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妄想恋愛ばかりしていたら、金曜日に本物がきた。  作者: つなかん


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第16話 Saturday:静かな一日が、恋を深くしていく

昼すぎ。

 ソファに座って、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


(……静か)


 いつもなら休みの日は、

 映画を見たり、スーパーに買い物に行ったり、

 適当に掃除したりして時間が過ぎるのに。


 今日は——

 何をしても落ち着かない。


(会いたい……)


 胸の奥がじんわり熱くなった。


 スマホを手に取っても、

 画面には通知はひとつもない。


(……来ないよね。分かってる)


 土曜日は航平さんが写真を撮りに行く日。

 山だったり、海だったり、街歩きの日もある。


 分かってるのに、

 気にしてしまう。


(何してるのかな……)


 知らないはずの彼の一日が、

 気になって仕方がなかった。


 午後三時。

 キッチンで遅めの昼食を作りながら、

 ふと昨日の声が蘇る。


『最近、仕事してても……君のことばかり考えてる』


(……そんなこと言われたら、無理だよ)


 胸の奥が甘く痛む。


 スープの味見をしたけど、

 味が分からないほど心が上の空だった。


 食べ終えても、

 またスマホを見てしまう。


 やっぱり何もない。


(来なくていいのに……期待しちゃう)


 面倒な気持ちだった。

 でも嫌じゃない。


 むしろ——

 こんなに人のことで胸が動くのが、

 少し嬉しかった。


 夕方。

 風が少し冷たくなってきた頃、

 私はベランダに出て空を見上げた。


(今日……どんな景色見てるんだろう、航平さん)


 彼の撮る写真が好きだった。

 光の使い方も、

 空の切り取り方も。


 “好きな人の目から見える世界” が

 そのまま写真になっているような気がした。


(私にも……見せてくれるかな)


 昨日の入口写真のことを思い出す。


 あれは特別だった。


 あからさまじゃないのに、

 “気持ちがこっちを向いている” と

 静かに伝わってくる写真だった。


(……また見たい)


 呟くように風に言った。


 夜。


 お風呂から上がって、

 髪を乾かしながらスマホを見た。


 やっぱり——

 何も来ていない。


(……ふふ、そりゃそうか)


 苦笑しながらも、胸はほんの少し寂しい。


(明日はどうしよう)


 やることがあるわけでもないのに、

 気持ちがどこかずっと落ち着かない。


 昨日の夜みたいに濃密な時間を過ごしてしまうと、

 もう前みたいに平気でいられなくなる。


(早く会いたいな……)


 胸に手を当てると、

 昨日よりもっと熱くなっている。


 恋は、

 静かに胸の奥で育ち続けていた。


 布団に入ったあと、

 明日も来ないことは分かっているのに——


(……明日も考えるんだろうな。

 ずっと、航平さんのこと)


 目を閉じると、

 昨日の距離と声が鮮明に蘇った。


『君の気持ちを、ちゃんと聞いてから言いたいんだ』


(……聞かなくていいよ。

 もう全部あげるのに)


 胸の奥がまたじんわり熱くなる。


 静かな土曜日。

 会えない日ほど、

 想いは深く形を変えていく。


 恋は、

 こんなにも静かで激しいものなんだと知った。


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