よう、久しぶり幼馴染
「―――――月光さんの所のお子さんも―――――」
「そんな由美ちゃんだって―――――」
「―――――そういえばあれは?―――――」
「まだかしら――――――――――」
親同士が歓談している。そして俺は母さんの腕の中じゃなくて親父の腕の中に居る。悪いな母さん、親父の方が良いんだ割と切実に、俺の脳みそ保護的な問題で。
目の前にはベビーベットに寝かされてる由美が見える。由美なんか猿だな、いや悪い嘘、なんかこう、人だね。
ぼーっと見やがって、お前もその内人生の苦悩を知る事になるんだぞ、小学校の算数とかもう俺が教えちゃう立場だからな、今の内に上下関係を示しておく必要があるな。
いや、だがしかしまずは謝罪だ、蝉の件を謝罪しなければならん。それは男として最低限の礼儀、いや筋ってぇもんだ。今はちょっと土下座はできねぇ、寝返りもできねぇ、つーわけで瞬きするから感じろ、俺の思いを感じろ、すまねぇ由美、俺が悪かった瞬き百連発。
「お、輝どうした? 目にごみが入ったか?」
ちげぇよ! 謝罪の意を示してたんだよ、俺のほどばしる思いを目に集めてたんだよ。親父なら分かるだろ! 分かってくれるだろ!
「おーい、早苗、輝の目にゴミが入ったみたいなんだ。ああ、そうだ橘なんか無いか?」
だからちげぇって! 謝罪だって! 蝉の謝罪なんだよ分かってくれよ。ちなみに早苗は母さんの名前だ。親父は毅だ。月光 毅ってどこの戦隊物のヒーローだよ、レッドか? レッドなのか?
「どれどれ、あれ? 特に涙も出てないみたいだし、大丈夫そうよ?」
「あれ、本当だ。おかしいな」
「まぶしかったとかじゃないの?」
「うーん、かもしれんな」
ちげぇよ(以下略
ふぅ、まぁしかたが無い。俺は今だあーうー星人Lv2くらいだ。日本語をしゃべれるまでもう少し時間がかかる、この場は我慢するしかないか。
「それにしても輝ちゃんは大人しいわね。うちの由美は何かあるたび直ぐ泣くのよ」
「やっぱりそうよね? 全然泣かないから本とか調べて、先生にも連絡したんだけど」
「でもそういう子もいるらしいからね。ただダウン症とか病気の可能性もあるから気をつけて」
「うん、注意してみておくわ」
あー、じゃあちょっと泣いた方が良いのか? 泣かなけりゃいかんのか? 泣くことを強要されるってどうよ、それで母さんの悩みが減るなら良いけども。しかし、いざ泣けといわれても困るな、悲しいこと、悲しいこと……、ううむ。
キャバクラで会計が10万超えた時? いや、大学の時振られたあの思いでも中々に捨てがたいな、財布落としたのも結構来たんだよなぁ。
「輝ちゃんしかめっ面になってるわよ?」
「そうなのよー、良くこんな顔してるの、泣くのを我慢してるのかしら?」
あんたの悩みを解決しようと考えているんだよ!
とりあえずその後当たり障りの無い話をした後家に戻った。