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妄想恋愛ばかりしていたら、金曜日に本物がきた。  作者: つなかん


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第91話 日曜の朝の光──ふたりの未来と、男同士の対話 〔美月サイド:朝の余韻〕

〔美月サイド:朝の余韻〕


 日曜日の朝。

 カーテン越しに差し込む光が、淡くて優しい。


 目を開けた瞬間——

 胸の奥で小さく、けれど確かに、幸福が揺れた。


(……昨日の、航平さん)


 “美月と生きたい”

 “毎日一緒にいたい”

 “家族になりたい”


 どれも夢みたいで、でも全部、本気の声だった。


 まだ眠っている航平の横顔を見つめる。

 ふだんより幼く、無防備な寝顔。


(こんな朝が……これからも続くの?)


 その想像だけで、胸の奥がぽっと熱くなる。


 そっと起き上がり、キッチンでお湯を沸かす。

 同じ音、同じ部屋、同じ朝——

 なのにもう“昨日とは違う朝”。


「……おはよう」


 背後から聞こえた掠れた声に、振り返る。


「おはようございます」


 航平は眠たげな目で微笑み、ゆっくり近づいてきた。


「昨日の……答え、聞けて良かった」


 照れたように言うその声に、胸がふわりと広がっていく。


「……私も、すごく嬉しかったです」


 二人でカップをテーブルへ持って行き、向かい合う。

 ただそれだけなのに、世界が静かに祝福してくれているようだった。


(……毎日こうして朝を迎えるのかな)


 小さく笑い合いながら、ふたりだけの朝が始まった。




〔同じ頃──Bar Toyo/豊 × 航平〕


 日曜の朝の「Bar Toyo」。

 開店前の静かな時間。

 豊が照明をひとつずつ灯していると——


 カラン、と控えめに扉が開いた。


「……やっぱり来たか」


 振り向くと、航平が少し緊張した面持ちで立っていた。


「おはようございます、豊さん」


「おう。座れ」


 カウンターに腰を下ろした航平は、深く息を吐いてから言った。


「昨日……ちゃんと美月に話しました」


「……“同棲したい”ってやつか」


 豊は淡々と確認しながらも、じっと航平を見た。


 航平は照れたように目を伏せ、でもはっきり頷く。


「はい。

 ずっと思ってたんです。

 “金曜日だけの男”じゃなくて……

 毎日、彼女のそばにいたいって」


 その声は迷いなく真っ直ぐだった。


「で、美月は?」


「……喜んでくれました。

 すごく……」


 航平の目が少し潤んで見え、豊は鼻でふっと笑った。


「美月は分かりやすいからな。

 嬉しいときはすぐ顔に出る」


「……はい。本当に、可愛かったです」


「で?」

 豊は腕を組み、少し身を前に乗り出した。

「今日は“許可取り”に来たのか?」


 航平は一瞬驚いたあと、真剣に頷いた。


「……はい。

 俺、美月を大事にします。

 幸福にします。

 だから……豊さんにも、ちゃんと伝えたくて」


 その真剣な目を見て、豊は静かに息を吐いた。


「……航平」


「はい」


「美月は俺の娘だ。

 けどな……

 もう俺の手を離れて、誰かの隣で生きる女だ」


 その言葉は、父としての寂しさと、

 ひとりの男としての覚悟が混ざっていた。


「……あとは二人で決めりゃいい」


 短いけれど、これは豊なりの“許し”だった。


 航平の目がゆっくり熱を帯び、深く頭を下げた。


「……ありがとうございます」


 その背中に、豊は小さく呟いた。


(玲子……美月はちゃんと幸せを掴む女になった)

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