幼稚園で出来た友達諸君
メーン、ドー、ちゃーしゅーめーん。最後のは空耳だとして今は剣道の道場だ。
剣道の防具って高いんだね、びっくりしたよおじさん、10万以上するとは思わなかった。これはもう全国大会優勝する位しないと駄目だね、親父のお小遣い的に浮かばれない。
「おお、これは月光さん。やはり小さい頃からこういう武道に――――――――――」
「息子がどうしてもって――――――――――」
「――――――――――それは見所が」
「いつまで続くか――――――――――」
世間話は良いから早くやらせろよ、あの1個上と思う年長組の野郎がガン付けてきやがるんだよ、潰させろ、あの野郎潰させろ。
えーと、防具の付け方は覚えてきたからな、問題ない。ってなに? 準備運動から? そりゃそうだなすまんすまん。え? 次は素振り? まぁ、しょうがない初めてだしな。いいだろう100回だろうが1000回だろうがドンとこいや!
――――――――――おうふ
すんません100回で勘弁してください。、まじきっつい、ほんときっつい、舐めてたまじで。
あん? なんだあの野郎笑いやがって、くそがっ、4年しか生きてないがきんちょに舐められてたまるかおらあああああ。
「すごいですね輝君、最初100回も出来ない子が多いのに、これは才能がありますよ」
「いや、その、そうでしょうか……?」
おりぃいいやあぁぁあ、うるるううぉぉおりゃああぁぁ!
「気合いも十分、これは延びますよ!」
「あの、その、そうでしょうか……?」
うぉぉぉんどやああああぁぁ、せりゅうぁぁあああ!
も、死ぬ、駄目……。
あーもー、これ絶対明日筋肉痛だよ、3歳にして筋肉痛だよ、やってらんねぇよ。
「輝楽しかった?」
まー始めたばっかりだから何とも。けど害虫駆除に必要、じゃなくて精神の鍛錬のために必要だと思ってるからね。
「それお父さんから聞いたのかな?」
ん? いや、うん、あ、そうだよ! 親父の受け売り!
「害虫駆除って言葉もかな?」
え、うーんと、その、うん。
「ふふふ、お父さんと今日もお話だね」
すまん親父許してくれ。
ベットの上で頑張るか、暴力に耐えるかは任せるよ。もう一人くらいなら兄弟増えても良いよ親父。
まぁ、そんな感じで空手の方も順調順調。月、水、金が剣道で、火、木が空手だ。
正直肉体的にはなんもかわっとらんので、毎朝のランニングとかしたい所だけど、まだ3歳だから駄目だそうだ。仕方がない、もう少しの辛抱だ。
そうだな、しょうがないから幼稚園の出来事でも話そうか。
まずは木田 正臣、同い年の割にはがっしりした体型で悪く言えばデブ、ガキ大将ってやつだ。
初っぱなから俺に突っかかってきやがったから人生の儚さを思い知らせてやった。
次は香坂 哲平、物静かな奴だと思ったけどわりかし面白い、お調子者で強い物に巻かれるタイプ、でもここぞというときはしっかりする、見たいに育てたい、あれ、ちがう?
んで、斉藤 碧、由美と意気投合した元気いっぱいの女の子、しかし碧も由美も将来美人になるだろうな、由美はまぁ知ってるけど。大体いつもこの5人でつるんでる。
だが言いたい、俺は声を高くして言いたい、茜が一番だ!
俺はもう茜のために生きるよ、まじ茜以上の女とかいねーし、え? ちがうよ妹として愛してるんだよ、無償の愛だよ。なんか訳の分からんこと言ってるな? 妹と結婚できるわけ無いだろ? 頭大丈夫か? そんなの常識だろ。
でも妹は嫁にやらん、俺が養う。見てろ、にーちゃんがんばっちゃう、まじで頑張っちゃう。
英語とかもう余裕だし、今フランス語勉強中。親父に言えばすぐ用意してくれるからな、母さんは駄目だ、なんか常識がどうとか、天才児よ! って騒ぐし。マスコミとか嫌だから程々でいいんだよ対外的には。
あ、そうそう先生は大木 真奈美先生。Dカップって言ってたけどあれはCだな。
「ちょっと! 輝ちゃん何言ってるの!」
なんだCカップ、文句あるならハインリッヒの法則について説明してからにしろ。
「え、ハリン、リヒ?」
ハインリッヒだねぇちゃん。
「え、なにそれ、ハインリッヒ? まって輝ちゃん、違うよ知ってるよ、知ってるからまって!」
携帯で検索禁止だよ先生。
「う、ううう……」
ちょ、おい! 先生泣くなよ! まじごめんって先生俺が悪かったって!
「先生……、入学当初から問題起こした生徒も止められないし……」
あー、女の子の髪ひっぱってた奴ね。女に手ぇ挙げて、てめぇは明日の朝日が美しく見えるのか、てめぇのハートはたぎらねぇのか、女ってぇもんは守るべきもんだ。騎士という二文字、それを知らんのか! って熱く語ったら兄貴って呼ばれるようになった件だな。ちなみに俺は妹限定だ。
「子供に怪我させて親御さんから文句言われるし……」
あー、転んで怪我した奴ね。てめぇらは子供を温室育てにして満足か、それはてめぇらが満足してるだけだろうが! あいつを見ろ! 怪我をした後すぐに楽しく遊んでるあいつを見ろ! おまえ等はその笑顔を否定してるんだよ、潰してるんだよ、それがわかんねぇのかよ! って熱く語ったら泣いてた親御さんね、覚えてるよ。
「歌を歌ってくれないすみれ組のみんな、いっつも騒いでどうしようか困ったり……」
最初はそうだったなぁ。目標はねぇのか、お前等! お前等は明日に何を見ている、俺は先生の笑顔を見ている。お前等はどうだ、どうなんだ! 笑い顔が見たくねぇのか、俺達が笑わせてやるんだ、この不景気に喘ぐ日本を俺達が笑わせてやるんだ! 俺達に出来ない事なんて無い、無限の可能性を秘めているんだぜ俺達は! ってしゃべってたら気づいた時にはスミレ組じゃなくて、年少組全員で大合唱してた時の話ね、あんときぼろ泣きだったよね先生。感動と言うより混乱とむしろ恐怖で。
「うん、なんか思い出したら輝君先生やればいいんじゃない……」
へいへいへい、俺まだ3歳だぜ、もうちょっとで4歳だけどよ、そんな子供にまかせちゃーあかんよ。あかんあかん。まだいける真奈美まだいける! 大丈夫俺が付いている!
「あー、なんか園長先生が付いているより安心感があるのは何でだろう」
とりあえず今日会議なんだろ? 会議資料つくっとけよ。来月の発表会の音作りとかいろいろ残ってんだろ?
「あ、うん、でもお歌の授業が」
あー、いいっていいって、俺に任せとけって。なんならアメイジンググレイスとか歌わせとくから、英語バージョンで。
「いや、それすごいよね。3歳児それ歌ったらすごいよね、でもなんかやりそうだからやめて、わりと切実にやめて」
なんだしょうがないな、まぁカエルの歌くらいにしとくか。
「うん、それでお願い……」
りょーかい。まったく、世話の焼ける先生だぜ。