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人生やり直し出来るなんて始めて知ったよ

 世界は広い、いろいろな人が居ればいろいろな考えを持つ人が居る。だからきっと俺みたいな人間が一人ぐらい居てもおかしくはない。

 60億人いるのだ、一人所か、もしかしたら二人や三人くらい居るかもしれない。きっと、たぶん、おそらく、メイビー。


「あら、またこの子しかめっ面してるわ。本当に泣かない子ねぇ」

 泣かないわけじゃない、人生の深みを体感しているのだよ母よ。

 久しぶり母さん、昨日ぶり母さん、なんつーか若いですね母さん。


 人生色々とは言うが、20代の母親に会えるとは思いませんでした。まじびっくりです、というか家の中も新しいし。確か建てたばっかりだろうから新築だろう、あ、ちょっと持ち上げるの勘弁して、もうちょっと頭をこうしっかり抑えてくれ母さん、危ない、危ないよ母さん。


 はぁ、もうため息の一つでも付きたくなる。夢か? これは夢か? いやきっと夢だ。現実逃避のつもりは無いんだが、完全に現実逃避ですねわかります。現実逃避したい気分なんだ許してくれ。


 もうなんかあーとかうーしかしゃべれないし。なんなんだよもう、あーうー星人かよこの野郎。つーか母さん結構美人だったんだな知らなかったよ。と、言うかもうどうすんだよこの状況。


 ああ、なに? 何でこんな状況になっているかって? 死んだんだよ。

 え? 分からない? なんか企業の戦士として頑張っている所で線路に落っこちてスプラッタだよ、多分だけど。

 

 最後の記憶は迫り来るディーゼル君のイカした青色の鉄仮面さ。あの青い顔に俺の血液を塗りたくって絶妙なカラーリングになったかは不明だが、おそらく死後有名になるような芸術作品には成らなかっただろう。残念この上無い。


 そんなわけで電車をキャンパスとして作り上げた芸術作品の後に、気が付いたら赤ん坊って訳さ、すごいね人生、捨てたもんじゃねぇよ。


 ちなみに憑依じゃねぇ、逆行さ、だって母さんだもん、俺の母さん、間違いねぇ。名前も一緒だし、月光がっこう あきらです。月光でがっこうって読むんだぜ、こんな苗字持ってる奴俺くらいだよ、どこの小説家のペンネームだよって話だよ。


 そういや小学校の頃この名前で虐められたんだよなぁ、嫌な思い出だ、今となっては良い思い出か? つーかまたやり直しなの? よっしゃ今度はあいつらぶちのめしてやるこの野郎。まず上履きに生クリームを入れてやろう、甘い香りで怒りを抑えつつ、ぬちゃぬちゃの感覚で怒りを増幅、どうすればいいの俺! 的な感覚を味わうが良いさ。


 だがそんな事よりまずは成長しないとならん、いつまでも0歳児やってるわけにはいかんのだ。理由はもうわかんないし別にいいや、やり直せる機会貰ったんだから今度は企業の戦士はご遠慮したい所、企業戦士ブルーとかレッドとかもう流行らないよ。今の時代は企業戦隊だよ、企業戦隊キギョレンジャー、無いな、まず無いな。


 あーもー、頭蓋骨の軟骨がしっかり出来上がってないからその持ち方じゃだめだって母さん。頭がふにゅってする度に、見えちゃいけないものとか見えそうなんだよ、ほんと勘弁してくれよ。


「もうちょっと手がかかっても良いのに。本当に大人しい子ねぇ、貴方に似たのかしら?」


「うーん、お前に似たんじゃないのか? 大人しいだろお前」

 あーもう息子の前でいちゃつかなくて良いから、意識あるから俺。両親のラブとかあんま見たくないから、そういえば俺が2歳の時に妹が出来たんだっけか……。ああ、なんか想像したくねぇ、やめてくれ、もうやめてくれ、想像する俺の脳がもう限界です。赤ん坊のキャパ舐めんなよくそう。


 今度は妹に優しくしてやりたいなぁ、いや別に兄弟仲悪かったわけじゃないけどやっぱりほら、子供ながらの我侭とかいっぱいあったし、俺これでも26歳だから! 大人な対応的な? やっちゃうよ俺、大人的な対応やっちゃうよ。

