表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある騎士団員のとある過去話  作者: 柘榴石
星屑【ミル】
16/21

 まるで嵐が過ぎ去った後のように、フィオーレは元の美しい姿をとどめてはいなかった。

 ミルは足をひきずりながら、ゆっくりと城から離れていく。

 もうじき、城にはソルティーナの指揮官が入る。その前に、出来るだけ離れなければならない。

 ……未だに信じられない。

 つい数日前まで平和だった日々が、一瞬にしてぶち壊された。

 寄り添う場所も失われ、孤独となったミル。

「……どうしよう、かなあ」

 空を見上げれば、燦然と星が輝いている。

 今日は新月らしい。月の明かりがない為に、星がいつもより多く見える。街の明かりがない、というのも理由のひとつなのだろうか。

 いつだっただろうか。ステラと一緒に、丘で星空を眺めたことがある。彼は星について詳しかったので、知識を披露される度、ミルの知識も増えていっていた。

 指先を空へと伸ばし、星を繋いで星座をつくる。目の奥がじわりと熱くなった。

 時間は止まらない。記憶も風化していく。

 ステラのことも、きっと忘れてしまう。


「……絶対、忘れないからな」


 私は。俺は。

 俺は、決して忘れない。


 ミルの口調は、ステラのそれへと変わっていた。彼女なりの結論である。

 忘れてしまわぬように、彼女は、自ら彼の言葉を紡ぐようになった。



 空に星が輝いている。ミルは視線を前に向けて、再び歩き出した。

 赤く染まった薔薇が揺れていた。

ミルの過去話はこれにて終了。

次は奴等だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