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始まりのとき

初めての投稿になります!

少しでも楽しんでいただけたら幸いです!!

 強い日差しが都会のコンクリートジャングルを照らす中、今日も戦う顔をして出勤をしている労働者達。群衆は会社へ行くため、無言のまま一方向へ駅から通りを歩く。

まるで現代の行軍といえる光景であった。

その通りの一角に、ひときわ古びたオフィスビルが建っている。

そのビルの1室では、今日も厳しく指導されている若者の姿があった。


「あぁ!やっべ!」

(このあとどうすりゃいいんだっけ? うっっまた怒られるけど聞くしかないよな~)

白いワイシャツにヒヤ汗がしみ、指が小刻みに震える。時間がゆっくりと動いている感覚に襲われながらも、彼は先輩のデスクに重い足取りで歩いて行く。そして、締め付けられる思いで声をかけた。


「あの~ 先輩失礼します。ここなんですけど……」


「さっき一度、教えたよね? 自分で考えて」


「…すみません、もう一度考えて提出させていただきます」


あまりにも早い回答であり、今の彼には刺さる一撃だった。

そうして怒られた後、業務の問題点もわからないままトボトボと自分のデスクへ帰るのであった。


彼を叱った教育係の上司は、先方に会いにいくといい、そのフロアを出ていく。

ただこの上司、先方に会いに行くと言ってサボるのが常套手段であった。

颯爽と出て行く姿を横目に若者は途端に沸々と怒りが湧いてきていた。


「はぁ〜〜まぁたサボりかよ いいご身分で結構なことだな。その時間で仕事教えられるだろーがよ!」


 ただ、怒りも長くは続かず、ただパソコンの初期画面をじっとみつめ時計の秒針の音が大きく聞こえる。音と鼓動するように無力感と喪失感が容赦なく襲ってくる。


あぁ〜 俺社会人になってからなんもできてねぇ。

もう会社来たくないよぅ。 ってか、あのクソ上司もうちょっと優しく教えてくれてもいいじゃん。一回でわかるわけないだろ!

はぁぁ~、そもそも労働がツラスギて泣きたいわ! ヤバイだろ社会人、なんだよ 週5で8時間労働が当たり前とか サラリーマンみんな鉄人過ぎるだろ!!



この春から新社会人になったこの若者、スズヒは大学時代の自由気ままな生活とのギャップに苦しみ、社会人として適応できていなかった。


「あ〜もう考えるのや~めた。ーーーー 今日は金曜日だしたらふく飲むぞ!」


その夜、スズヒはとことん飲みまくった。

居酒屋を三件ハシゴし、友達に片っ端からイタ電をしまくり、締めのラーメンを食べてヨチヨチ歩きで駅へ向かった。


時刻は既に深夜、終電など既になく駅は消灯しているはずだった。

しかし今日、なぜか駅は空いていた。


周りは静まり返り、誰もいない。

しかし、酔っているスズヒは疑いもなく駅の改札を通った。

「ラッキー!まだ電車動いてるじゃんー!」

そしてなぜか扉が開いていた電車に乗り込み座席で気持ちよさそうに寝始めた。


そうしてすぐに扉が閉まり、電車がゆっくりと動き出す。

軽快なチャイムと共に車内放送が流れ始めた。


「この電車は¥&#$€行き最終列車です。なお、只今の駅をもちまして、地球最後となります。

お忘れ物、思い残しのないよう身の振り方をお確かめください。なお〜この電車次の停車駅は…」


だが、スズヒの耳には届いていなかった。


早朝、地上波のテレビで一斉に速報が流れた。

「ニュース速報です。二十代男性が東京都〇〇区〇〇駅前を最後に行方がわからなくなっています。警察は身元の調査を行なっているところです。なお、駅前通りを千鳥足で駅方面へ歩いて行く男性の姿が最後に記録されています。警察は事件事故の両面で捜査を開始しております。」


