第9話
女の子が見えた時にはそれがヤバい状態であることは理解した。
女の子の周りに近づくにつれゾンビの数が多くなっていった。
「おい!先を急ぐな!」
男は自分を顧みずに、先に進もうとする。
俺は斧を振り、ダニエルもシャベルを突き立てる。
ここでの戦力は俺とダニエルだけだ。
男は武器すら持っていない。
ゾンビが腕に嚙みつこうとしていた。
まずい、斧だからすぐに腕を動かせない。
直後、ユリアがスタンガンでゾンビの動きを止めた。
額から汗が流れているのが分かる。
俺はゾンビを蹴って、吹っ飛ばした。
「助かった」
吹っ飛ばしたゾンビに、ダニエルがシャベルを首に突き立てる。
血しぶきが上がる。
あたり一面は死体だらけだった。
「あそこだ!」
男が遠くを指さす。
赤い屋根の上に女の子がいた。
周りにはそれに群がるゾンビたち。
俺達はそいつらを『処理』する。
やっと片付いた。
屋根を見上げる。
近くに木がある。
あそこから登ったのだろう。
「おーい。降りてきてくださーい」
無理だろうな。
1階の屋根か?
俺の2倍くらいの高さの位置にいる。
「どうする?」
「受け止めるしかないだろう。できるだけ失敗したくない。横に並べ」
俺とダニエル、男は横一列に並び、手を挙げる。
「降りてこい!」
女の子はこちらを見ながら躊躇していたが、勇気を出したようで、それほど時間をかけずに飛び降りた。
キャッチしたのは男だった。
2人とも安心したようで、笑顔を見せている。
さて、約束を果たしてもらうか。
「約束したもんよこせ」
金もらったら姉のところへ行こう。
「一度家に戻ります。今は何も持ってないので」
俺達は男の後を進む。
男が止まった。
どうやら家に着いたようだ。
「これが家?」
目の前には他の家よりかははるかに大きく、明らかに富裕層向けの建物があった。
「これがお前の家か?ずいぶん稼いでいるんだな」
「いや、私のではありません。私はここで使用人として働いています。この子の親がこの家の所有者です。どうぞあがってください」
男は両開きのドアを開ける。
これもマイクロチップで鍵を開けているのだろう。
家の中もいかにも富裕層というようなインテリアがそろっていた。
男は女の子を白いソファに座らせると、倉庫だと思われる部屋に入った。
数分後、紙に包まれたパンだと思われる物体を持ってその部屋から出てきた。
パンをガラスのテーブルに置き、そしてポケットから札を出した。
「これで十分でしょう。協力感謝します」
金は今回の飛行機代ぐらいあった。
まあ十分だろう。
ダニエルもパンを受け取り、俺達は家を出ようとした。
だが、女の子が話した単語が俺達を引き留めた。




