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人に向かって投げてはいけません

 へいへいへい、二足歩行に進化した輝だ、宜しくな。ああん? 何だこの野郎ぺちぺち動きやがって可愛いじゃねぇか。前の時は居なかったが両親に思うところがあったんだろうか、まぁ良いさ。


 そんなこんなで目の前には、産まれたばかりの柴犬の子供が居た。


 名前はドッペルゲンガーシュトルツハイムアーノルドゲシュペリオンだ。ごめん嘘、ポッキーです。名付け親は父親だ、センスが無いとか言っちゃいけない、俺が一番思っている。

 

 その今日の出来事で一番の座を連続で取り続けているポッキーは、ごろごろ回りながら絨毯の上で毛繕いをしている、可愛すぎる、こいつ可愛すぎる。


「だっ」

 べしっとポッキーの頭が叩かれる。ポッキィィィイイイ! 何してくれんのあんた! ちょっとあんた家のポッキーに何してくれんの!


 キャンと泣くのが面白いのかペシペシと叩くその悪魔は、今日もお邪魔されてます橘 由美である。

 この極悪非道からポッキーを守らなければならない、そう今日は俺はポッキーの騎士、ナイト輝である。


 ぎゅっとポッキーを抱えて由美から離れる、二足歩行舐めんなよ、つーか重い。子犬と思って油断した、重てぇ。筋肉がなさ過ぎるよ俺の腕、1歳と少しだから仕方が無いと言うのか、絶望した、俺の腕に絶望した。


 ずりずりとポッキーの後ろ足を引きずりながら悪魔ゆみから離脱する。しかし、甘かった、俺は甘かった、蜂蜜に砂糖を振り掛けてシロップと混ぜるくらい甘かった。

 飛来するは積み木、子供にも使えるように柔らかい素材で作ってある奴だ。そいつが弾丸の如く俺に強襲した。


 くっ、どこのスナイパーだ、この俺の後頭部を狙うとは。

 慌てて後ろを見ると半泣きで積み木を投げてくる由美が目に映る。ちょっとまて、俺が悪いのか、俺が悪役なのか。


「こら、駄目でしょあきちゃん、由美ちゃんと仲良くしないと」

 騒ぎを聞きつけたのかキッチンで何かを作っていた母さんが駆けつけてきて俺を叱る。 


 ええええええ、オウ、マイ、ゴッツ……。神は俺を見放した、我が同胞を守ることはここまで苦難だというのか、すまないポッキー俺が力不足で……。

 腕の中に納まるつぶらな瞳が俺に迫る。力不足なおれを恨んでくれ、すまない、すまないポッキー。


「ほら、ポッキーを離して。ポッキーが辛そうにしてるでしょ」

 まじかよ、むしろ俺が虐めてたのかよ、酷い、これは酷い真実だ。もうだめだ、俺はもう立ち直れない、親父の書室に行って本でも読んでこよう。俺は引きこもるんだ、引き止めないでくれ、俺は自分の世界に閉じこもるんだから。


 ちきしょー、こうなったら2歳になるまでに英語マスターしてやるよ。幼児の頭の吸収度舐めんなよ、スポンジじゃねぇよマイクロファイバー吸水タオル並みだよ。


「輝、何処行くの? 由美ちゃんの相手してあげて」

 へい、母さん。1歳半の子供にそんな事頼むなよ、そりゃ表面上落ち着いているように見えるかもしれないが、一応1歳っぽい感じで生活してるんだぜ? 想像上だけど。

 ま、しかたがないな。泣かしたままじゃあれだし。紳士じゃねぇよな。しかたがねぇ、っておい! また積み木投げてくるのかよ、1歳のくせに結構飛ぶじゃねぇか。いてぇ、いてぇっての、まだ体ぷよぷよなんだよ、ガッキーンって防御できないんだよ。メコッて凹むんだよ、勘弁してくれよ本当に。


 とりあえず背中を向けて暫く我慢してたら収まった。生憎と積み木はやわらかい素材だったので名誉の勲章は無いがまさにDVだ、家庭内暴力だこれは。

 あの野郎ゆみがまともな思考を持つ頃になったら文句を言ってやる、絶対忘れんぞ。


「はーい、ミルクの時間よ」

 おおう、飯の時間か。まだ歯が無いからな、離乳食はまだか。ミルクも飽きたんだよな、ゲップ出るし。母乳を飲む時複雑な顔に気付いた母さんがミルクに変えたんだ。別にまずかったわけじゃねぇよ? でもわかるだろ? 母さんがちょっと悲しそうな顔をしてたけどそこは勘弁してくれ、俺の為に。


 あー、しかしラーメンくいてぇ。コテコテのとんこつラーメンがくいてぇ。

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