんだ?」
「どうしよっか?」
「おい……」
けらけらと笑う。
――こいつも守らないと、あの二人にどんな目に合わされるかわからないからな……。
風が吹き抜ける。
新たな使命を抱えた二人は、下克上を始めるのだ。