この事件に目撃証言はなく、駅の監視カメラも電源が切れていたため遂に犯人の特定には至らなかった。

謎の多い失踪事件として多くの記事や配信者が扱ったが、人の噂も七十五日というように、この事件は次第に忘れ去られてくのだった。






「ガァ〜、、グゥ〜……………

                     

 ん〜頭いてぇー

                                     ん? ナニココ?」


スズヒが目を開けたとき、

目の前には透き通った湖が広がっていた。湖の中には朽ちて錆だらけとなった電車が沈んでいて小魚のすみかになっていた。

「夢?昨日最後どうしたっけ。たしか~電車乗ったまでは覚えてんだよな そっから記憶ない」

ひとりでブツブツと喋りながら妙な違和感がスズヒを襲う。


「なんか目線低くなったか? それに見覚えないぞ履いてる靴…」

急に夢から覚めたかのように冷静になったスズヒは、違和感による恐怖によって全力で湖に駆け寄った。

「おいおいおい.......ホントに?」

水面に映った顔を見て驚愕と同時に全身から鳥肌が立った。


「この顔、この服装   あの物語の孤児とそっくりだ……」

自分の体を抱き込むように触りながらスズヒは膝からゆっくりと崩れおちた。

遠くの山々を見つめながら放心状態になること数分…


何とかスズヒはこの状態を飲み込み、今体験している出来事を整理する。

「転生なのか? いやでもさっき鉄道が朽ちてたよな。 うん。訳わからん」

ちらっと湖の方向を見てみると先ほどまであった鉄道の残骸がなくなっていた。唖然としていると、湖の真上に文字が浮かび上がってくる。

 

     

   ~~~際の境界 写し世の湖~~~

 

「この文字、この演出、間違いない。ここは{あなただけの世=界}通称{あなセカ}のストーリーで登場する湖だ」


{あなただけの世=界}通称、アナセカ。


この物語は王道の異世界ファンタジーだ。

ある日、主人公マギスが暮らす村に謎の襲撃が起こる。

その襲撃でなんとか家族は生き残ったものの、幼なじみを亡くしてしまう。

マギスは無力感と激しい復讐心に駆られ、必ず報いると誓い旅に出て行く。そして旅の途中で出会う仲間達。少しずつ成長する主人公。様々な冒険に出て、襲撃の真相とこの世界に潜む闇に迫っていく物語だ。


学生時代、特にやることもなくダラダラと過ごしていたスズヒはこの物語に惹きつけられ、何回も繰り返し読んでいた。また、この物語は世間でも多くのファンを獲得し、大きく広まりつつあった小説だった。

 そしてその勢いのまま、アナセカはゲームとしても発売予定であり、試験的にベータ版を体験できるようになっていた。

もちろん、スズヒは体験済みである。また、初めてのエンディング到達者でもあった。


「そうか、俺は転生したんだな、本当に。 いっよっしゃー!!!あのつまらない日からおさらばだぜ!

ありがとう神様。」気色の悪い笑顔を浮かべながら万感の思いに浸っていた。


「取り敢えず、まずはどうするか考えよう。たしか使える拠点があったはずだ」

 そうしてスズヒは湖の淵に沿うように歩いて行った。




スズヒが去った後、湖の中から水が人をかたどり陸地へと降り立った。周りには花が咲き空気が澄んでゆく。降り立った片方は女性、もう片方は男性をかたどっていた。


「本当にこれでよかったのかい?あの子に託すんだね?」


「ああ、私に出来ることは見守るだけだ。」


「それにしても、よくアッチも許可したよねぇ。誘拐まがいの神隠しなんて」


「それだけあちらの世界は手一杯なのだろうよ」


「人が多すぎるってのも考え物ね。」


「まぁその話はもういいだろう。それに我々もいえたものではない。彼に託してしまったのだから」

そう言うと男の方は霧となり消えてしまった。

「もどかしいけど見守るしかないわね。頑張ってねスズヒくん。」

彼女は静かに湖のほとりへと歩み寄ると、銀の靄を纏いながらその身を水面に溶かしていく。

その場には美しく咲く一輪の花だけが残っていた。


不定期投稿になりますが、ご容赦ください(・∀・)

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