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やる以上はブラザーだろうよ!

 空は満点の青空、透き通るほど美しい青に申し訳程度に白い雲が流れている。

 

 気温は30度オーバー、じわじわと肌に突き刺さる熱線、そして熱気がグラウンドを揺らめかせ、蜃気楼のようにぼんやりとした景色を見せている。


 スポーツ、それは世界共通のゲーム。行っているのは野球。


 野球とはボールとバットを使って行うゲーム、スポーツ、球技の一つである。

 発祥地はアメリカ合衆国、今現在は日本はもちろん、韓国、台湾そしてキューバなどで盛んに行われている。


 二つのチームが交互に攻撃と守備を入れ替えて勝敗を競う戦争であり、そこに情熱と、熱情と、気合と、根性と、熱血と。


 そしてマネージャー(美人)が混在するカオスな空間である。


 だれもが甲子園を目指し、そして誰もが南ちゃんを夢見る世界。双子のファンタジー、双子のビクトリー。

 それが野球である。


 白い白球を追い求め、暑いグラウンドの上で汗をかく。それこそが青春、それこそが漢、それこそがファイヤーソウルである。

 そんな野球を河川敷のグラウンドで行っているわけだが、グラウンドにいるのは小学生、いわゆるリトルリーグである。


 9回裏、カウントは1-0、ツーアウトで最後の打者。

 ぶん、とバットを振るいバッターボックスに立つのは歴戦の戦士ゴルバス。


 小学生を押しやり代打としてそこに立つ。


 対面するは一人のピッチャー、最強、無敵、唯我独尊。月光 ジャスティス 輝。世界最強の5歳児である。


大佐カーネル、手加減はしませんよ」

 フ、当然だ。漢と漢の勝負、そこに手加減も、油断も、妥協も、そしてこの後の事を考えることなど無い!

 

 そう、彼はここまで全ての小学生を3者3振で討ち取っていた。その球速は150km、とてもではないが幼稚園児に出せる速度ではない。


 だがきっと彼ならこう言うだろう。漢だから、それ以外に理由があんのかぃ? と。

 そうだ、漢。漢は全てを理解する、すべてを網羅する、全てを現実へと現すビクトリーパワー。


 ギリリ、と構えている姿が見える。立ち上がる妖炎が見える。あれは漢炎、まさに漢の勝負。

 ゴクリと唾を飲む音がベンチから聞こえてくるような錯覚に陥る。


 シン、と静まるグラウンド。


 ゴルバスの体がゆっくりと戦闘体制バッティングフォームに変わっていく。

 オープンスタンスに構えた彼の懐にはRugerMarkⅢが姿を覗かせている。


 なかなかにクラシカルな趣味じゃねぇか軍曹、だが、俺は立ちどまらねぇ、俺の弾、俺のソウルファイヤーを受けてみな!


 振りかぶる腕、そして放たれるソウルファイヤー、時速150kmを超えるその弾は空気を切り裂き、ゴルバスへと迫る。


 ストライクッ!


 バットを振りもしないでボールだけを見つめている歴戦の戦士、歴戦の漢、英雄漢、ゴルバス。


 誰もが諦めの顔をする。やはり駄目だったか、彼でも駄目だったのか。


 ツーストライク!


 絶望に染まるベンチ、いや、予想していた事だ、有る程度予想していた事ではあったのだ。

 あの弾は誰にも打てない、そう、あの男、ジャスティス 輝のソウルファイヤーに迫れるほどのビクトリーパワーを持つ者はいない。そう、そう思っていた。


 しかし、しかしだ、彼は伊達ではなかった、歴戦の戦士、英雄の名は伊達ではなかった。


「SIG SG550の弾速より遅いっ!」

 2球、そう2球で彼はそれを見極めていた。

 弾速、当たり前だと誰もが言うだろうが、しかし本人は大真面目。そう、彼にとっては弾より早いか、遅いか、それが全て。

 世界にスイカ派とメロン派がいるように、きのこの山派とたけのこの里派がいるように、巨乳派と微乳派がいるように、彼は遅いか、早いかで判断したのだ。


 振りぬかれるバット、ちなみにバットは木製バット。ぎゅっと握られたグリップ、音速? で振りぬかれるヘッド。

 まさに魂を篭めた白い弾をそいつは、そのバットは、その懐で、ボディーで、そのウッドボディー、ウッドソウルで受け止めた。


 きっとバットとボールは語ったはずだ。


 熱い、熱いぜボール! だが、だが俺のソウルはどうだい! 俺のソウルを感じれるかい! 君がぐにゃりと俺のボディーに熱烈なハグをかましてくれているこの瞬間! この瞬間にこそ俺のソウルを感じたかい!


 あぁ、感じたぜバット! 俺の熱烈なハグを受け止めてくれたてめぇの熱いソウルファイヤー、芯まで、俺の芯まで響いたぜ! と。


 キン、と言う音と同時に、空高く舞い上がるボール。バットが、ボォォォォルウゥゥゥゥゥお前の事はわすれねぇぇぇえ! と叫んでいるのは置いておいて、まさにホームランコース、一気に歓声が沸きあがる。これで、同点、そう同点なのだ。


 しかし、ジャスティス 輝は伊達じゃねぇ。舞い上がるボールをニヤリと見たかと思ったら神速の抜き打ちで背からAMTハードボーラーを取り出し、宙を舞うボールに狙いを定める。

 

 AMTハードボーラー、そうあのアーノルド・○ュワルツェネガー、ター○ネーターでも使われていた恐るべき銃だ。

 当然世間的な事情で本物ではない。漢だから、で本物を仕入れれることも出来たが妹の情操教育に重点をおき、改造ガスガンで我慢したのだ。


 そいつを抜き出し、弾に向けて射撃。乾いた音がグラウンドに響く。

 ゴルバスによって鍛えられたその腕前は伊達じゃない、それに加えてソウルファイヤーたる漢のジャスティスが煌いている。

 外れるはずが無い、そう、外れるはずが無いのだ。


 連続で空中を飛ぶ弾を直撃する鉛製のBB弾、一気に速度を落とし、そして彼の元へと落ちてくる。


 ポン、と収まるグローブキャッチ。ここに勝負は決まった、そう、決まったのだ。

 

 そのグローブに収まった白いハニーを見つめながら呟くジャスティス。


 軍曹、今回は俺に花を持たせてくれたようだな


大佐カーネル、漢の勝負です、その様な言葉は無粋でしょう」

 そう、軍曹は懐のRugerMarkⅢを抜かなかった、それは彼なりの信条、彼の漢としてのソウルジャスティス。


 ゲェェェムセェェェェット! もうやってられるかぼけぇぇ!


 どこぞの審判と監督が帽子をグラウンドに叩き付けたのはきっと気のせいだろう。

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