#2初動
投稿がおそくなってすいません。
ここからスズヒはどう生きていくのか?こうごきたい!
バーナード視点
俺は日課のグラス磨きをしていた。
誰もいない店内で磨く音だけが響く。
昼の光が差し込むたび、磨き上げたグラスの縁が鈍く光る。
客なんざ、しばらく来ちゃいない。
この廃れたジジイの店に飲みに来るやつなんて、よほどの物好きかバカだけだ。
扉の鈴が鳴った。
カランコロン。
「いらっしゃい」
いつものように口だけで言って、顔も上げずにグラスを磨く。
だが、返事がない。
目を向けて入り口を見ても誰もいない。
勘違いか?そう思いつつ目線を下げると、薄汚れたガキが立っていた。
よくいる孤児だな
「ここはお前の居場所じゃねぇ……でていけ」
怖じ気づいて、目の前からきえるだろうと思っていたが、
ガキはきょろきょろと辺りを見回した後、カウンターの椅子にちょこんと座った。
「酒じゃなくてミルクあります?」
そういいながら銀貨をチラ見せしてきた。
「はぁ、カネがあるなら先に言え」
「いや、見た瞬間追い出そうとしたでしょアンタ」
「その格好で持ってるなんて思わねえよ」
そう軽口を叩きながら、ミルクを注いだグラスをガキに渡す。
少年は両手でグラスを持つと一気に飲み干した
「うめぇ~!やっぱ味ついてるのは最高」
こいつのガキとは思えないくらい物怖じしない態度、あまりの飲みっぷりに笑いそうになった俺は思わず聞いてしまった。
「ガキ名前は?」
「アナート」
「いくつだ?」
「10歳くらい?」と言いつつ自分でも首をかしげる。まぁ孤児だからしょうがねぇか。
「お前、なんでこの店に入ってきたんだ?」
すると、アナートは少し考え込んだ後
「勘」と…
「ぶはぁぁ!!!」
思わず、我慢できなくなって吹き出しちまった。自分で言うのもアレだが、この店は勘でガキが入ろうとするような見た目はしてねぇ。なのにコイツは堂々と入ってきやがって、オマケにずうずしい態度をしてやがる!
「変なやつめ」
自然と笑みが浮かび、気づけば俺はこのガキを気に入っちまっていた。
ースズヒ視点ー
いけるか?ふてぶてしく足を組みながら内心では、もう心臓バックバクだった。
なぜかって?ここバーナードの店に泊めてもらえなきゃ寝床が厳しいってことだ。
手持ちを換金した後、俺は宿と飯を確保するため、手当たり次第探した。だが見た目というのは大事らしい。
どこもぼろ切れをまとったガキは門前払いで受け入れたもらえなかった。マギスが使っていた宿もゲーム時代のなじみ宿もである。
ーやっぱ信用って大事だわー
最初はのんきにそんなことを考えていたが、選択肢がなくなっていく内にジワジワと嫌な汗が首筋をつたう。
「全っ滅や。どうすっか。野宿は勘弁して欲しいからな~。あの衛兵のおっちゃんとこいくか?
いや、いっても孤児院に預けられるだけだ。孤児院だと自由に動けねぇ」ぐるぐると思考を巡らせている内に1つ可能性があるところを思い出した。
あの酒場はいけんじゃないか?ゲームでは主にプレイヤー交流の場として使われていた酒場だ。あそこのオーナーは信頼度を上げると市場ではもらえないアイテムくれるんだよな。その酒場には客室もあったはずだ。寝泊まり機能はなかったけど、ここは現実だからな。信頼度を一気にあげればいけるか?
やるしかねぇ酒場のオーナー、バーナードをどうにかすっぞ!
俺はそう息巻いて酒場のドアをくぐった。
そして今にいたる。
俺は手の震えを必死に隠しながら、言葉を紡ぐ。
「おっちゃん、今日だけ泊めてくれ。」
バーナードは笑顔をなくし
「うちは宿屋じゃねぇ。わりぃが……」
続きを想像し、一瞬で全身から力がぬけ、視界が暗くなる感覚に襲われた。
「わりぃが……客としてはとめられねぇ」
俺は思わず は? という表情で顔を上げる。
「普通は断るんだがなーー」
グラスを棚に置く音が響く。
「ボロぞうきんみてぇな格好のお前が銀貨握りしめて、震えながらミルク頼んでよ。しかも目が死んでねぇ」
「嫌いじゃねえんだ」
「それじゃあ!!」
「ただし!」バーナードは指を一本たてる。
「明日の開店準備、全部手伝え。掃除、荷下ろし、裏の樽運び、ぜんぶな。」
「やる!全てやる!!」
「文句言うなよ?」
「もちろん!」
バーナードは首に書けた鍵の中から1つ取り俺に渡した。
「二階の部屋の鍵だ。ベット以外はなんもねえぞ。それとまず、物置に服があるから着替えてこい。アナート」
ー初めて、名前を呼ばれた。ー
嬉しさと、偽りの名前を名乗ったことへの申し訳なさを感じながら深くお辞儀をした。
「ありがとう……」
そう言っておれは物置へ向かった。
中には使い古された服が数着、雑に掛けられていた。
袖にちょっと穴の空いたシャツ、色褪せたズボン、でも――今の俺からしたら十分すぎる宝物だ。
服を着て窓に反射した自分の姿を見る。
思わず「文明の人間にやっとなれたな」とつい口に出してしまった。
すると横で急に低い声が落ちてきた。
「じゃあ仕事をしなくちゃな」
「なっっ!」
バーナードに聞かれてしまっていた。
「早くこい。仕事はいっぱいあるぞ」ニヤニヤしながらバーナードはカウンターへ戻っていった。
ここから俺の新しい生活が始まった。
ー一週間後ー
「おいアナート! あのクソジジイんとこにコレ持ってってくれ」
「あいあいさー」
すると、白髪交じりのハゲかけた男性がギロっと目を向ける。
「誰がクソジジイだ!おめぇよりナイスガイだろうが!」
その言葉に違う卓から野次が飛びかう。
「わっはは! どこがナイスガイなんだよ」
「ハゲかけとるやないかい!」
「あん?やんのかてめぇ!」
騒がしくなった店に低い声が響く。
「外でやれや……」
一気に店内が静寂に包まれーーなかった。
「外でやっぞ!この野郎」
「怖じ気づくなよクソジジイ!」」
言い合いながら二人は店の外へ。つられて、野次馬が動き、賭けまで始まる始末だ。
それを見送ったバーナードは深々とため息をついた。
「おいアナート、いいとこであいつら止めてこい」
「ええぇ~めんど……」
言い終わる前に拳が飛んでくる。
「ぐはぁぁ」
「いいからいけ!」
アナートは天井を見上げながら思う。
――どうしてこうなる……。




