第1話
世界人口の8割が亡くなった世界規模のゾンビパンデミック。
通称「世界危機」から23年後。
人類は未曾有の危機から、あらゆる国家を統合。
政府は世界で1つのみとなり、国境が消滅していた。
目の前に立っている白人の男が言う。
「アレクセイ」
白い部屋で俺はただ一人、手荷物検査のための白い別室に連行されていた。
男は俺のパスポートを確認してさらに言う。
「アレクセイ!聞いているのか!」
うるさいな。
さっきから同じことを言っている気がする。
「ねえよ、麻薬なんて」
それが事実なんだからそう言うしかない。
こいつは目の前にある俺の20リットル容量のバッグを片っ端から検査して、無いと分かったうえで聞いてくるのか。
ここまで疑われる筋合いはない。
「じゃあ何で麻薬犬がお前に反応したんだ」
麻薬犬?そういえばなんか怖い犬が自分に向かって吠えていたな。
あいつ臭いを嗅いでいたのか?
記憶を確かめよう。
「麻薬、麻薬ねえ」
まず俺はやったことがない。
臭いなら、じゃあ、近い奴で臭いとかが移ったからか。
俺はロシア地域のボログダに住んでいる。
住まいは三階建てのアパート。
エレベーターはなく、階段のみ。
階段、思い出した、あいつだ。
「そういえば、住んでいるアパートの隣のやつがよくやっていた。しかも階段でやるんだ。それが付いたんだろう」
あいつだろう。
あいつは俺が通りがかっても気にしないし、目が合っても焦点が合ってない。
確かに変なにおいがした。
ウォッカの臭いはアパート中からした。
男は俺を睨む。
立ち上がって指を指しながら言ってやった。
「嘘は何一つ言ってねえ。俺は家族に会いに来たんだ、家族といっても生き別れて、やっと居場所が分かったんだ。予定がないのも、会えばすぐ帰るつもりだし、宿を取ってないのも、俺は野宿するつもりだからだ。俺は冬のアルハンゲリスクでも寝れるぞ!そして!俺は!麻薬も!コカインも!やってねえ!」
分かってくれ、これがすべてだ。
「ふうん。まあ、荷物にその類のが入ってないのは検査して分かった。地区移動は認めよう。だが君は警察に警戒される。普通の旅行者なら行かない場所に行くんなら気を付けてくれ。最近は厳しいからな」
きついな、俺は家族に会いに来ただけなのに。
ガラスで通路が見えるであろう方向を見る。
赤い、赤い血が付いていた。
「おおおおい!見ろ見ろ見ろ!」
そこに指を指して、男に向かって叫ぶ。
男はため息をつき、指を指した方を向く。
「おいおいおい!なんだ!?」
男も俺と同じようにガラスに向かって指を指し、俺を見ていた。
ガラスに何かぶつかる音がした。
俺と男はゆっくりとガラスに顔を向ける。
そこにはかつて映像で見た『ゾンビ』といえる怪物がこちらを見ていた。