 それと頭が柔らかいうちに色々勉強しちゃうよ、まじ天才児誕生だよ。あ、でもあんまり派手にやると世間の注目を浴びるな、それは勘弁だなー、もっとぐーたら生活を謳歌したい。

 体も鍛えるべきだろうか? やっぱダンディーな男って憧れるよね、煙草は体に合わなかったけど酒は飲めるようになりたいな。子供の頃から耐性付けておけば弱さを克服できるだろうか。俺、弱かったからなぁ、ビール3杯で真っ赤だったし、スコッチとか空けてみてぇ、ワインとかラッパ飲みしてみてぇ。


「あきちゃん、お腹は空かないかなー?」

 おう、母乳タイムっすか、それはちょっと悩み所なんだよ。母さんの胸に欲情する事は無いけど複雑な気分なんだよ、しかも地味にでけぇし、やるじゃねぇか親父……! いい女房ゲットしやがって、しかしいつもしかめっ面で新聞読んでいた親父が満面の笑みとかちょっと怖い、あ、でも親父の方が抱くのうめぇ、やるな親父。


「あら、貴方が抱くと動かないわね、私の抱き方が悪いのかしら?」

 そうだよ、母さん頭の支えが悪いんだよ。まじ変な物見えるんだから、脳の一部が軟骨からにゅるっと出てきたらどうすんだよ本当に。労災もんだぜ。


「同僚のお子さんを抱いたことも有るからな、その時ちょっと教わったんだよ」


「あら、橘さんのところの娘さん? そういえば先月生まれたって言ってたわね」


「お前が入院してた時だったからな。また挨拶に行こうか」


「そうね、息子と同い年だし、良い友達になってくれると良いわね」

 橘? あー橘 由美ね。懐かしいなぁ、確か22歳で結婚したんだよな、年上の男と。子供の頃は色々一緒に遊んだ記憶があるけど中学校から疎遠になって、気が付いたら結婚しましたって連絡が来たんだよなぁ。

 そーいやあいつにも色々と悪い事したよなぁ、子供ながらの黒歴史じゃないけど、本当に何でもうちょっと大人の対応が出来なかったのか不思議に思う。

 

 今度はもうちょっと優しく対応してあげたほうが良いよなぁ、いや、別に罪悪感とか無いよ? 絵の具セットに蝉の抜け殻を大量に入れて泣かした事に罪悪感とか感じてないよ、本当だよ。

 ごめんやっぱ悪い事したな、とりあえず会ったら謝っておくか。土下座は無理だから寝返りで勘弁してもらおう。首が据わるまで待ってくれるとありがたい。


 お、親父に母さんお出かけかい? おお、橘の家に行くのか、有言実行早くねぇ? 

 そーいや家も近かったんだったか、それならもっと早く会いに行けばよかったんじゃねぇのか? 何この微妙な距離感、つーか急に行って良いの? 向こうさんの都合は良いの? ヘイ、ユー! 親しい中にも礼儀有りじゃねぇのか? いいのかおい!


「あら、どうかしたのあきちゃん、お腹空いたのかなー?」

 ちげぇよ! あんたらの世間一般的な常識を疑ってるんだよ、母さんあんたそんな人じゃなかっただろ! なんだよ、俺が生まれて浮かれてるのかよ嬉しいじゃねぇか!


「さっき上げたんじゃなかったのか?」


「だと思ったけれど、んーと。子育ての本では……」

 うわ、子育ての本出てきたよ。赤ちゃんの育て方とか書いてるよ、つーか何冊出てくるんだよ、そんなに必要無いだろ。

 

 なんか本を読み始めちゃったし、橘家はどうなった。そういや母さん大掃除してて出てきた漫画とかアルバムとか読んじゃう人だったな。


「あら、大人しくなったわね」


「橘の奴に聞いて見よう。あっちは1ヶ月先輩だからな」

 便利屋かよ橘家、まぁいいけど。とりあえず抱え方学んでくれれば俺は文句ねぇよ。

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