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妄想恋愛ばかりしていたら、金曜日に本物がきた。  作者: つなかん


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第23話 Tuesday Night:会えない夜ほど、心はあなたに近づく

メッセージを送ってからしばらく、

 私はベランダの手すりに指を添えたまま、

 夜空を見上げていた。


(……返事、来なくてもいい)


 本当は来てほしい。

 でも、来たら胸が跳ねすぎてしまいそうで、

 そんな自分が少し怖かった。


 ビル風が髪を揺らし、

 月の輪郭をゆっくりとにじませる。


(最初に見つけた月……暗がりの隙間の、あの細い光)


 あれはなんだか私みたいだった。


 自分の恋に気づく前の、

 細くて頼りなくて、

 でも確かにそこにあった光。


(今は……さっきよりずっとよく見えてる)


 二度目に撮った、ベランダから見た月は大きくて、

 空の真ん中でちゃんと輝いていた。


 それはまるで——


(航平さんへの気持ち……みたいだな)


 気づいた瞬間、胸の奥が静かに熱を帯びた。


 部屋に戻り、

 今日もらった縁結びのお守りを見つめた。


「……叶うかな」


 誰に向けたのか分からない小さな声が漏れた。


 ソファに座り、

 お守りを指で撫でながらスマホを見つめる。


 メッセージはまだ既読になっていない。


(……忙しいんだよね)


 分かってる。

 分かってるけど——


 胸がふわりと浮いたり沈んだりする。


(こんなの……恋じゃなかったら何?)


 気づかないふりをしてきたのに、

 金曜日の言葉が全部壊してしまった。


『会いたかった』


 一度思い出したら最後だった。


 耳に残る低い声。

 近づいた時の体温。

 視線が絡む瞬間の息の詰まり方。


(忘れられるわけないよ……そんなの)


 お守りを胸に当てる。


「……金曜日、早く来ないかな」


 自分で言って、顔が熱くなった。

 でも、本当にそれしか考えられなかった。


 ふと、スマホが震えた。


(……っ!!)


 心臓が跳ねる。


 画面を見る指が少し震える。


 そこには、

 たった一文だけのメッセージが来ていた。


──『見れたよ。同じ月』


 胸がじんわり熱くなる。


 さっきまで、

 恋は怖くて、切なくて、苦しくて……

 そんな形ばかりだったのに。


 今は——

 ただ嬉しかった。


(……ほんとに、同じ月見てたんだ)


 目の奥が熱くなった。


 美月は、画面にそっと指を触れさせる。


「……金曜日、会いたい」


 誰に聞かせるでもなく呟いた言葉は、

 静かな部屋の空気の中で消えていく。


 月の光は、

 さっきよりもずっと強く、

 優しく美月の部屋に差し込んでいた。


 恋は確かに、ゆっくり前に進んでいた。


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